七話 ギルマスとの訓練後
目を開けるとそこは知らない天井だった。
「よー。やっとお目覚めだな。」
なんてことはない、ギルマスの部屋で寝かされていたみたいだ。
「これ。飲めよ。」と、ギルマスが青い液体が入った瓶を投げて来たので受け取った。
「これ。ポーションですか?」
「おう。ちったぁー楽になんぜ。」
色は青色?スカイブルーみたいな感じだ。味はミントのような、歯磨き粉のような味で美味しくはなかったが、痛みはなくなり、意識がはっきりした。
ギルマスによると俺の冒険者としての強さランクはBランクとのことだが、いきなりBランクにすると色々手続きがややこしいのでとりあえずDランクから始めるように言われた。
冒険者のランクはE、D、C、B、A、Sランクとあり、大体Cランクが一般的な冒険者らしい。BランクはCランクより何かしら抜きに出た強さを持っている事。Aランクは才能と日々の努力が必要だそうだ。Sランクだけはギルド認定ではなく王様が認定するため、偉業を成し遂げないとなれないみたい。
「と言うわけでしばらくは斗真にはCランクの討伐依頼を優先的にやってもらおうと思う。後でレイラさんの所に寄ってみてくれ。」
「わかりました。ギルマス。1つ聞いていいっすか?」
「なんだ、神妙な顔して、」
「強くなるためにはどーしたらいいっすか?」
「なんだ?強くなりたいのか?何で強くなりたい?」
そう言われてなんで強さを求めるのか今一つピンときてないが、とりあえず、
「うーん。とりあえず一発殴りたい奴がいるんで、だからっすかねー。」
「ハハハッ!いーぜ!そーゆー奴は嫌いじゃない。じゃあ、一つアドバイスだ。ちょっとそこに立って腹に力入れてみろ。」
言われるがままに俺は立って腹に力を入れてみた。
「こうか?」と言った瞬間殴られまた悶絶した。
「それは、肉体のみに力を入れてるだろう!?体を巡っている全ての力を感じて、腹に集めてみろ。」
そんなこと言われても、と思いながらも目を瞑り体に巡っている力を腹に集めるようにしていると
「そのまま腹に力入れてみろ!」言われるがまま力を入れると「ウッ!」また殴られた。が、さっきほど痛くはなかった。
「どーだ?さっきよりはましだったろ?これが「気」だ」
(気?睨んだだけで相手が倒せたり、極寒の中にいるみたいなやつかな?)
「攻撃も同じだ。スピード、強さ、踏み込み方、ひねり具合攻撃に関わる全ての動作一つ一つを丁寧に確認しながら、力の流れを感じろ。ロスの無いように相手へと打ち抜く!これを使いこなせるようになるとAクラスだ!」
と言ってギルマスは殴る動作を見せてくれた。スムーズで力みがなく、当たった衝撃はとてつもなさそうに思えた。ただ、
「これ殴られる意味あったんすかねー?」
「体に刻め!小僧!」
脇腹を押さえながらもレイラさんの受付に行くと
「どーしたの?ポーション飲んだんじゃないの?まだ痛いの?」
「い、いやー。大丈夫。」
(さすがに飲んだ後でまた殴られたとはちょっといいにくい。)
「斗真君って強いのねー。お姉さん驚いちゃった。」
「ははっ……ギルマスには手も足も出ませんけど。」
そう言うとレイラさんは壁に飾ってある大剣を見ながら
「そりゃー、ギルマスだもの。ドラゴン倒しちゃうくらいの人だからねー。」
「まぁー、そうっすねー。」
壁に飾ってある大剣は元々は王家の秘宝の一つだったようで、ドラゴン討伐の褒美としてギルマスに貸し与えてるようだ。
「じゃあ、斗真君には「ハウルベアー」の討伐を依頼するわ!」
「ハウルベアーっすか!?」
「そう、その名の通り熊の魔獣ね。特徴は人を見ると吠えて威嚇してくるからすぐわかると思うわ。場所は斗真君がゴブリン倒した森があるじゃない?そこで目撃情報があるのよー。」
「わかりました。今から行った方がいいんですか?」
「いえいえ、明日からで大丈夫ですよ。ひょっとして何日か帰って来れないかもしれないからこれ持って行って。」
受付のカウンターにリュックを置いた。中を見ると寝袋やら、夜営に必要そうな物が入ってあった。
「ありがとうございます!」
「お礼はいいわ。これ、給料から引かれるから。足りないものは道具屋で買ってね。」
(給料支払われるんだろうか………)