十九話 ドラゴン襲来
冒険者パーティーの死を確認した俺達は乗ってきた馬車に乗り込み、ソレイユに帰ってきた。
「倒したのか!?」
「あぁ、ほとんどそこの坊主が片付けたがな!」
リョックがそう言うと、ギルマスが俺の両手を握り、
「ありがとう。斗真君!よし、辺境にすぐ知らせろ。」
「ちなみにあいつらはどうだった………?」
その言葉に俺たち全員がうつむき、首を振るしか出来なかった。
「そうか。。。斗真君達はゆっくりくつろいでいてくれ。また食事の時に呼びに行くから!」
そう言うと、ギルドの職員が「ホテル案内しますね。」と一緒にギルドを出た。詳細はリョック達のパーティーから聞くのだろう。
「なんか討伐したのはいいけど、仲間が死ぬのを見るとなんだかすっきりしないね。」
「そうね。私もまだあーいった経験がないから……」
「私はあるわ。この世界にいればいずれは体験する。その時、その後、どう生きていけばいいのかが大事になってくるわ。」
「シルク!?」
「お姉さんからの真面目なお話。1度考えておくのもいいわ。精神面でやられて辞めていく冒険者もたくさんいるから。」
普段は軽そうなシルク姉さんがこんな事を言うなんて意外だった。
その後、ギルマスとリョック達と食事を楽しみ、また辺境へ向けて帰って行く。
~ジャック目線~
「ギルマス!今ソレイユから使者が来て斗真達が無事マインティコア討伐したみたいですよ!」
すると、ギルマスはどや顔で、
「なっ!俺が行かなくても大丈夫だったろ!?」
「まぁ、今回はそうでしたけど、、、」
「ジャック!過剰戦力をつぎ込むのもいいが、それはいい変えると仲間を信じてない、いや、仲間の力量を把握してないことになる。ギルマスになるなら冒険者の力量をちゃんと把握しとけよ!判断を間違えるな!」
「うっす。。肝に命じときます!それにしても斗真は次はB級ですかね?一年足らずでB級なんて聞いたことないですよ!」
すると、その時突然地響きが、
(何だ?)
体勢を整え、窓を開けて、外を眺めると、家々が燃え広がり始めていた。
「ギルマス!!」
「このひりつかせる空気感をもつのは、、ドラゴンだ。」
「ジャック!お前は冒険者、職員全員に戦闘の準備を急がせろ!非戦闘員はヒーラー及び住民の避難誘導に振り分け、戦闘員はお前が指揮を取ってドラゴンに挑め!後、ペンタゴンの騎士団も総動員させるように使いを出せ!」
ギルマスは急いで戦闘服に着替えながら、その勢いのまま執務室を出ていこうとしている。
「はいっ!ギルマスはどちらへ。」
「一足先にドラゴンに挑んでくるよ!」
そう言うとすぐに執務室を出で行ってしまった。
~ギルマス目線~
(チッ!斗真達がいない状況でドラゴンか!)
階段を降りて、壁に飾ってある大剣を手にした。
(王家の秘宝「傲慢の大剣」こいつでまたドラゴンの首を切る時が来るとはなぁー。とりあえず被害を最小限に抑えないと。)
俺は急いで人の波を逆走するように、ドラゴンのところへ向かう。近づくにつれて、火の勢いが増していく。
(おい、おい、火の勢いが強すぎねーか!?)
街の中央に位置してある噴水のある広場にそいつはいた。しかも首が二つの双竜だ。
(そりゃ火がまわるのが早い訳だ。先ずは空に逃がさないように、)
俺は走ってドラゴンに近づき、ジャンプし、翼に向けて大剣を振り下ろす!
(よし、これで空は飛べない!!)
4つの眼が俺を捉える。と、
(来る!)
2つのブレスが俺を目掛けて放たれて、空中にいて身動きの取れない俺はもろにくらって吹っ飛ばされる!
(くっ!)
「1人で勝てる相手じゃなかろう!ほれ!」
声のする方を見るとペンタゴン辺境伯が立っていた。差し出されたポーションを飲み
「助かります!」
「まずは皆の準備が整うまで時間を稼ぐぞ!よいな!」
(久しぶりの痛みで思い出す。あまっちょろい考えで勝てる相手じゃない。頭を切り替えるしかない。被害がどうとか考えてる場合じゃない。殺るか殺られるかだ!)
俺と辺境伯が双竜と正面から向かいあう。
「じゃあ、行くぞ!」
号令と共にお互い双竜を挟むように、付かず離れずの距離を取ってとりあえず時間を稼ぐ。
(首一本になって対応は幾分マシになったが、力を溜める暇は与えてくれねーわな!)
そうこうしていると、ジャック、冒険者、騎士団が駆けつけた。
「ジャック!被害の事は考えるな!使えるものは迷わず使え!何を犠牲にしても討伐最優先だ!」
「了解!冒険者はギルマスの援護!騎士団は辺境伯の援護!」
「ならぬ!総動員タイガの援護じゃ!甘い考えをすてろ!まずは首一本!」
「………了解!騎士団ギルマスの前で防御の陣形!!命をかけて攻撃をギルマスに通すな!」
(辺境伯、、みんなすまない。これで力が溜める事が出来る。)
「うぉー!我ら騎士団の志をみせつけろ!!
「「「うぉー!!!!」」」
ドラゴンの首が騎士団に向けて突っ込んで行くと、1人が倒され、また1人が噛み殺され、冒険者の魔術の援護で時折攻撃はやむが、効いている素振りは見えない。
(気を溜めていると自分の気だけではなく、周りの気の流れから戦況が手に取るようにわかる。この一撃のために少なくない犠牲が出た。そいつらの重いも全部、全ての気を全部大剣に!)
「待たせたな!このクソドラゴンが!」
騎士団の後ろで力を溜める事の出来た俺はドラゴンの首目掛けて大剣を振り下ろそうとした時に、辺境伯が抑えてくれてたドラゴンがこっちに向けてブレスを放って来た!
(くっ、せめて、一太刀だけでも)
ブレスに吹き飛ばされながら大剣をドラゴンの眼に向かって振るう!傷は小さいながらも片眼の視力を奪うことには成功した。
(くそったれ!辺境伯が殺られた。このままじゃ、、、何か手はないか!?)
ちょうどその時、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ギルマス!大丈夫ですか!?」
(まったく、いいところで帰ってくるぜ!)