十話 王都へ
最初の依頼でとんだハプニングがあったものの、それから半年間は無事に依頼やら、訓練やらを順調にこなしていき、めでたくC級に上がった。訓練と言えば、1度魔法の威力をわからせるために、リンに撃ってもらうという無茶な訓練をギルマスからされて、危うく黒焦げになるところだった。「気」で弾き返せると思ったがまだ実力不足らしい。そのギルマスもこの半年間は忙しかったようであまり会えなかったが、今日久しぶりに呼び出された。
「失礼しまーす」
「おぅ!わりーなー、急に呼び出して。」
「いや、別に構わないっすけど何のようですか?」
「ちょっと一緒に王都に行ってほしくてな。半年前にハウルベアー倒したろ?その首を昔の知り合いに調査してもらってたんだが、解析が出たんだと。お前も当事者だし、一応知っておいた方がいいかと思ってな。」
「はぁ、まぁ、ギルマスがそう言うなら一緒に行きますけど……」
「なんだ?ノリわりーなー。王都だぞ!華の都だぞ!」
(元の世界知っちゃってるから、そんなに驚かないと思うんだよなー。東京の方が都会だし。)
「へー!ここが王都っすかー!思ってたより人も建物も多いっすねー。ホライズンとは全然ちゃいますねー。」
外壁の高さに圧倒され、中に入るときれいに区画整理されたみたいに建物が並び、正面に見える王城はまさしく王都の目玉とも言える。
「まぁ、ホライズンは辺境地だからな。」
ギルマスに連れられて歩いていき、立ち止まったので見上げると見覚えのある看板がある。
「ここ冒険者ギルドっすか?」
「あぁ、ここで待ち合わせしている。」
ギルマスが中に入ると中にいる冒険者達がざわざわし始めた。そんなことはお構いなしに受付に赴き
「ギルマスいるかい?」
「しょ、少々お待ち下さいませ。」
受付嬢は急いで奥に駆けていき、小柄な白いひげを携えたじいさんと一緒に出てきた。
「よー来た。タイガ。そっちの坊主が斗真か?」
王都のギルマスがこっちを見て来たので
「はじめまして、斗真です。」
「はじめまして。王都でギルマスをしとるヨーハンじゃ。」
手を差し出されたので、こちらも手を差し出し握手をする。
「このじーさんは俺が王都にいた頃からギルマスだからな!普通ならくたばってるぜ。」
「へー、そんなに長く。凄いんですね。」
「後10年は出来るわい。と、もう1人は既に来てお待ちかねじゃ。」
(もう1人?)
「これ以上待たしたら何言われるかわかんね。行くか!」
王都のギルマスに案内されながら奥へと歩いていき、部屋に入って行く。
「長旅ご苦労様。その子が斗真?」
部屋に入ると、ギルマスと同じ赤髪をした30後半ぐらいだろうか!?女の人がこっちを見てきた。
「はい。斗真です。はじめまして。」
「あぁ。こっちはガーベラだ。元パーティーメンバーだ。」
「はじめまして。こちらこそよろしくね。」
(へー。この人がギルマスの元パーティーメンバーか?)
「それより、何かわかったのか?」
ギルマスはガーベラさんの方を向いて話始めた。
「そうね。大体わかったわ。まずこれはハウルベアーの首で間違いはないわ。違う点と言えば血液の色が赤ではなく黒だってことね。」
「そんなことは見たらわかる。」
「待って!まだ説明の途中よ!焦らないで!」
「わりぃ、じゃあ、続きを頼むぜ。魔術師団長様」
(少し呆れたようにガーベラさんは言っていたが、その様子を
見ると仲の良さが伺える。それにしても魔術師団長なんだー。スゲーなぁー。)
「はぁ、じゃあ、続きを説明するわね。この黒色の血液を試しにラットに注入していたの。そうするとすぐに死んじゃったんだけど、10匹目で変化が現れたの。食欲が増え、他のラットにも攻撃を始め、狂暴化したわ。でもすぐに死んじゃった。」
「何が言いたい!?」
抑えきれずにギルマスが問いかける。
「つまり、自然にこうなったのであれば狂暴化してもある程度は長生きすると思うの。ただ、すぐに死んだ状況を考えると、ハウルベアーも恐らくこれと似たような素材の物を打ち込まれ、胴体部分にこれを濾過したり、増幅させたりする魔道具が付いていたと考えるとしっくりくるわ。胴体部分はすぐ焼けちゃったって言ってたでしょ!?混入した何者かが、証拠隠滅の為に死んだり殺されたりしたら、燃えるような仕様にしてたんだわ。」
「何のために?誰が?」
「それは、わからないけど狂暴化する薬と魔道具……人族では考えにくいわ。まだそこまでの技術はないもの。」
「おそらく「エルフ」ね!」