2.白色の 模様に映る ナツノトウ
――おい、起きろ。
僕はその声に目を覚ます。目の前にはなんとも言えない奇妙な空間が広がっていた。まるでゲームのバグのように、様々な物体が辺り一帯に散らばっている。だけど、散らばっているものは自分の知っているものばかりだった。
――残念だったな、お前はゲームオーバーだ。
「は、え? なにそれ」
僕は立ち上がろうとするも、そこで自分の体が無いことに気がつく。
「え、な、なに……?」
下を見ると、またその奇妙な空間が広がっている。視線だけ移動しているようだ。
――お前はゲームに負けたんだ。ただ、ゲームのサーバーが混雑している。戦争で人がたくさん死んでいるから処理が重たくなっているんだ。
「ゲーム? なんのこと?」
――お前はTHE EARTHに参加していたんだろ。忘れたのかよ。
「なんだ……それ……」
――まぁいい。お前はともかくあの世界から『死んだ』。そしてこっちの世界に戻ってくるんだ。
世界? ゲーム? 一体何のことだ。
――とりあえずお前の処理は一旦保留。一週間保留。クソ運営が処理でてんてこ舞いだ。だからお前は一旦下界へ戻れ。
「ええと……ここは天国?」
――なんでもいいだろ。とりあえず、戻すぞ。体はもう消えたから、魂の情報だけな。
「は? え?」
イマイチわからないまま、僕はどうしていいのかわからず、ただ目の前の奇妙な空間を見つめ続けていた。すると、その物体物体が元あるべき位置に戻るかのように移動を始めた。まるで、世界が再構築されるように。
***
「…………」
気が付くと、目の前に和葉がいた。ぼんやりと虚ろな目で机の隅を見つめていた。
見覚えのない場所だった。多分、和葉の部屋だろう。
「和葉」
呼びかける。――が、声が出ないことに気づく。そして触れようとして、自分に手が無いことに気づく。次に体がないことに気づいた。
「おいおいおい」
どうなってるんだ。
突然、和葉が泣き始めた。開け放たれた窓から漏れてくる虫の音のように、静かに、静かに。
そこでやっと僕は悟った。自分は死んだのだ、と。
事故だろう。やっぱり、川に飲まれたのだろうか。情けない。そして悔しい。どうしようもないもどかしさが悶々と心中に溜まっていく。
「ああ……」
声にならない何かを上げて、彼女は机に伏せた。
柔からなその髪に触れて、僕はここにいると言いたいけれど、やはり何もすることができなかった。
どこか、土の匂いがする。
窓の外に目をやると、降り始めているようだった。




