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AL2−1
「申し訳ありません、貴也様。
急な案件が入りまして、慰労会には
間に合わないかもしれません。」
冷静に物事を見定める、切れ長の目。
その瞳が僕を捉える度に、胸の奥が疼く。
「分かりました。御苦労様です。」
「皆様方に、よろしくお伝えください。」
深々と頭を下げて
颯爽と部屋から出ていく彼女の背中を、
僕は見送った。
乾さん、今日も綺麗だな。
口紅の色、いつもより
鮮やかな紅色だった。とても似合っている。
彼女は、吸血鬼専門の潜入捜査官。
落ち着いてきた最近では、
それ以外の案件も扱っているらしい。
だから、前よりも
一緒にいる時間が短くなった。
こうして、少し顔を合わせるだけで
一日終わることが増えた。
かなり優秀だからなぁ。
必要とされている。それは、当然の事。
寂しい気持ちは、贅沢だ。
ただ······
乾さんの着物姿は、見たかった。
きっと、すごく似合う。
間に合うと、いいけどな。




