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11.同調

【文字数】631字 【推定読了時間】約2分




 それから十八時間ほどが経過した夕間暮れのことだ。


 暮れる太陽からの陽射しを反射する雲が、不思議にピンクに輝いて、片や地上はビル群の影に覆われ早くも夜気に満ちている。




 各々の孤独でさんざめく大都会のその中心、東京タワーの足元で、ひとつ騒動があった。

 東京タワーの足に登ろうとした男が、警備員に拘束されたのだ。

 錯乱した男は取り押さえられた際に激しく抵抗したため軽傷こそ負ったが、大事には至らなかった。たとえば落ちて死ぬことは免れた。


 それで済んだのは偶然ではない。

 警備が強化されていたのだ。

 二ヶ月ほどまえから時折、東京タワーの四本足のうちの、ある特定の一本の周辺に限って、不審者がすくなからず現れていたせいだ。

 彼らはおしなべてふらふらとやってくる。それからの行動は様々で、地面を爪が剥げるほど引っ掻いたり頭を強か打ちつけたり、タワーの足に体当たりをしたり登っていこうとしたりするのだ。

 その場で理由を問い質しても言葉を発せる状態にない。のちに病院や警察で正気を取り戻す者もいるが、前後の記憶を失っている。

 この一連の騒動を知る関係者たちは、その理由こそ知らないが、おそらく掘るためだろうと推測していた。

 登ろうとするのも、落ちるためなのだ。

 落ちて体当たりして、地面を穿つためなのだ。




 同様の騒動は、今後どれだけ増えるだろうか。

 東京タワーに辿りつくまえに死傷を負った者は、どれだけいるのだろうか。

 ラジオによって“障り”がどれだけ広がったのか、そして移し移されていくのか、誰も知らない。




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