16話:襲撃
「うおおお反撃しろお!!」
「門が破られたぞおお!!」
エルフの要塞は阿鼻叫喚だった。
「いつの間にそんな近くまで!?」
というか監視がザルすぎるだろ。とりあえず俺達は転移は出来るので、危険は感じないのだけど……。
窓から下を覗けば、王国軍らしき兵士達とエルフ達が乱戦を行っている。更にぽつぽつとミレネシウス教団の神官の姿が見え、黒い法衣を纏った【異端審問官】達もいた。
エルフが撃つ精霊魔術がやはり不可視の壁で防がれているのが見える。
んー相性最悪だな。
「く、こうなったら私も出よう!」
剣を駆け出そうとするリクレットさんを俺は思わず止めてしまった。
「いやいや、指導者が自ら出てどうするんだよ。姫様死んだら終わりだろ」
「ネコ様がいる限り死なぬ!!」
いやいや。そんな謎理論で死んでもらったら困る。いや困らないか。
でもなあ……御飯もご馳走になったしなあ。
仕方ない。奥の手だ
「リクレットさん――」
「なんだルイン――ふ……あ……」
俺は、レーヴェのスキル――【魔獣術】を使って、睡眠魔術をリクレットさんへと掛けた。リクレットさんは速効で掛かり、そのまま寝てしまった。彼女をベッドに移し、アリアの横に寝かせた。
ルクスの精霊魔術と違い、レーヴェの【魔獣術】は攻撃魔術が少ない代わりに、補助や弱体化などの魔術が使えるので、結構便利だ。更に魔獣化も出来るらしい。
「ミウ、リクレットさんとアリアを守って欲しい。俺はあいつらを倒してくる」
「うん、気を付けてね」
「任せろ」
そう言って俺は窓枠に足を掛けると、そのまま外へと飛び出した。
「――魔獣化」
俺の身体が狼のような姿になり、身体能力が向上。そのまま建物の壁を駆け下りる。
地面に着地すると、俺は魔獣したまま走る。とにかく兵士は無視して神官を倒さないと。目の前に迫る兵士達を無視して上を飛び越え、黒い法衣の集団が固まっているところへと着地。魔獣化を解除する。
「懲りずに来やがったなお前ら」
「貴様は!!」
そこにいたのはイルナンテと……なんとかという【異端審問官】達だ。
「今度こそ断罪する!! こいつは特級指定異教徒だ! 皆容赦をするな!!」
「お前ら、精霊魔術効かないんだってな」
「異教徒の魔術なぞ効かぬよ!!」
「うん。だから物理で殴るわ」
俺はレーヴェの魂を武器化させる。
それは緩く反った、細く長い曲刀だった。刃には、まるで花びらのような波紋が浮かんでおり、武器というよりも美術品のような美しい見た目だ。
銘は――【九尾刀テンヲサキシモノ】
俺は下半身を魔獣化させて、その美しい刃を鞘に収めた。そしてそれを腰の高さで持つと、身体を捻る。
「馬鹿め! 武器を仕舞った状態で何ができる!!」
【異端審問官】達が嘲りながら俺へと持っている武器を振った。俺は、身体のおもむくままに地面を蹴る。
「【獣王流居合術――桜花絶閃】」
【異端審問官】達とのすれ違い様に、捻った腰を元に戻しながら、その回転力で刀を鞘から走らせた。
獣の瞬発力から放たれた刃の閃きと共に、花びらが舞う。
俺の背後で、【異端審問官】達が、顔を見合わせた。一見すると無傷だ。
「なんだ今のは? ふん、ただのこけおどしか!!」
「馬鹿め!! 我らはミレネシウス教団の中でも選りすぐりの精鋭な――」
俺が刀を鞘に収めたと同時に――斬撃が舞う。
「ぐはあ!!」
身体が俺の斬閃によって刻まれた【異端審問官】達が地面へと倒れた。
「今だ!!」
エルフの兵士達が好機とばかりに襲い掛かっていく。
あとは、彼らに任せて問題ないだろう。
俺は門の方へと走っていく。とにかく、現状がどうなっているか見ないと。
周囲の森は炎上していて、熱気がこちらまで届いている。いくらなんでもやり過ぎだろ!そして俺は門に辿り着くと、その先に見えた光景に、流石に絶望を抱いたのだった。
そこには――視界を埋め尽くさんばかりの大軍が押し寄せていたのだった。
☆☆☆
「いや、流石にこれは無理だな……」
俺がどんなに強いスキルや武器を持ってようとこのレベルの人数を倒すのは無理だ。
「んー、エルフには悪いけど撤退するか?」
なんて弱気な事を思っていると……
空から、大咆吼が響いた。
それは、俺にとっては聞き馴染みのある咆吼だ。
「な、なんだ今のは!?」
「ええい、あともう少しでエルフの砦が落とせる! 進め!! 異教徒を根絶やしにせよ!!」
前の大軍の兵士達や指揮官もうろたえている。
だが次の瞬間。
空から、数百という数の竜の群れが強襲。
火球が大軍へと放たれる。
「空襲!! 防護魔法をかけろ!!」
即座に対応しようとするのは素晴らしいが、もはや無意味だ。
よく見れば、竜の背中には武装したスケルトンの兵士が大量に乗っていた。
火球と同時に降下したスケルトン兵士達が的確に魔術師を狙って進撃していく。
スケルトンと竜の攻撃で、大軍が引き裂かれていく。
「撤退!! 撤退せよ!!」
魔獣化で視力と聴力を強化させると、奥の司令部らしき陣にいた総司令官が撤退しようとこちらに背中をみせていた。
だが、俺が瞬きをしたと同時に、赤い何かが襲来。司令部が地面もろとも爆散した。
爆音と共に黒煙が上がり、その隙間から、赤い竜の巨体が見えた。
「敵将、討ち取りましたね。あとは雑兵でしょう」
いつの間にか俺の横に現れたクロムウェルがニヤリと笑う。
「やっぱりお前らか……」
「はい。どうやら勇者はいなさそうだったので、容赦なく殲滅できますが……どう致しましょう?」
「ほどほどにな」
「では追い払う程度で抑えておきます」
兵士経ちが散り散りになって逃げていく。いまだに抵抗するやつらだけ、的確に刈り取っていくクロムウェルとゼテアの部下達。うむ、命令が行き届いていて素晴らしいね。
さてと。
成り行きで、エルフ達を助けてしまったが……これからどうしようか。
俺は迷いながらも、リクレットさんの自室へと戻る事にしたのだった。
年末年始でしばらく更新をおやすみします~
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