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7 【騎士と使者の出会い】

 途中何故かIrisは、必要なものを取って来ますと言い、神音とルカと別行動をし正門の前で集合することとなった。

 そして神音がルカに連れていかれたのは、何故か裏庭の近くに建てられていた小さな建物。その建物の前には綺麗な文字で ” キッチン ” と看板に書かれていた。


「…え、と。何でキッチンに…?」

「ここに、ヨシュア様がいるんです。騎士としての技術は素晴らしいのですが、少々…何というか。……説明が難しいですね」


 一体どんな奴だよ、と心の中でツッコミをしつつルカと共に恐る恐るキッチンに入る神音。

 ここに来る前にルカに少しこの場所について説明を受けた。この小さなキッチンはかつてヨシュアと言う騎士が大きな手柄を立て、褒美としてこのキッチンを願っただとか。


「ヨシュア様、いらっしゃいますか?」

「わぁ…」


 中に入れば、何とも綺麗な印象を受けるキッチンだった。食器は数こそ少ないが、綺麗に整頓され統一感があった。調理器具も手入れが良くされていて、ものを大事にしているのだなと感心する。

 …ただ、気になるのは何故キッチンに大剣だの絶対料理に使わないであろう禍々しさを発するナイフがあるのか。ただ、そこに触れれば無事に帰れる気がしない為、神音は見なかったことにした。


「…ヨシュア様?」


 ルカはそこで小首を傾げた。

 彼女曰く、基本的そのヨシュアと言う騎士は騎士としての仕事の時以外はいつもここにいるはずなのだが、との事。


「え、つまり彼は今日休日なんですか?」

「そうです。あ、お気にせず大丈夫ですよ? 今回の護衛の分の時間外労働賃金はちゃんと出ますので。」

「メチャクチャホワイト…」


 こんな国に生まれたかった…と社畜で溢れる故郷思い出しながらそうぼんやりと思った神音。すると、奥の方から地響きの様な音が聞こえて来た。


「な、んでしょうか。この音…?」

「え、え、え…!?」


 メイドのルカも知らないとなれば、神音は微かに焦り始めた。

 もしこの地響きが魔物とかやばい人間の類いならば、非戦闘員の私たちは死んでしまうっ…!

 表情を固めながら、地響きは徐々に近付きそしてついにその音の正体が二人のもとに現れた。それは、


「ん、ん? 今日は俺休みだよ、ね?」

「か、かっ……!!!!」


 頭の上には鹿の様な二本の角、きょとんと不思議そうな顔。緑と白が混じった短髪は、所々何故か血の様なものが付着している。身長は約2mはありそうなのに溢れ出る子供っぽさ。そして何より…


「可愛いぃぃぃぃぃ…、何でエプロンが猫プリントチョイスしたの…尊いェ…。」

「…あれ、あれ。その人間使者?」


 鼻をヒクヒクさせたかと思えば、肩に背負っていた大きな猪の様な見た目が少々グロい獲物をどさりと落とした。

 あぁ、地響きの原因はこれだったのか、などと思う余裕は神音にはなかった。神音は目の前の人外さん…ヨシュアの見た目に酷く興奮し、心臓を抑え「辛い」と呟いている。


「匂い、匂い。違うな……うん今回の使者は凄いね。」

「休日にも関わらず、すいませんヨシュア様。こちらの新しく来た使者、シオンの護衛の仕事を頼みたいのです。」

「……俺、俺。今日は休日って言った。働きたくないし、それにこの獲物調理しないといけない」

「王の勅命なのです。大変申し訳ありませんが、シオンを街まで護衛して下さい。」

「王、王の勅命…かぁ。無視すれば物理的に首が飛ぶし……」


 何やらぶつぶつと呟いたかと思えば、ヨシュアは深くため息をつき分かったと了承した。

 ただ、装備品がないから少し待っていろ、と言いルカと神音を置いてキッチンから出た。


「本当に、良かったんですか?」


 働きたくないって完全に言ってましたけれど、と悶えから帰って来た神音はおずおずとルカに尋ねた。


「ヨシュア様は…先ほども言いましたが説明が難しい方です。剣の腕は恐らく騎士の中で一番ですが、オンオフの激しい方で、休日は例え城内で魔物が暴れていようと、王が言わない限り絶対に働きません。」

「激しすぎでは!?」

「それに加え、このキッチンを欲した理由も。物を切りたいという理由からで…。しかし、ヨシュア様の料理は中々に美味で結構城内でも有名なのですよ?」

「んんー、説明を受けて余計分からなくなって来たかも…」


 皆似た様なものです、と笑うルカ。

 暫くすれば、先ほどのエプロン姿ではないちゃんとした格好に、剣を腰に付けているヨシュアが帰って来た。


「ヨシュア様、鎧は…」

「あれ、あれ。重い。それに…今回は視察だって聞いたし、目立ちたくはないだろうと思った」


 神音はその言葉に驚いた。ぱっとした感じ、ルカからの説明も加え、言葉は悪いかもしれないが、ヨシュアはアホか戦闘狂なのだとばかり思っていた。

 しかしどうやら中々に頭は回る男の様だった。


「ほら、ほら。行くよ」

「あ…」


 ヨシュアが歩いた時、陽の光が彼の角を飾る装飾品に反射し、キラキラと輝いた。

 その光は彼の髪自身にも反射し、神音は何故か神秘的な物を見たような感覚を覚えた。


「っ…ヨシュアさん!」

「ん、ん?」


 神音ははにかみ、真っ直ぐとヨシュアの瞳を見つめ口を開いた。


「えっと。今日はよろしくお願いします」

「…………、」


 その言葉に驚いたように目を見開くヨシュア。そしてどうしていいのか分からないのか、おろおろと目を泳がせた。


「う、う…。今回の使者は苦手だ。あったかい感じは慣れない…。」

「え…あ、すいません」


 苦手と言われ、凹んでいると隣でルカが耳元で「照れているだけですよ」と囁いた。

 その言葉に神音はばっと顔をルカに向け、本当にと問えば恐らく、とルカは返す。


「では、行ってらっしゃいませ」

「ルカは…」

「私はこの城のメイドです。シオンのお帰りを、ここでお待ちしておりますわ」

「そっか…。じゃ、行って来ます。」

「はい」


 大きなヨシュアの後ろをついて行く神音を見つめ、ルカは城の中へと戻って行った。

がっつり個人の趣味で角を生やしました。個人的なイメージとしては、ヨシュアの髪は白い髪と緑の髪が交互に生えているイメージです。すっげぇな…。

次回、きっとヨシュアとIrisが出会います。んでなんやかんやします。

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