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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
蒼の剣姫巫女篇
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むこうからのまさか


 パンケーキも食べ終わり、店から出る事に。


 六花、ナギ、エイダ。何とも(かしま)しい限りで。

 目を引く髪の色と美女ばかり。道行く人々の視線を独占だぜ!


 頼むから見ないでくれ。女装姿を見られたくはない。


「いやぁ、それにしてもどうです、私の眼! 私の腕! シュウさんと言う原石!」

「んっ」

 きゃっきゃと話すエイダに、ナギは満足げに頷く。


「見出した私も鼻が高いよ」

 ふふんと、鼻を鳴らす六花。本当に居心地が悪い。


「さぁ、シュウさん、どこに行きます? 何処に行きたいですかァ!」

「もっと服? 化粧品も必要?」

「……ところで、訊きたいのだが」

 六花が言う。二人は彼女の言葉に聞き耳を立てる。が、俺には聞こえない様に小さく話す。


「不覚、現状に甘えていた」

「六花さん、やりますね……。流石の私でもそこまでは……」


 わなわなと震える二人。え、なに? 怖いんだけど。


 逃げて帰りたい。そうは思うが、読まれている。

 足取りをナギが読み、逃げようとすれば、先に立つ。

 エイダは常に手が届く位置を取り、一定の距離を超えれば、すぐさまに手を伸ばす。


 逃げようと思えば逃げられるだろう。しかし、一歩止められる。

 そのうちに、女装をばらされたら――そうでなくとも何をされるか。


 恐怖から逃げられない。


 故に、彼女たちに従い、付いて行く。


「しゅうちゃん、どうしたの?」

「覚悟を決めましょう」

「シュウ、どうした? 体調が悪いのか?」


――その結果がココだ。


「下着屋……」

 血の気が引く。居心地の悪さがダンチだ。

 というか、俺は居るべきではないだろうココ。


「……私もそのぐらいは、許すべきだと思っていました」

 エイダが語り始める。


「その為に、ロングスカートをメインにしていました」

 確かに、基本的に長いよなスカート。


「ですが、それは”逃げ”でした。六花さんは私たちに気付かさせてくれました」

 涙がきらり。ワザとらしく泣くエイダ。


「集人さん、逃げては駄目ですよ」

 ニコリと笑うエイダ。泣きたくなるくらい可愛い笑顔だよ。

 瞬間的に視線を回し周囲確認、空いた道を探る。退路(ルート)確定、我前に敵は無し。


「さぁ、行きましょうか」

 そう言い、先へ進むエイダ。


 呼吸を読み、皆が息を吸う一瞬(スキを見て)――地を蹴り――俺を止める壁(魔法障壁)


真逆(まさか)、私が手を打たないとでも?」

 ゆっくりと振り返りながら、エイダは言う。

 張り付いたような笑顔。次は無いぞと、言外に伝えられる。


 俺は従う。ここで泣いたら、不審者だ。

 俺はポーカーフェイスで(表情を変えぬように)店へと入った。


 奇妙に甘い匂い、色とりどりの下着の数々。目のやり場に困る。

 もののついでと、エイダは自分の分も買うと言いだす始末で。


「最悪だ」

 小さくつ呟く。ナギと六花は単に俺の物を見繕っている。どれにしろ、身に付けられるようなものじゃないぞ。


「どうかしましたか、お客様」

 店員が、近寄る。辞めてくれ、頼むから寄らないでくれよ。バレたくない。


 黒い髪色、白い肌。綺麗な人だ、見覚えがある(・・・・・・)

 

「――紅い靴」

 すぐに、答えが出た。顔を隠す仮面は無いが、その顔立ち間違いない。


 一瞬、画面が切り替わる様に、一切の中割り(予備動作も)無くその顔に仮面が表れる。

「おャ、蒼の【虚無】(ヴォイド)使い(マスター)


 思考を回す。意思を伝える。ナギとエイダに作戦の実行を伝え――どうやって、六花を逃がすか。


 ともかく一瞬が欲しい。俺は姿勢を低く、その身を赤い靴の女に当てる。


「ハハ、遊ンで欲しィノですかァ!?」


 それをワザとらしく、大きな身振りで避ける女。


 突然の警告(アラート)


 紅い靴の女も一瞬身をちぢこませる。姫巫女による裏工作の一つだ。

 蜘蛛の子を散らすように逃げる人々。その中には六花も居るのが見えた。


「あァ、成程。巻き込みたくなィ、と」

 そうして、俺を見る仮面の女。俺の横にナギが来るまで、静かにただ待っていた。


――強者の余裕。


「さァ、踊りましョう。死の舞踏を」


 にこりと笑う女。俺は戦闘態勢を(ナギを手に)とり、それと対峙した。


 エイダからの言葉、増援が揃うまで三分。

 三分間を俺とナギで持ちこたえなければならない。


 無理だろうよと、ため息を一つ。

――瞬間、建物が四方八方へと吹き飛び、広がる空、舞う下着。何とも閉まらない始まりだこと。



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