マジカール
――何故、こんな事になっているのだろうか。
俺はとエイダは正座をし、ナギに睨まれている状態だ。
「にぃ、何故言わなかったの?」
ここで言う、”言わなかった事”は、エイダが居る事ではなく、魔法少女の件。
つまりは、過去の契約について説明する必要があったという事だ。
「それは、ですね……」
エイダが口を広くが、紅い瞳が、それを睨む。スゴ味がある。エイダすらも言葉を止めるだけの圧が。
「……言いたくなかった」
嘘を吐けば、すぐにバレる。そう言う相手だ。だからこそ素直に答える。
「何故?」
僅かに意味が変わる。言わなかった理由から、言いたくなかった理由へと。
しかし、それも言いたくないのだから困りもので。
無言を貫く俺と、それを睨むナギ。
「恥かしいからですよ」
沈黙を破ったのは、あっけらかんと答えるエイダの言葉だった。
「恥かしい?」
「ええ、そりゃまぁ恥かしいですよ。集人さんは、剣姫騎士になるために生まれたとはいえ――」
すっと立ち上がり、俺とナギを囲うように歩くエイダ。
その手には、いつの間にか小冊子が一つ。
「――男性が、このような格好をするのは、ねぇ?」
それは!
気が付き、止めようとするが、動くことができない。
「これは……」
ふぁぁ、と息を飲むナギ。
その小冊子に描かれているのは、俺だ。
給仕を模した、硬さを含む落ち着いたシルエット。露出は少ない。しかし過剰なまでのFrill・Frill。少ないながらも過剰な露出、綺麗に開いたその腹部。魔法少女の姿だ。
それ親父の事書いてある奴じゃん!!
《これはですねェ! 私の秘蔵の原本です!! オリジンなんですゥ!!》
エイダの声が脳裏に聞こえる。悲しみや怒りを含む声色だ。
よくよく見てみれば、小冊子ではなく、カバー? 文字列や加工の無い、俺の写真だけだ。
え、嫌だけど。なおの事、嫌だよそれ。
「……悪くない。否、むしろ、良い」
ふんすふんすと鼻息の荒いナギ。えぇっと、ナギさん?
「わかっていただけましたか?」
そう言い、手を差し出すエイダ。返せと言うジェスチャー。
それを見たナギは丁寧に写真を畳み、抱きかかえる。返す気は無いと言うジェスチャー。
「っ……」
ピクリとエイダのこめかみ辺りが動くのが見えた。しかし、商売用の笑顔を絶やさない。
「……見たい」
小さく、ぼそりと言う声。
「なんて?」
聞こえていたが、ある意味では再確認の意味で訊く。
「私も、にぃの魔法少女姿を、見たい」
ピシリと、体が固まる。何故、Why、脳裏をグルグルと回る思考。
エイダの笑顔に。加虐的な意味合いが足されるのが見えた。
ナギの眼の色、怒りから期待へと変わって居る。
――逃げろ!
一歩遅い意識、しかしながら最適解を導き出した俺は立ち上がり――
走る激痛。
――倒れ込んだ。
期待から爛々と輝く紅い瞳。
蛇に睨まれた蛙。
愉しもうと蒼い瞳が見つめる。
猫の前のネズミ。
あ、詰んだ、詰んだ。




