YABAI
父親の呼びかけで何とか事なきを得た。
なんか怖かったよサヨコさんもナギも。
エレベーターがかなりのスピードで地上へ向かう。かなり良い奴なんだろうな、揺れも少なく、スムーズだ。高給取りだとは知っていたが、これは件の組織「姫巫女」が出したのだろうか。流石は国がバックだ。
「しかし、アキラは何をしているんだ?」
サヨコさんが訊く。まぁ、これは遅いから怒っている訳じゃないのはわかっている。言いかたがトゲっぽいが。
まぁ、基本的にアキラの外出は日常の買い出し。それ以外はランダムなタイミングで、深夜に地下闘技場に行くくらいしか予定はないわけで。
時計を見れば時間は十八時を過ぎている。思ったよりは早いが。普段なら家にいるタイミングだ。
「あぁ、アキラは――」
――高校に行ってるからな。
言えるか、ソレ?
脳波を読んでいるのだか知らんが、ともかく『エイダ!エイダ!』と呼びかける事しかできない。助けてくれよエイダ!!
言い訳が欲しい言い訳が!!
《あぁ、もうウッセェーですねぇ!》
魔術的な何かが繋がる感覚。今俺魔法の事わかった!!
《いや、いや、集人さんは全然わかってませんよ、悲しいほど才能が無い》
随分とキツイ事を言われたが、今はそんな事よりも、助けが欲しい。
妙に機嫌の良さそうな声色のエイダに、事情を「読んで」もらう。
《……そうですね、妻子持ちを女子高生にした言い訳は考えてませんでした》
ふざけんなよ! 俺正直に言えばいいのか!?
「にぃ、アキラはなにかしてるの?」
「あぁ、その……」
ナギが心配そうに見てくる。どうするどうする。考えろ、考えろエイダ。
《あぁ、どうするんですか!? これバレたら辞めさせられちゃうんじゃ!?》
俺としては親父に女子高生は辞めて欲しいのでその方が良い気がしたが、何が問題なんだろうか。
《OVA枠で撮影ってるんですよ!? これ頓挫したらどうなるか……》
二期は撮り終わったって言ったじゃねェか!?
《だからOVAでしょう!? 受ければ三期、映画もあり得ますよ!》
堪ったもんじゃねェ!?
《あ、そうですアルバイト! アルバイトを始めたって事にしましょう! 元々料理とか好きだったんですし、趣味を生かしてって説明すれば!!》
「シュウ、アキラは何を?」
「ば、バイトだバイトをしてて」
とっさに出てしまった。と言うか他に言い訳がでねぇ。
「バイト?」
そうだよな! 金は馬鹿みたいに入ってくるし、グレーな金なら唸るほどのファイトマネーを貯めてるもんなアキラは!
「ほら、趣味を活かして、さ」
「なるほど」
わかっているんだか、わかっていないんだかと言う様な返事をするサヨコさん。本人に訊くな、この顔。
《仕方ありません。アキラさんには口裏を合わせて頂けるよう伝えておきます》
そうだ、エイダは俺にこうして話しかける以外にアキラにも出来る筈。これで少しは隠せるか!?
エレベーターはから出ると、三人でゆっくりと階段を上り、書斎へ戻る。
「アキラも、色々な人とか関わった方が良いと思ってさ、俺が勧めたんだよ」
あぁ、らしい、らしくないかこの理由。上手く行きそうだ。
「確かに、アキラはあのままじゃどうなるか」
それは俺も思うところだ。俺にべったりで、外に出て知り合いはあいつにボコられて恨みを持ってる地下格闘家だけ。本当にバイトか何かさせた方がいいんじゃねぇかな。
「まぁ、詳しくはそのうち話すさ」
そういい、扉を開ける。
「あっ、皆ココに居たんだっ! おかえりなさいっ!」
にこりと、アキラが出迎える――高校の制服を着た状態で。
《ええ、集人さん! 話はつけました、大丈夫です!!》
「趣味を、活かして、色々な人と接する」
サヨコさんが、先までの話を反芻する。
女装を活かして、女子高生の格好で、色々な人と接する、バイト。
なんで、着替えて、ないんだ。
ぞっと、血の気が引く感覚がした。




