キングダム
怒られはしたが、これ以上の話は帰ってからと言う事になった。
少しのバツの悪さを感じながらもサヨコさんの後ろに続く。
周囲には、手慣れた様子で片付け作業を行う人々、数々、続々と。
「あれは?」
「式部職、国家公務員だ」
へぇ、大変だねぇ、こんな片付け作業までさせられて。
「って式部職!? みやのうちの……」
「そちらで呼ぶか、妙な学ばかり付けて」
やれやれと言う調子で笑うサヨコ。いや、だって嘘だろ?
「にぃ、皆そういう立場、さよこも、ナギも」
マジかよ。
「『穢れ』との戦いの歴史は古い、更には国家規模の問題だ」
つまりは、国が対策をしていないわけがないだろうと、サヨコさんは言う。
「民に話したくない。故に秘密裏に処理されている。隠れ蓑としての式部職だ」
「むかしから、『穢れ』との戦いは儀式」
むんっと胸を張り自慢げに話すナギ。なぜそんなに自信満々に言ったのかわからないが、まぁ可愛らしい仕草だったし考えるのは辞めよう。
《聞こえてますかー!!》
ちょっとほっこりとした気持ちで満たされていたのに、今や心の内は寒い冬空の様な感じだ。嫌な感じだ。
《あぁ、聞こえてるみたいですね》
エイダの声がやっと落ち着いた様子で聞こえる。音が大きくてうるさかったぞお前。
《何がうるさかったですか!? なんだって通じないんですか!》
はぁ? 何の話だ? うるさいぞお前。
とは思ったが、ふと考え直してみれば恥ずかしい恰好をしてすぐは聞こえたが、戦って居る最中には声が聞こえなかったな。
《ええ、どうもジャマーで邪魔されていたみたいで》
はぁ? なんだって? つまらな過ぎる冗談は聞き流しつつ、何の用かを尋ねる。
《あぁ、その剣姫騎士の話を聞いておいて欲しいなって事です》
そんな話の為にあんなガンガンうるさくしたのか……。まぁ、いい。俺も聞かないわけには行かないしな。
「サヨコさん、色々詳しく聞かせて貰っても良いかな?」
「……そうだな大局の話は未だ出来ていない、そこから始めよう」
そういい、サヨコさんは、立入禁止のテープを潜る。
近くに立っていた警察官の人もわかっているようで、どうぞと道を譲る。それに続くナギ。
俺もそれに続き、家路についた。
またも地下。あんまり、良い所じゃないと思うんだがな、ココ。
「さて、何から話すべきか」
サヨコがうんうんと悩む。それを尻目にナギが口を開く。
「れきしのおもてぶたい? 最初、最後、ヒミコ」
「もうちょっとだけわかりやすくしてくれ」
「あぁ、そこから話すか」
サヨコはハっとした様子で言うが、意味がわからんぞ。
「歴史上に顔を出した最初で最後の剣姫騎士が彼の有名なヒミコだ」
「うわぁお、トンデモ歴史の時間かよ」
「茶化すな。姫巫女と書いてヒミコ。我々の組織の名でもある」
「この国の歴史、その全てが我々姫巫女と『穢れ』の戦いの歴史だ」
そう言うサヨコさんの表情は随分と辛そうなものだった。
そんな顔をして妙な紙芝居を出さなければ、俺も真剣に話を聴けただろうに。




