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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
蒼の剣姫巫女篇
39/63

我慢乱 〜TAMARAN〜


 嘘をつきました。


「にぃ、似合ってる」

「そうかよ」

 力なく答える。


 その手に握るは、黒い刃。身の丈をゆうに超えるほどの直刀。その刀身は光を喰らい、今か今かと血を望み吠えたける。

 その身に纏うは、蒼き鎧。金の縁取りをされた甲冑は余りに巨大。その装甲は光を放ち、きらめく姿は燦々と。


 それが全身鎧であれば胸を張り、肩で風を切り、戦いに臨んだであろう。


――またこんな格好か!


 装甲は肩や四肢の先、腰回り、胸元には存在するが、基本的にはほぼ無防備。ビキニアーマーに比べれば防護は高いが、何の気休めにもならない。頭は王冠を乗せただけで、完全に防御を捨てている。フリルの多い、ドレスのような服装は異様な程に短いミニスカ、肩周りはノースリーブ。どうかしている。


 本当に、姫騎士の格好だ。髪も伸び、その色が青く変わって居る。見ろよ、風になびくとキラキラして見えるぜ。


 呪われてんのか俺は。


《……心中お察しします》

 黙れ、頼むから。


 しかし、肥大化した装甲が無防備な部位を隠しており、弓矢などには強そうだ。また、巨大な肩当は背中から伸びており、ノースリーブなのもあって肩周りは自由であるし、巨大な籠手(ガントレット)すね当て(グリーブ)も重さを感じない。動きやすさはかなりの物だ。


「にぃ、はやくヤろ?」

 横を見れば、どこかぼんやりとしたナギが浮いて居た。漫画とかアニメで合体したキャラが話す時とか、超能力のヴィジョンが浮いてる時みたいな映像表現(SFX)だ。


 手に握る刃は随分と大振りだが軽い。しかし、振るえば適度な重さを感じる、手に馴染む、程よい重さだ。


「……剣なんて使ったことねぇぞ」

 見るからに日本刀では無い。直刀、無理に当てはめるなら苗刀が近いか?

 何にせよ日常で使う物でもなく、訓練もしてない人間がおいそれと使えるものではないだろう。


「大丈夫、にぃが望めばナギは、答える」

 ぐっ、とナギが親指を立てる(サムズ・アップ)

 目がぐるぐるで、顔は上気し赤く染まる。呼吸も荒く、浮ついた様子。何時もの眠たそうにしているナギとは思えない程の興奮具合だ。そんなに戦いたいのかお前は。


 その熱に俺も浮かされたのか、無意識のうちに、刃を握る力が強くなる。

「んっ……。にぃ、ヤろ、早く、強く、ね?」

「そうだな」


 構える。無意識のうちに、体が動く。


――蜻蛉(とんぼ)(かまえ)


 なるほど、これなら剣の種類なんて関係ない。

 両の手で刃を握り、右肩に合わせ、その手を顔の高さに。左足を一歩前へ進ませる。示現流に伝わる蜻蛉の構。その本質は――


 大地を強く踏み込み、眼前に映る『穢れ』に向け自らの体を突き進ませる。


「チェェエエエエエエエスゥウトォオオオオオオオオオオオ!!!」


 届く、その時に刃を振り下ろす。


――近づいて、叩きつける。


 シンプル故に強い。

 斬りつけた『穢れ』の死を確認することもせず、次の『穢れ』に向かい突き進む。コレだけの威力、重さ、生きているわけがない。


「もっと、もっとだ!」

「もっと、もっと、ヤろう! 全部、全部を!」


 振り下ろす刃の重さ、風を斬るがゆえに、空気が弾け、周囲の家々が震え、ガラスがひび割れる。


 いくらの敵を切り伏せたか、足元のアスファルトはひび割れ、砕けている。そうして出た残骸を一切無視し突き進むこの肉体。


 強化されている。身体も軽く感じるが実際には異常なまでの重量。踏み込みの一歩で道路は砕け、マンホールの蓋を踏もうものならひしゃげてしまう。


 気が付けば、周囲に『穢れ』の姿は無い。呼吸を落ち着ける。周囲はまるで廃墟のようで。


「シュウ、ナギ。何かいう事は?」

 俺の目の前には、未だに変身を解いていないサヨコの姿が。


「俺、ヤっちゃった?」

「さよこ、ナギ楽しかった」


 思い思いの言葉を話すと、サヨコが俺の頭を強く叩いた。糞痛い。横を見ればナギも頭を押さえて涙目になっている。


「加減しろ馬鹿者共め!」

 サヨコさんはすごく怒っていた。


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