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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
蒼の剣姫巫女篇
38/63

死が二人を分かつまで


 エレベーターの扉が開いてからの動作は、驚くほど俊敏だった。


「――ふっ!」

 扉が開ききる前に、その身を滑り込ませるサヨコ。一呼吸、一足で、眼前の階段を飛び越えた。

 手に持った剣を全身駆動により、狭い書斎の中で振り下す。その切っ先が、窓のロックを外し、横に薙ぎ払う動作で、窓を開く。

 その全てを前進と共に行い、開いたその窓から、直接外へと飛び出した。


 恐ろしく速いその動作。

「にぃ! 殺ろ! ヤろ!」

 俺も興奮したナギに引きずられなきゃ、見逃しちゃってたね。

 と言うか、いてぇよ! 肩、肩外れる、掴まれた手むっちゃ色変わってるし!

 引かれる速さも驚くほどの物で、声も出せない。


《――さん!? なんで聞こえないんですか!?》


 おおう。外に出た途端頭に流れる大音響。キンキンする。

 エイダの声は、今まであまり聞いた事のないタイプの声色をしていた。泣いてんのかコイツ?


《これでお別れって、そんなのってないでしょう!? 集人さん! 集人さん!》

――うるせぇ! 聞こえてるわ!


 肩が痛いし、声も出せない、痛い痛いが山のように積まれて(スタックされて)るのにこれ以上面倒を乗せないでくれ。


《はぁ!? 泣いてねェですよ! 私を泣かせたら大したもんですよ!》

 もっと可愛げがあれば慰めてやろうと思ったがコイツは……。


 サヨコに続き、ナギが、そして俺も外に出た。

 日に晒される。夏は過ぎたが、受ける日光はいまだに熱い。だと言うのに、冷たい感触――風だ。それも速度が出ているからこその冷たさが、俺の体に触れる。


 そして、浮遊感。地面を踏み絞め、ナギが跳躍する(ジャンプ)。隣の家の屋根に乗る。俺の体重だって軽かねぇぞ……。本当に、この義妹(妹)は人間じゃないのだろう。


《人間じゃないってなんですか!? 妹さんポっと出の上、種族不明ですか!?》

 うるせぇな本当にコイツは。と言うか、地下での話聞こえてなかったのか?


 どうエイダに伝えた物かと考えていると、突如首をこちらに向け、ギョロリとした紅い瞳が俺を見る。


「――にぃ、"ソレ"はダレ?」

「は?」


 燃える様にこうこうと輝く紅い眼。正直に言えば怖いぜ、ソレ。


「聞こえてるよ、にぃに"憑いてる"んでしょ?」

《な、何を言ってるんですか、妹さんは?》

「名乗れ」

 エイダの言葉に被せる様に、ナギが言う。

「……エイダって奴だ」

 俺が代わりに答える。エイダ自身が答えたところで、こうなったナギが落ち着くとは思えなかった。


「エイダ――覚えた。にぃ、変なの拾っちゃ駄目だよ?」


 少しだけ、ナギの感情が収ったようだ。一息吐くと、丁度狙いの場所に付いたらしい。速さにより、浮き上がった俺の体を、ゆっくりと地面に下すナギ。その膂力は少し怖いぜ。


 落ち着いて先を見れば、『穢れ』――『The END』、何にせよ『敵』の群れだ。


「ナギ! 時間は稼ぐ、シュウは頼む!」

 俺たちよりも到着が早かったようで、既にその身を剣姫騎士へと変えた母親(サヨコ)が戦って居る。


《『The END』の位相差耐性を抜いている!? どういう事ですかこれは!?》

 頭の中でガンガン叫ぶな! なんだその聞いた事のない耐性!


 頭を押さえていると、ナギが俺の裾を引き、こっちこっちと伝えている。

「どうした、ナギ?」

「にぃ、私の眼を見て」


 なんのことやらと思いつつ、しゃがみ込み、ナギの眼を見る。赤い、紅い、鮮血のような瞳。

 その瞳孔が、縦に大きく開かれる。まるで、ヘビのようなその眼に睨まれ、一瞬動きが止まる。


「なっ――」

「にぃ、やろ?」


 俺の頬に手を当て、ナギが俺の唇を奪った。


「つらくて、痛い。だけど――やろ?」

 ナギの身体の内から黒い何が、渦巻く何かが生じ、その身を変える。

「シューにぃと二人なら出来る」

 黒い和装。太腿の膨らんだ袴の上に、羽織が一つだけ。その為、大きく前の開かれた羽織の下には柔肌が見える。


「死が二人を分かつまで――戦い続けるの、永遠に」


 ナギが笑う。屈託のない笑みでは無い。淫靡で、縋るような、スレた笑い方。


 そうか、こいつは本当に妹じゃないんだ。

 力や振る舞いよりも納得がいった。


 ナギが手を出す。その手は小さく震えていた。


「わかったよ、乗りかかった船だ」

 だけども、家族だ。


 その眼が助けて欲しいと訴えているのだから、その手を掴む。


「一人じゃ嫌だが、二人なら、な」

「にぃ、ありがとう」


 そこに後悔なんて有るはずが無い。


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