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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
蒼の剣姫巫女篇
35/63

ドリフター


 ふと気付くと、俺はサヨコに連れられ、ソコにたどり着いた。


 それは、見上げるような大きさで、一目では特別である事に気がつかないような、そんな建物。

 しかし、俺には分かる。これは特別な場所だ。


――そう、俺の家だ。


「どうした、付いて来い」

 サヨコはきょとんとした顔で俺を見る。

「にぃ、はやく帰ろ?」

 ナギも眠たそうにこちらを見てる。


「いや、よぉ!? 俺の出自だとか、その剣姫騎士(ツルギノヒメキシ)とか話す流れじゃないのかよ!?」

「だからこそ、家だろう?」

「いや、そう……か?」

 確かに駅前のチェーン喫茶店で話されても困るが……。

《私も話をするときは、家でしたね……》

 そうだな。だが、俺お前の事が一番困ってるよ。


 そんなことを考えていると、サヨコは納得しただろうという表情で家に入っていく。

 しかし、ナギは目を真ん丸くして俺を見ると、口を開いた。

「……にぃ、”憑いてる”。さよこ、下で話そう?」

「何……? そうか、そう調整されているものな。わかった下に行こう」


 え、なに? 何の話?

 ともかく追いかけると二人は家の奥、書斎に入る。狭くて話せたもんじゃないだろう。


「たしか、これだな」

 そういい、本棚の一画、本を押し込み、取り出し、押し込み、取り出しを繰り返すサヨコ。


《え? 何してらっしゃるんですか?》

 俺にもぜんぜんわからん……。


 どれほどそんなことをしていただろうか、突然――「あぁ、設定を変えたんだった」と言い出すと、サヨコは折り畳みの携帯を取り出し、一文字一文字入力し、メールを送った。


「これでよい」

「ん」

 二人は満足そうだが……。そんな二人を眺めていると、ゴゴゴと机が吊り上げられ、その足元の床が開かれ地下への階段が。


「はぁ!?」

「付いて来い、シュウ」

《うわぁああ!! 隠し階段ですよ! 隠し階段! 初めて見ましたよ!》

 俺もビックリだよ。まさか自分の家に地下室があったとはよ……。


 そうして階段を下りると、そこは……小さな個室?

 俺とサヨコ、ナギの三人が立てばそれだけでわりと窮屈なスペースだ。更には薄暗い。


「うむ、もう少しだ」

 サヨコが言うと、目の前の壁が開く――否、扉だったようだ。その先にも小さな空間(スペース)

 この空間に比べて明るいそれは、一目でわかった。エレベーターだ。


「おい、おい」

 どんだけ地下が深いんだよ。


 ガラス張りのエレベーター。外は開けて見える。

「……しっかりとあたりを見ておけ」

 ゆっくりと降りるエレベーターの中。サヨコが小さくつぶやいた。

「はぁ?」

 辺り一面を埋め尽くす無数のガラス筒。一つ一つ、何かが入れられているのはわかる。


「それを、知る必要がある」

 エレベーターが下る。だんだんと近づくにつれ、それが何かは理解できた。


――人間だ。


 そうでない様(イギ)に見える者(  ョ  ウ)も居る。しかし、どこか人間性を残しており、元がそうであった事が見て取れる。


 視線をゆっくりと移していけば、変化を追走するように見ることが出来る。腕より進む、黒い金属のような皮膚疾患はだんだんと広がり、全身を変えて行く。


――異形の怪物へと。


 そうして、それには覚えがあった。それは、『The END』の姿だった。


「彼女たちは我らが先達、護国の戦士、英霊」

 ガラス筒に入れられた女性達を慈しむ様に、サヨコは言う。


「――私たちの行く末だ」





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