第1話「本になったら、ゴール?」
ストレス発散のつもりで、物語を考えるようになった。
小さい頃からアニメよりドラマばかり見ていたせいなのか、物語を考えるときも、頭の中にはドラマのような場面が浮かんでくる。
登場人物がいて、会話をして、動いている。
それを追いかけるように、物語を書き始めた。
書いてみると、今度は誰かの反応が見たくなった。
そこで初めて、小説投稿サイトに作品を載せてみた。
自分が書く側になってから、「本になる」ということを以前より意識するようになった。
自分の書いた物語が、一冊の本になる。
それは、ものすごいことだと思う。
一次選考を通り、二次、三次と残って、さらに最終選考まで進む。
そして、その中から賞を取る。
宝くじに当たるくらい、と言ったら大げさかもしれない。
でも、それくらい途方もないことに、私には思える。
文芸書を手に取ると、一冊の本にどれだけ手間がかかっているのだろうと思うことがあった。
私は、文芸書の表紙を外して見るのが好きだった。
カバーを外したハードカバーには、表とは違う絵柄が入っていたりする。
紙の質感や色、細かな装丁にも、その本ならではのこだわりがある。
普段はカバーに隠れて見えないところにまで、「読者に楽しんでほしい」が詰まっている。
そして本は、一度読んだら終わりとは限らない。
何度も開かれ、何度もページをめくられる。
長く手元に置かれることもある。
そのために、表紙や綴じ方まで、繰り返し読むことに耐えられるよう作られている。
書店で働くようになってから、本はただ「文章を紙に印刷したもの」ではないのだと知った。
一冊の本になるまでに、思っていた以上にたくさんの工夫と手間がかかっている。
そういう本を見るのが、私はとても好きだった。
けれど私は、「本になる」という言葉を見ると、ときどき思い出すものがある。
書店員だった頃、毎日のように見ていた本棚だ。
本になったら、ゴール?
書き手にとって、本になることは大きな到達点なのだと思う。
でも、書店員だった私が見ていたのは、その先だった。
本になった瞬間から、今度は、
「この本は、読者に届くのか」
が始まる。




