第28話「【救出】コンビニ強盗と、配送トラックで現れた先輩の件」
頭の中に響いた声は、それきり途切れたままだった。
「柊斗が、危ない」
立ち上がった。
「直哉くん」常盤先輩が驚いた顔をした。
「友達が、コンビニで何かに巻き込まれてます。行ってきます」
巌先輩が無言で頷いた。「両親は預かる」
「お願いします」
それだけ言って、走り出した。
学校の近くのコンビニまで、全力で走った。毎日石段を上り続けてきた成果が、こんな形で役に立つとは思わなかった。
店の前まで来ると、中が騒がしかった。
ガラス越しに見えた。
若い男が三人、棚から商品を抱えるだけ抱えて、レジに向かおうとしていた。
店員が震えながら何かを訴えていたが、聞いていなかった。
他の客が商品に手を伸ばそうとすると、威嚇するように怒鳴っていた。
柊斗が、棚の陰で固まっていた。
ドアを開けた。
「何だお前」
三人のうちの一人が振り向いた。
予見が働いた。
拳が来る軌道が、コンマ何秒か先に見えた。
避けた。
威圧を使った。
動きが、一瞬止まった。
その隙に、腕を取って地面に押さえつけた。
残り二人が慌てて殴りかかってきた。
予見で全部見えていた。
最小限の動きで躱して、それぞれ取り押さえた。
三人とも、床に転がった。
店員がぽかんとしていた。
「すみません、警察にはまだ連絡できない状況だと思うので、このまま置いておきます」
レジカウンターに財布から金を出して置いた。
柊斗が手にしていた飲み物とパンの代金より、明らかに多めだった。
「これで足ります」
店員が震えながら頷いた。
柊斗を連れて店を出た。
「お前、大丈夫か」
「お、おう」柊斗がまだ少し呆然としていた。
歩きながら聞いた。
「さっきの、脳に直接話しかけてきたのは、なんなんだ?」
柊斗が自分の頭を押さえた。
「わからない。さっき急に、お前に向けて喋ったら、本当に届いた気がして」
「届いてた。聞こえた」
「マジか」
「お前、何か変わったことなかったか。最近」
柊斗が考え込んだ。
「特にない、と思う……いや、今朝、目が覚めたとき、頭の中に変な感覚があった気はする」
「能力に目覚めたのかもな」
「は?」
「説明は後だ。とりあえず学校に戻ろう」
柊斗がまだ困惑した顔のまま、頷いた。
学校に向かって歩いていると、校門の方から大きなエンジン音が聞こえた。
振り返ると、大型のトラックが校庭に堂々と乗り入れてきていた。
スーパーの配送トラックだった。
運転席から降りてきたのは、宵待先輩だった。
集まっていた住民たちが、ぽかんとした顔でトラックを見上げていた。
「先輩、それ」
「緊急避難だ」
宵待先輩が荷台のシャッターを開けた。
食料品が、山のように積まれていた。
「長丁場になりそうだからな。きちんと管理しないと、すぐ混沌とする」
誰も、何も言えなかった。
ステータスを確認した。
【ステータス】
体力 148(±0)
筋力 122(±0)
敏捷 133(±0)
耐久 127(±0)
知力 104(±0)
知識 99(±0)
集中力 103(±0)
精神 127(±0)
器用 89(±0)
魅力 100(±0)
【スキル】
眼力 Lv.3
メモ Lv.2
自然回復
並列思考
瞬歩
浄化耐性
予見
眼力解析
威圧
柊斗、能力に覚醒した可能性。
宵待先輩、相変わらず規格外。
世界は、まだ落ち着いていない。
(第29話へつづく)




