第14話「【成長加速】スキルを2つ手に入れたら、世界が変わり始めた件」
神社の境内で、視界の端を見つめていた。
【システム通知】体力が100を超えました
スキルを選択してください
3つの選択肢が浮いていた。
①緊急回復
体力限界時に一気に回復する。ただし、発動後3日間は使用不可。
②頑強
一定時間、打撃や衝撃に対して強くなる。一時発動。
③自然回復
体力の回復速度が常人より早くなる。常時発動。
しばらく、3つを見比べた。
緊急回復は強い。限界の時に一気に回復できる。でも、3日間使えなくなる。使っちゃうと、いざという時に使えない。RPGのラストエリクサーみたいになっても困る。
頑強は魅力的だ。こないだの屋上のことを考えると、あれがあれば違ったかもしれない。でも、あぁならないように動けるようにすること、それこそが戦略的だ。一時発動では日常の修行には活かせない。
自然回復。常時発動。回復速度が早くなる。どれくらい早くなるのかは、まだわからない。でも、毎日の積み上げに確実に活きる。
「これだ」
【スキル獲得】自然回復
体力の回復速度が常人より早くなる。常時発動。
変化は、じわじわと感じた。
石段で追い込んだ後の重さが、いつもより早く抜けていく感じがした。どれくらい早いかはまだわからない。でも、確かに違う。
試した。
石段を10往復して、近くの木陰で休んだ。居心地のいい場所だった。持ってきた本を開いた。読みながら、体の感覚を確かめた。
2時間後、また動けた。
もう1セット、石段を10往復した。疲れは残っていたが、動けた。
「よし積み重なるな、これ」
翌日から、修行のサイクルが変わった。
石段を10往復して、木陰で本を読みながら回復を待つ。また10往復する。
ステータスが、毎日動くようになった。体力、敏捷、耐久が日に日に上がっていく。問題集も以前より長く集中できるようになった。知力、知識、集中力も少しずつ動いた。
数日後の放課後、宵待先輩からメッセージが来た。
「部室に来い」
第三棟の一番奥、民俗学研究部。
ドアが半開きだった。
中を覗いて、少し固まった。
棚に、ぎっしりと本が詰まっていた。古い土器、お札、動物の骨、狐の面、水晶玉、年代物の地図。オカルトまみれの空間だった。
「入れ」
宵待先輩が、奥の椅子に座っていた。常盤茜が本を抱えて立っていた。巌が部屋の隅にいた。
常盤が俺を見た。「あら、珍しい。先輩に呼ばれたんですか?」
「はい」
「何のようですか、先輩」
「式神だ」
「陰陽道ですか」
「陰陽道もうちの研究対象だ」
宵待先輩が棚から古い巻物を取り出した。
「陰陽師が式神を使う時、依り代が必要だ。紙に霊力を込めて、鬼神や霊的な存在を宿らせる。宿らせた存在は、術者の意志に従って動く」
「監視とか、偵察とかに使うやつですよね」
「そうだ。安倍晴明は身の回りの雑事まで式神にやらせていたという話もある」
棚の呪符や護符を眺めながら、頭の中で何かが引っかかった。
紙に力を込めて、宿らせる。意志に従って動く。
「……なるほど」
思わず声が出た。
「何か思いついたか」宵待先輩が飄々と言った。
「いや、なんでもないです」
先輩は何も言わなかった。でも、少し笑った気がした。
家に帰って、すぐ試した。
メモを出して、目を書いた。
それを机の正面側に貼った。
眼力を使いながら、そのメモに意識を向けた。
何も起きなかった。
もう少し集中した。眼力を絞る感じで、メモの目に意識を流し込むようにした。
視界がぼやけた。
「あ」
ぼやけた先に、部屋の景色が見えた気がした。でも、すぐ消えた。
もう一度。眼力とメモの感覚を同時に保ちながら、意識を向け続けた。
見えた!
机の正面から、自分の顔が見えた。メモの位置から、こちらを見ている感覚だった。
窓を開けて、外を見た。ちょうどいい電線にカラスが止まっていた。
さっき書いたメモをそのままカラスの顔に向けて貼った。カラスには見えないメモだから、嫌がらずにいてくれた。
カラスが飛び立つ。意識を向けた。
視界が揺れた。空が見えた。下に街が見えた。カラスの目の位置から、世界が広がっていた。
「見える」
でも、カラスは自由に飛んでいく。意識を向け続けるのも大変だった。
カラスが住宅街の上を旋回した。商店街を抜けて、ビル街の上を飛んだ。
そのとき、カラスの視界の端に何かが見えた。
【クエスト発生】
ビルとビルの隙間、裏側の空間。地上からは入りにくい場所だった。
「あそこか」
カラスの視界が揺れて、消えた。カラスが遠くに行きすぎた。
地図アプリを開いて、大体の位置を確認した。自転車で行ける距離だった。
空から探せる。自分が行けない場所でも、カラスが飛んでいける場所なら探索できる。探索できるエリアが、一気に広がった。
「これ、すごいな」
【実績解除】初めての式神的運用
集中力 +3/知識 +3/精神 +4
トータル10、一気に上がった。
精神が101になっていた。
そのとき、視界の端が光った。
【システム通知】精神が100を超えました
スキルを選択してください
「また来た!」
思わず声が出た。嬉しかった。体力に続いて、精神まで。
3つの選択肢が浮いていた。
①並列思考
複数のことを同時に処理できる。常時発動。
②精神耐性
精神攻撃、洗脳、プレッシャーに強くなる。常時発動。
③オーバークロック
思考速度が一時的に爆速になる。ただし使用後に反動がある。
しばらく、3つを見比べた。
精神耐性は堅実だ。でも、受け身な感じがする。今の段階では使う場面が思い浮かばない。
オーバークロックは強い。でも、反動がある。戦闘中に思考が止まったら終わりだ。
並列思考。常時発動。複数のことを同時に処理できる。
カラスに視点を貼り付けて探索しながら、勉強ができる。戦闘中に状況判断しながら眼力も使える。やれることが、単純に増える。
「これだ」
【スキル獲得】並列思考
複数のことを同時に処理できる。常時発動。
変化は、すぐに感じた。
今まで、何かに集中すると他のことが疎かになっていた。それが、同時に動いている。
ステータスを確認した。
【ステータス】
体力 108/筋力 78/敏捷 93/耐久 84
知力 86/知識 80/集中力 83/精神 101
器用 62/魅力 74
【スキル】
眼力 Lv.2
メモ Lv.1
自然回復
並列思考
体力と精神、両方が100を超えていた。
スキルが4つになっていた。
ステータスを眺めながら、問題集の続きを解いた。カラスで見つけたクエストの場所のことも考えていた。両方、同時に。
並列思考は、すでに動いていた。
(第15話へつづく)




