第二話 登校初日、隣は暴走少女
「世界を教えるなんてまた壮大な……というか、僕、高校1年生の途中まで学校普通に通ってたからね?」
「あ、そうなの?」
沙夜は拍子抜けしたような様子だ。
完全に、外界知らずの珍獣を見る目だ。とても失礼な奴だと誠は思った
「じゃあ学校の場所は知ってるね!」
「……ばかにしてるの?」
「そういうわけじゃないけど―」
沙夜は視線を泳がせて、少し頬をかいた。
「…なんか、もっと全部初めてって感じかと思ってた」
「だったら僕は通信制の高校に通ってたよ」
その瞬間、沙夜は「なるほど!」と言わんばかりに満面の笑み。
今の説明でそんなに納得するのか?
この子、もしかしてちょっと……いや、これ以上は言うまい。
「まぁ、誠君が来てくれるなら何でもいいか!」
「いや、明日にでもすぐに……ってわけではないけどな」
「そうなの?なんで?」
理由がわかっていないようすの彼女に誠は呆れ気味に返す。
「何でって…さすがに緊張するんだよ、学校に連絡して教材とか用意してもらわなきゃいけないし二日は時間をくれ」
「教材のことなら心配ないよ!私が見せてあげる!席となりだし!」
「……は?」
思わず、口がぽかんと開いてしまった。
ってことは待って?来てほしくないって思ってたのに、学校に通ったら四六時中こいつと一緒じゃない?
「やっぱ行くのやめようかな」
「なんでよ!こんなにかわいい私と隣でうれしいでしょ!」
友達であるのが構わないがこんなのがずっと隣にいたら騒がしくてしょうがないと感じていた。
学校でもこのテンションだったらどうしようと不安になるのも無理のない感情だろう・
「別にうれしくないよ、うるさいし」
「いいじゃないかー私が学校で面倒を見やすいし!」
面倒を見られる立場にいるということを否定できないのがとても悔しく思う
「……わかったよいくからその代わりこの二日間は家に来ないでくれ」
「約束だよ?来なかったら次から部屋入ってそのままお泊りしてやるんだから」
「ほんとに勘弁してくれ」
―…―…―…―…―…―…―…―…―
何事もなく二日が過ぎた。
この期間に僕がしたのは髪を切りに行ったくらいか。
僕は今日、学校に行く。
とても緊張しているが、それ以上に母が緊張しているのでどこか笑えてくる。
久しぶりに制服へと袖を通す。
引きこもっていた間はずっとパジャマを着ていたのでとても重苦しく感じてしまう。
そして、いつものように部屋で朝ご飯を食べていると。
ピンポーン♪
チャイムが鳴った。
朝から配達ご苦労様です、などと思っていたのだが、下から二人の女性が話している声が聞こえてきた。
まさか、と誠が思っていると。
「まーこーとーくーん! 学校行くよ!」
ある意味期待を裏切らない女の子、沙夜、登場。
「……朝からなにしてるんだ?」
わかりきっている答えを、僕は二階から顔をのぞかせながら聞く。
自分の勘違いであると信じて。
だが、そんな思いははかなく散ることになった
「お、髪を切ると意外とイケメン…じゃなくて、一緒に学校行こうと思って、呼びに来たんだよ?」
「何で一緒に行かなくちゃいけないんだ?」
そう聞いた瞬間、僕に元へと沙夜が階段を上って近づいてくる。
何をしてくるかわからなかったので、誠は警戒していたのだが、いきなり腕をガシッとつかまれた。
疑問符を浮かべていると目の前の沙夜がにっこりと笑った。
「行くよ?」
有無を言わさない表情だった。が、今僕が鞄も何も持っていないのが見えていないのか?
やっぱりこの子って……
「馬鹿なのか?」
「は?」
思わず心の声が出てしまった。これではまるで学校に行くことを馬鹿としているようではないか。
案の定そう受け取られてしまったようで腕をつかんでいる手に力が入っている。それもかなりの。
「ねえ誠君?今日は行くって約束したよね?部屋でお泊りするよ?」
その脅し文句はとっても怖いものだった。なので早いこと誤解を解くことにしよう。
「学校には行くさ、けど、鞄すら持ってないのに引っ張られてもいけないよ。それに朝ごはんもまだ途中だし」
「あ、なーーんだそういうことなら待ってあげよう!沙夜さんは寛大なのだ」
勝手に押し掛けたくせに何を言っているんだ、と喉まで出かかっていたが何とか抑えた。
そんな沙夜を放っておいて、朝食を食べに部屋へと戻る。
なぜか後ろをついてきたが部屋には入れなかった。
朝食を食べ終え鞄を持ち部屋を出ると、隣の壁にもたれかかりながら座っている沙夜がいた。
目が合うと屈託のない笑顔をうかべていた。
「やっと出てきた!いくぞ!世界に!」
「だからスケールがでかすぎるんだよ……ただの登校だぞ?」
「細かいことは気にしない!」
元気いっぱいに手を振りながら、沙夜は玄関を飛び出した。
そして――
「誠くん、復活ー!!」
近所中に響き渡る声。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
慌てて沙夜の口を手で塞いだ。
人生で一番大きい声を出した気がしていた。でも近所中に響き渡ったのは沙夜の声だけだ。
だが、遅かった。数軒先の奥さんがカーテンをそっと開けている。
沙夜のせいで初日から社会的に死ぬかもしれない。
というかもう死んだ。
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