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第25話 風の勇者VS熊の族長


 「風の精霊よ われの身体に宿り鉄壁な防御を。

 ウインド・デメンション・シールド」

 風の勇者エミリアは風の精霊召喚をおこない体を包み込む。 

 風のシールドをまとう。

 体は緑色に発光し宙を浮いている。


 「火、水、風、土の四精霊たちよ。

 われに大いなる力をエレメンタル・エターナルフォース」

 さらに四属性の精霊を呼びだし各属性の力を得る。

 色とりどりの光りを放った精霊たちがエミリアの元に集まり始める。

 エミリアの体に飛び込むように入っていく。


 「ロスト・エンド」

 熊族の族長のアーガッシュは特殊スキルを使う。

 地面を大きく踏み込み衝撃破を放った。

 踏み鳴らした衝撃破を食らい、エミリアの体に入っていく精霊は弾けとんだ。


 「くうっ」

 「ふん、おまえ精霊たちから信用されていねえんだな。

 あの程度の威圧で逃げるなんざお笑い話よ。

 風属性以外の精霊は逃げてしまったではないか。

 それで勇者とは片腹痛いわ」


 「何ですって」

 「落ち着いてくださいエミリア、相手の思うつぼですよ」

 「そうね、そうだったわ」

 「コンボ、こちらへ来い」

 聖神官のアバストは荷物持ちである虎の獣人の子供を引き寄せ右手でつかみ前に出させる。子供を盾がわりにしたのだ。


 「アバストなんて事をする、聖神官のすることではないぞ」

 盾使いの戦士バベルがアバストに言い放った。

 

 「背に腹は代えられませんと言う事ですよ。

 われわれは何としても生きて帰りませんといけませんからね。

 魔神獣ガイデアが死んだと言う事を人間界に知らせなくてはいけない。

 私たちにはおおいなる使命ができましたから」

 「そ それはそうだが」

 「どれほど重要な情報かはあなたでもわかるでしょう。

 どんな汚い手を使っても生き残らなくてはならないのですよ」

 「……」

 「人間界の命運が左右される一大事なのですからね」

 「し、しかしだな」

 「現実にこのような無法な獣人の振る舞いが起こっているのですよ。

 われわれは何としても知らせる義務があるのです」

 「……」

 「そうね、そのとおりだわ」

 そう言ってエミリアの幼馴染であるパレットはもう一人の荷物持ちの虎の獣人の子供を捕まえ盾にする。

 「パレット、あなたで」

 「これは致し方ない事なのよ、エミリア、わかって」

 「……」

 「私たちが魔神獣ガイデアの事をみんなに知らせないとこのミスティリア大陸の人間は死んじゃうんだから」

 「そ、それは」

 「ワハハッハハッ、なにを奇麗ごとを言ってやがる。

 これは戦争だぜ、ようは自分だけは助かりたいって言う事だろうが」

 「……」

 「まさか俺も勇者パーティー御一行様がここまで落ちているとは思っても見なかったよ。

 これで俺も迷うことがなくおまえらを殺せるぜ、おい、おまえら手を出すな俺が一人でやる。下がれ」

 取り囲んでいた虎の獣人と護衛でついていた熊の獣人は下がり始める。


 「ハァー、〇〇〇〇〇〇〇〇」

 アーガッシュは何かの呪文を唱えた。体から威圧を放つ。


 先ほどアーガッシュは呪文を唱えたように思えたが人間ではわからない言葉で部下に『隙を見つけて助けろ』と言ったのだ。

 熊の獣人の部下たちは一端下がる。


 アーガッシュの言葉を聞いて警戒しながら隙を伺う。

 アーガッシュは2人の獣人を助けるために本来の力をセーブして勇者パーティーを迎え撃つ。


 「エミリア、鬼神の怒門のアイテムを使います。

 どういうアイテムかはおわかりですよね」

 「ええ」

 「このアイテムはこの場に放出された力を敵味方ともに関係なく食らいます。

 力がたまるまでは時間がかかるでしょう。

 なるべく多くのダメージを与えてください」

 「わかっているわ、でも別に倒しても良いんでしょ」

 「そうですね、できたらお願いしたいです」

 「フフフッ、俺にダメージを与えるだとそれは無理な話だな。

 おまえたちのダメージでそのアイテムは使えるのではないのか?

 「なんですって」

 「フフッ、抵抗はするなよ、そうすれば楽に逝かしてやるぜ」

 「……」

 「パレット ファイヤー・ウォールを全方向に唱えてください」

 「わかったわ、アバスト」

 「火の精霊イフリートよ、わが道に行く敵を妨げろ。

 ファイヤー・ウォール」

 パレットが唱えたファイヤー・ウォールの魔法の効果でアーガシュと勇者パーティのまわりに3メートルはこえる炎の壁がぐるりと取り囲む。


 まわりに下がった獣人たちの目の前で火柱があがり炎のカーテンが造り出させた。

 

 「おいおい聞いていなかったのかよ、俺一人で戦うと言ったじゃねえか」

 「私はそんな話を真に受けるほどバカではないのですよ」

 「そうかい、どの道おまえらの命運は変わらないのだがな」

 盾使いのバベルが前に出る。


 大型の盾を地面に挿しスキルを使う。

 「シールド・インパクト」

 盾から眩ゆい光を放ち衝撃破がアーガッシュを襲う。


 「ムッ」

 後ろに続いてエミリアと大剣使いのリグルが切りかかった。

 

 「でやー」

 「たー」

 「ガキン、キン、キン、キン、キン」

 アーガッシュはリグルの大剣を腕で受け振りさばく。

 

 エミリアの連続攻撃はヒットするが体に覆っている毛に防がれダメージを与えた様子がない。

 それより気になるのは切りつけた時に聞こえた金属音だ。

 アーガッシュの体は鋼鉄並みに硬いと予測される。


 剣を受けた後にアーガッシュは反撃で爪を鋭く出し引っ掻いた。


 「シュン、シュン、シュン」

 アーガッシュの爪は空を切る。


 「おっと、危ねえな」

 すんでのところでリグルはかわす。


 「しかし、なんて硬さなんだ。

 こっちはグレイトソードを振りまわしているのに傷一つ、付けられないのかよ。

 それになんだ、切りつけた感触は、まるでミスリルの盾で受けられたような感じだったぜ」

 「本当ね、通常攻撃ではかすり傷も負わせられないわ。

 でもあの巨体ではスピードはなさそうね」

 「ああ、そうだな、俺でも難なくかわせたからな」

 「属性魔法剣を使いましょう。

 今の打ち込みであの熊の獣人が土と闇属性を持っているとわかったわ。

 水属性がおもに弱点だと推測できる。

 パレット水属性の魔法を体と剣に付与して」

 「わかったわ、水の精霊よ汝の言いし仲間に加護を与えよ。

 ウォーター・ライズ。

 氷の精霊よ、われの友の武器に宿り敵を粉砕せよ。

 アイス・ウェポン」

 魔法使いのパレットは仲間全員に水の加護を宿す。武器に対しては氷属性の攻撃を付与する魔法を唱えた。


 パーティー全員に青色の霧のようなオーラがまとうのが見える。


 「おめえはバカか、確かに俺は土属性と闇属性系に属する。

 水属性は弱点だが、おまえは風属性が得意なのだろう。

 風属性を得意としているおまえが、風属性を封じてどうするんだ。

 本当に愚かな勇者だな」

 「それはどうかしらね。

 アイシスクル・テンペスト」

 エミリアは氷と風の混合魔法を放った。


 アーガッシュに氷の破片と雷をまとった風の暴風が襲う。


 「シュビーン、シューン、シュンーン、バリ、バリ、バリ、バリ」

 「ぐう、なるほどな、混合魔法とはやるじゃねえか」

 アーガッシュはまともに氷雷の暴風をくらいダメージを負う。


 「追撃だ、シールド・バッシュ」

 バベルがスキルを使い盾から冷気を含んだ衝撃破を放った。

 

 「バシュン」

 アーガッシュはまともに冷気を含んだ衝撃破を食らってしまう。

 

 体に覆われていた毛がスキルによって凍りついてしまう。

 

 「ブルブルブル、パリン」

 「冷気のまとった衝撃波とはな恐れいったぜ、しかしなんだ俺には効かんけどな」

 体を震わせまとった氷をはじき飛ばしてしまう。


 「なるほどな、それなりに戦い慣れはしているって事か、でもな」

 アーガッシュは無造作に盾使いのバベルのもとに大きな足音をたてながら近づいた。


 「ドスン、ドスン、ドスン」

 バベルは自分の身長はある大盾を身構える。


 アーガッシュは右手を大きく振りかぶりバベルを殴りつけた。


 「いかんバベル盾で受けるな」

 「!」

 「正解だぜ、スカーレット・ニードル」

 アーガッシュが殴りつけた拳から赤い長い5本の鋭い爪が伸びて大盾を貫通する。

 

 「ドスン」

 大盾を貫通しバベルの体に突き刺さる。

 バベルは強固な鎧を装着していたがいとも簡単に貫いてしまった。

 

 「バベル!」

 「ぐうう」

 「ほほう 硬いな、俺の爪を受けて致命傷にならないとわな」

 アーガッシュは貫通した盾ともどもバベルの体を持ち上げ自分自身に近づけた。


 「ぐわあー」

 持ち上げられたバベルは爪が体に食い込み痛みのため絶叫をあげる。

 

 「そう大きな声を出さないでくれよ、それじゃこういうのはどうだ。

 ハウリング・ボイス」

 アーガッシュは貫いた爪でバベルを引き寄せ自身に近づけた。

 口を大きく開き音の衝撃破を放った。 


 「キュイーン」

 辺り一面に大きな音が鳴り響く。


 まともに音の衝撃破を食らったバベルは全身を痙攣させて目や鼻の穴から多量の血を出し、口から泡を吹いてしまっている。

 下半身からも尿を漏らし失神してしまった。


 「ふん まずは一匹か」

 「ザシュン」

 アーガッシュは爪で大盾ごと持ち上げていたバベルを地面にたたきつけるように切り裂いた。


 「ドガン、ゴシュン、グチャリ」

 地に伏して瀕死ひんしの状態のバベルの頭を足で踏みつぶした。


 「バベル」

 パーティの仲間一人が死んだ事により勇者たちは騒然としている。


 「よくもバベルを」

 エミリアは仲間の死に気が動転し不用意にアーガッシュを切りつける。

 

 「シュン、シュン、シューン、シュン、シュン、シュン」

 「カン、カン、カキーン、カン、カン、カン」

 剣技は速くアーガッシュを捉えるが致命的なダメージを与えられない。

 

 「これで終わりだぜ、お嬢ちゃん」

 「ツイン・エアー・スラッシュ」

 アーガッシュは両手に爪を出し無造作に空を切る斬撃を放った。

 

 エミリアは直接の攻撃は簡単に避けられたが真空のかまいたちに巻き込まれ切り刻まれた。

 

 「キャー」

 「どさり」

 宙を浮いていたエミリアは切り刻まれ地に伏した。


 「とどめだぜ、お嬢ちゃん、スカーレット・ニードル」

 切り刻まれ地に伏したエミリアに鋭い赤い5本の爪が襲う。

 

 「ぽふん」

 アーガッシュの顔面に何かが当たる。


 「! なんだ これは臭え、ごほ、ごほ、ごほ」

 レンジャーのリンダがいつの間にかアーガッシュの隣にいた。

 

 アーガッシュの顔に匂い袋を投げつけたのである。

 アーガッシュはその袋の中に入っている粉を吸い込んで苦しそうに咳き込んでいる。


 「ごほ、ごほ、ごほ、てめえ、何しやがった」

 「どう、私の特性の毒入り匂い袋は、魔獣相手にはとてもよく効く匂い袋なのよね。

 私のお手製の特別な匂い袋だから獣人にもよーく効くと思うわ。

 毒キノコを含めた成分が入っているから効果は抜群でしょう。

 確実に当たるように気配を消し潜伏を使って近づいていたのよね」

 「くそう」

 「匂い袋の成分は当分消えないわ、アバスト エミリアの回復を、リグルとパレットは追い打ちをかけ時間を稼いで、エミリアが回復したら一気にたたむわよ」

 「わかりました」

 「了解したわ」

 2人は虎の子供の獣人にまひの魔法をかけ動きを封じる。子供2人はその場で地に伏している。


 「エミリア、今回復しますよ、ライトヒーリング」

 切り刻まれ倒れていたエミリアに回復魔法をかける。

 

 「でやー」

 「ザシュン」

 「チェスト」

 「ザキン」

 「くそう、ごほ、ごほ、ごほ」

 「リグル、離れて」

 「ああ、わかった」

 「アイス・バーン」

 「アイス・ジャベリン」

 リグルの氷属性大剣攻撃とパレットの氷属性魔法攻撃がヒットしアーガッシュはダメージを受ける。

 

 リンダが投げつけた匂い袋の毒粉のダメージがきつくアーガッシュは動きが散漫になる。

 

 「ううーん、アバスト私は」

 「どうやら回復は間にあったようですね」

 「?」

 「あの熊の獣人は」

 「リンダの匂い袋の奇襲が成功してリグルとパレットで追い詰めているところです。

 鬼神の怒門のアイテムはもう少しで力がたまり発動ができます。

 あなたも追撃をおこなってください」

 「わかったわ」

 「今回は逃げる事が優先です。

 鬼神の怒門を使う事ができればここから移動できます。

 くれぐれも無理をなさいませんように、深追いは厳禁ですよ」

 「了解したわ」

 「私はアイテムの発動の準備をします。お願いしますね」

 エミリアはアーガッシュの元へ向かった。

 

 もう少し、もう少しで力がたまります。くれぐれも無理はしないようにエミリア。


 「2人ともどいて、秘剣テンペスト・ブレード」

 「ザキン、ザキン、ザキン、ザキン、ザキン」

 氷属性を付与した連続攻撃がアーガッシュを襲う。


 「ぐわー」

 アーガッシュはたまらず膝をついてしまう。


 「くそう、クシュン、クシュン」

 アーガッシュは切り刻まれダメージを受けてしまう。剣のダメージよりも匂い袋の方が深刻なダメージを受けているみたいだ。


 「ねえ熊さん、もう一ついかがかしら」

 そう言ってリンダは潜伏を解き顔に新しい匂い袋を投げつけた。


 「ぽふん」

 匂い袋が顔に当りアーガッシュはもう一度食らってしまう。


 「てめえ、ごほん、ごほん、ごほん」

 「リンダ、いけるはこれで倒せるかもしれない。

 奥義を使うわ、みんな時間を稼いで」

 「わかったわ」

 「オッケー]

 「了解した」

 3人はそれぞれの持っているスキル攻撃を繰り出す。


 「いけない、エミリア深追いしすぎだ。

 エミリア、下がってください。

 鬼神の怒門のアイテムの力がたまりました。

 使用しますよ、下がって、下がってください。

 あの熊の獣人は本気ではないのですよ。

 下がって、下がってください、エミリア」

 とどめをさせると感じたエミリアはアバストの声を無視して奥義を放つ。

 

 「精霊王ティターニアよ、われに力を与えよ。

 エレメンタル・ラース。

 極限奥義ミラー・ミラージュ・スプラッシュ・ブレード」


 エミリアが奥義を放つ瞬間に、アーガッシュの部下の熊の獣人が地中より現われる。

 外から穴を掘り進め地中で子供の獣人を助ける機会を伺っていたのだ。


 5人の熊の獣人が地中から現れた。

 倒れている2人の子供の虎の獣人を確保し後ろへさがる。


 「しまった、奴隷の獣人を確保されたか」

 アバストは声を抗える。


 「族長、2人の獣人の子供を確保しました」

 「おお、そうか遅かったな、ごほん、ごほん。

 それじゃ演技は終わりだな、ごほん、ごほん。

 はー、くしゅん、クシュン」

 「エレメンタル・ラース

 極限奥義ミラー・ミラージュ・スプラッシュ・ブレイド」

 エミリアの放った奥義がアーガッシュに炸裂さくれつした

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