第26話 風の勇者散る
「エレメンタル・ラース。
極限奥義ミラー・ミラージュ・スプラッシュ・ブレイド」
妖精王ティターニアを召喚する。妖精王ティターニアは四属性を含んだ攻撃魔法を唱える。
妖精王ティターニアが放った虹色の竜巻がアーガッシュを襲った。
アーガッシュを襲う虹色の竜巻の外から、エミリアは極限奥義をくり出す。
極限奥義発動で、エミリアは自身の分身体2体を出現させ、具現化させた。
具現化した分身体2体が、5メートルはある光の魔法剣を創り出す。
分身体をあわせた3人で、虹色の竜巻の上から連続攻撃を繰りだし切りつけた。
「シュン、シュン、シュン、シュバン、シュン、シュン、シュン、シュバン、シュン、シュン、シュバン、シュン、シュン」
虹色の竜巻が消えたと同時に、分身体も消えさった。
「やったわ、私の勝利よ、あの技を食らって立っている者など今まで誰もいませんでしたからね」
極限奥義を食らったアーガッシュの無残な姿が現れる思えたが、耐えきったアーガッシュの姿が目の前に現れた。
「そ、そんな耐えきるなんて」
「クシュン、痛てえなちきしょうが、まずは状態異常の回復が先か、キュア・ライズ」
アーガッシュは状態異常の回復の魔法を唱えた。
「ふう、これで楽になったな、それじゃ今度は傷の回復だな、ヒール・レイン」
上空から降り注ぐ光を受け、アーガッシュの傷が回復している様子が伺える。
「ふう、これで全開か」
「そ、そんな、光属性の回復魔法が使えるなんてありえないわ。あの時、光属性を持っているなんて感じなかった」
「わるいなお嬢ちゃん、敵に対して偽装するのは当り前のことだろう。
俺はウォリアーモンクなんでな、光属性も使える。
回復なんざお手のものだよ」
「そんなのあり得ないわ、獣人が上位職を習得しているなんて」
「おっと、わるいな間違えた。ウォリアーモンクでも俺は邪のウォリアーモンクだったか、だからお嬢ちゃんが言ったように闇属性も使えるぜ」
「邪のウォリアーモンクですって?」
「そうさだからこういう闇の奥義も使えるんだよ。
クリムゾン・ボール」
アーガッシュは両手を前に掲げ、赤黒い球を創り出した。
赤黒い球は徐々に大きくなり1メートルはある巨大な球体になった。
赤黒い巨大な魔法球は混ざるよに畝っている。
こういうのはどうだい。
「バーン・ブレスト・ナックル、オラ、オラ、オラ、オラ」
アーガッシュは赤黒い球体を殴りつけた。
殴りつけた赤黒い球体から赤黒い炎の球が分離し、エミリアたちを襲う。
「ドン、ドン、ドン、ドン」
火炎球のように敵対する相手に向かっていった。
「駄目です、それを受けてはいけない」
アバストは言った。
エミリアとリンダは難なく避わす。リグルは剣で受けとめる。パレットは右肩に食らってしまった。
「なんだこの赤黒い炎は、剣が腐食して錆びていく」
「ブン、ブン、ブン」
「なぜだ、赤黒い炎がまったく消えない」
「キャアー、痛い、痛い、痛い」
「パレットどうしたの?」
赤黒い炎が右肩付近にあたって、それが徐々に全身に広がっていくのが見える。
「今、助けるわ」
「駄目ですエミリア、その炎に触れてはいけない」
「! アバスト何を言っているの? 早く助けないとパレットが死んでしまうわ」
「それはおそらく冥界の炎です。触れたら燃えうつり、あなたも腐食してしまいますよ」
「! アバスト、あなただったらこの炎を解除できるでしょう。助けてあげて」
「申し訳ない、私には無理です。
解除できる魔法を習得していません。
ただ効果を下げる魔法はありますがそれだと長く苦しむだけです」
「そ、そんな」
「ギャー、痛い、痛い、痛い」
冥界の炎はパレットの全身を覆い腐食していく。
全身にまわった炎は消えず、あまりの痛さにパレットは転げまわっている。
「痛い、痛い、痛い」
服は焼け、皮膚は爛れて、全身が痛々しい様相になってきた。
「! 俺の剣はボロボロになったけど赤黒い炎が消えたぞ、どういうことだ」
「なあに、簡単な話だよ、剣にかけてあった魔力がなくなったからだな、冥界の炎は魔力を食らいながら腐食していく、あのお嬢ちゃんは魔法使いなんだろう。
自身の持っている魔力のせいで死んでも消えないのではないかな」
「そんな、アバスト何とかならないの」
「エミリア、私の力不足で申し訳ない」
「……」
「なんだおまえ、神官の癖に冥界の炎も消せないのか?
情けないな、仕方ない俺が消してやろう。
セイクリッド・ホーリー・キュア・ライズ」
そう言ってパレットにたいして魔法を唱えた。
パレットに魔法がかかり冥界の炎が消える。しかしパレットは無残な状態になっておりことがきれていた。
「パレット、パレットが死んじゃった。
ああああああああ」
エミリアの悲痛な叫びが聞こえる。
「おいおい、使えない神官のかわりに俺がせっかく炎を消してやったのだお礼は言わないのかい。
人間は礼儀がなっていないな」
「よくも、よくもそんな口を、殺してやる、殺してやるわ」
「落ち着いてください、エミリア」
「これがどうして落ちついていられるのよ、幼馴染のパレットが死んじゃったのよ、許せないわ」
「何を言ってやがる。さらった獣人を奴隷にしてこき使っていたんだろう。
それに自分たちの身のかわいさに子供を盾にするとは、今まで虐げられてきた者たちの当然の報いだ。
受けて当然だろうがそうは思わないのかい愚かな勇者さんよ」
アーガッシュは辛らつな言葉を言いはなつ。
「遊びは終わりだ、これで死ね。
クリムゾン・スパーク・ボール」
アーガッシュは先ほどと同じように手を合わせ赤黒い球体を創りだした。
赤黒い球体はさっきと違って中心部から電撃を放つように赤黒く光る。徐々に大きくなり直系2メートルはある巨大な球体に変わった。
「なんなんだ、あれは」
「それは、おまえが知る必要はない。
クリムゾン・バースト・シュート」
アーガッシュはその巨大な赤黒い球体をエミリア達にむかって蹴りあげた。
「アイテム使用、鬼神の怒門効果発動。
鬼神よ、異界の門よ開け、エミリア、リンダ、リグル、早くこちらへ」
アバストが使ったアイテム鬼神の怒門の効果が発揮する。
アバストの右手に持っていた鬼神の怒門は赤い炎を吹き出し、3メートルはある大きな鬼神面へと変化をとげた。
「ぐわあ」
変化する過程でアバストの右手は炎に焼かれ一瞬の間に消失した。
「くう、鬼神面よ私と私の仲間に転移を」
「心得た」
大きな鬼神面は口から吸いこむ黒い渦巻き状の空間を作り出す。鬼神面自体も黒い渦に飲み込まれ、転移できる黒い渦中の入り口だけ残った。
アバストが指定していた対象を吸い込んでいく。その対象は生きているもの、死んでいるもの関係がなく飲み込んでいった。
…… …… ……
「クリムゾン・バースト・シュート」
アーガッシュは巨大な赤黒い球体をエミリアたちにむかって蹴り上げた。
わざと遅れた感じで蹴りあげてた。
まわりで戦っている仲間たちに配慮した結果、遅れたのである。
本来は拳で殴って放つクリムゾン・バースト・アタックなのだが上空にいる敵に対して蹴りあげ撃ち当てるシュート仕様で放ったのだ。
命中率はイマイチだが目の前の敵を葬るのには前面に蹴りあげても十分と判断したのだ。
風の勇者エミリアは向かい来る巨大な赤黒い球体を剣で切り裂こうとする。
エミリアの迎え撃つ剣撃では切り裂けず、赤黒い球体はまったく衰えた様子がみえない。
逆に剣は砕け、エミリアに直撃した。
「キャー」
エミリアは直撃弾を受け吹き飛ばされる。
吹飛ばされたまま鬼神面が出した転移空間に吸いこまれる。
仲間はすでに転移空間に入りこの場所から姿を消していた。
生きている者、死んでいる者、指定対象を飲み込みが終わり、転移空間が閉じた。
「ドガン」
アーガッシュの放った赤黒い球体は、蹴りあげた勢いで空に舞い上がり花火のように散った。
「ちい、逃げられてしまったか、まあ想定範囲内だがな、虎の獣人の子供が助かっただけ良いだろう」
奴隷魔法の効力も範囲がある程度限られているからな、転移したやつらには奴隷魔法の効果は発動はできないだろう。
念の為に効果を妨害させる補助魔法をかけてもらえばいいな。
「族長、ご無事ですか」
「誰に言っている、俺がやられるわけがないだろうが」
「そうでしたね、しかしだいぶ手痛い傷を受けたのではないですかね」
「それは別に良いんだよ、俺はドMで気持ち良いんだからな」
「そ、そうでしたね」
「それよりも捕まっていた獣人の安否を確認しろ、必要ならば捉えられていた獣人たちを担いで国へ戻してやれ、早くいけ」
「了解しました」
しかしなんだこれで獣人界は人間たちに宣戦布告したと言う事か、いや以前からそうなっていたのは確かだ。
今まで以上にいばらの道を進むと言うことか?
それとも逆に魔神獣ガイデアを倒したモンスターにより均衡状態に陥るのかもしれない。
相互不信で一歩も動けなくなることもあるからな。
あのガイデアを倒したモンスターがこの大陸をうろついているのだろう。
国を滅ぼせるモンスターがどことなくうろついているのだとどの勢力も迂闊には動けない。
逆に敵対するやつらは手を出してほしいな、争えば滅ぼされるのが確実だ。
獣人界は大人しく見守っていると言う事で良いだろう。
なんせ俺たちの祖先が居た異界の奈落に続くと言う遺跡からやって来た危険なモンスターらしいからな。
想像しただけで恐ろしい限りだぜ。
わかっている良い点はガイデアのように大食ではないと言う事だ。
被害はそれなりに出ると思うが、話に寄ればこちらから手出ししなければ問題はないはず。
しかし、知恵があるモンスターか、それが怖いところだな。
俺より頭が回るようだったらどうしようかと悩んでしまう次第だ。
案外それがありそうな気がするので恐ろしいかぎりだぜ。
レオニード候に頼んで情報を収集するとしよう。
それまでは獣人界はあのモンスターの行くへを見守るだけだろうな。
勇者一行が鬼神の怒門を使った転移先で。
転移先をあらかじめアバストは指定してあった。
本来は何回か使用できるアイテムだったが、アーガッシュの攻撃を受けてしまい壊れてしまった。
転移できただけでも運が良かった。
指定先はこの大陸に来た時に港外のひとけのない場所に座標を設定していた。
「リンダ、リグルあなたたちは無事なようですね」
「ああ、しかしエミリアとパレットそれにバベルが死んでしまった。
まさか、風の勇者エミリアが負けるとは思いも寄らなかったな」
「そうですね」
「ねえ、3人は教会で復活出来ないの? 遺体はここにあるのでしょう」
「ここまで損傷がひどくてはいかに神の加護がありましても無理でしょうね。
バベルは頭をつぶされパレットは冥界の炎に焼かれている。
エミリアはあの赤黒い球体にぶつかり丸焦げになってしまっているのですから」
「確かにそうみたいね、原形をとどめていないわ、でも勇者だから特別な加護とかあるのではなくて」
「さすがにここまでひどいと、いかに神の加護をもっていても復活は無理でしょう」
「それはそうね」
「エミリアたちのことは諦めましょう。
それより早くここから立ち去らねばいけません。
リンダ私が出したこの布でエミリアの握っている剣の柄を取って、巻き取って戴けませんか」
「アバスト、その布であなたの右腕を巻いた方が良くなくて、焼け切られて痛々しい状態になっているわ」
「それは後にしましょう。
それよりもこの布で包んで剣の柄を取ってもらえませんか、エミリアには絶対に触れてはいけませんよ。
あの攻撃でエミリアは呪われていますから」
「この布は聖水がかけてあるのね」
「そうです。持った者が呪われてしまわないようにかけてあります。
特別な布なのでそれで掴むことは大丈夫だと思います」
「わかったわ、でも折れたエミリアの剣の柄なんて持っていってどうするつもり?」
「風の勇者エミリアが死んだと言う証拠ですね。
エミリアの使っていた武器、疾風のレイピアはレアな武器ですからどのような姿になってもわかる人にはわかるでしょう。
この剣を持ちかえり、本国に風の勇者が敗れ死んだ事を知らせるのです」
「そんな、私たちパーティーの恥ずべきことを知らせるのですか」
「そうですよ、勇者エミリアの死で、魔神獣ガイデアが死んだと言う信憑性がますでしょう。
それに獣人たちが反乱をおこした理由に信憑性が増すのですから」
「確かに魔神獣ガイデアが死んだと言う事は眉唾もんの話になるわね、誰も信じてくれなさそうだわ」
「それ故に全世界に関わる出来事なのですよ」
「確かにそうだけど、私たちは本国に処罰されないかしら」
「そこは私がうまくやるのでご安心を、さあ早くしてください。
血に飢えた魔獣がすぐそこまで来ています」
「わかったわ」
「君たちが生き残ってくれて良かったです。
こんな夜中に、3キロほど離れた港町に私の今の状態で行きつくことは到底無理な話ですからね」
「そうね、私たちが居るならばなんとかなるわ」
「それは心強いです。私たちは何としても光翼教会に知らせなくてはなりません」
「世界の危機ですものね協力するわ」
「アバスト、肩を貸すぜ俺に捕まれ、急いでここを離れよう」
「有難う御座います」
「それでは行きましょう」
アバストたちは、風の勇者の遺体をそのまま放置し、港へ向かった。
元、風の勇者一行パーティは無事に港へたどりつき、今までのつてを頼り本国へ戻る。
しかしそこでアバストたちは魔神獣ガイデアが死んだと言う事よりも驚愕の話を聞かされる。
ミスティリア大陸の異常に気付いて急遽本部の大聖堂に降臨した3人の女神、光輝神が絶叫をあげながら教会幹部の目の前で光の球になり消え去ったと言う話を聞かされたのだ。
それから光翼神との交信が呼びかけても一度もなく、つながることがない状態が今でも続いていると言う。
光翼教会の信者達はそのうわさを耳に入れ、狼狽えている様を目の当たりにしている様子だ。
ザンブグルム魔導王国によって召喚された一匹の魔物の攻撃により光翼神のほとんどが消滅させられた事など誰も知り得ることはない。
悪魔に放った光分散攻撃が光翼神たちにも影響して連鎖爆発で消滅していた事など撃った本人もわっかていないのだから。
「うむ、ただ空が明るく光っているだけだよね。
まさか私が放った光分散攻撃とは関係があるはずがないだろう。
この異世界である天体現象だな。
……。
なんか見たことのないでかい星とかいくつも近くに見えるし、異世界だからこういう天体現象が起こるのだろう。
この世界では日常で普通に起こっていることだろうな、たぶん。
……。
私は見なかった事にしよう」
光翼神に頼りきっていた人間たちは未曽有の危機をこれから体験する事になる。
これもまた神の傘を引いて悪行をやっていた者たちが受ける酬い、自業自得と言って良いのだろう。




