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【補足説明】

 

 この連載を終えてしばらくしてから、個人的に知人からのご感想をお聞きする機会が何度かありまして。

 そこで気になったことが一つ……


「仏教では、一人が出家するとその徳で7代前までの先祖がみんな成仏(正確には往生)するとまで言われているのに、本人が地獄に落ちやすくなるというのはどういうことだ? それなら、そんなデメリトのある出家などせず在家信者でいた方が福徳があるということになる。」


 という疑問を持たれる方が、1人ならずおられたということです。


 これは本文で充分に説明できてなかったということですから、ここで補足説明をさせていただきたく存じました。


 また食事療法(ダイエット)に喩えてみましょう!

 わかりやすいよう、減量シェィプアップを例にします。さらに条件をわかりやすくするため、「外見的に痩せる」のではなく「体重を落とす」というたけの目的に話を搾りしましょう。


 この二つは相互に影響はしますけどもイコールではありません。

 たとえば筆者は、大学1年で武道系のクラブに入り3~4ヶ月で70kg→80kgに増量した時に、多くの知人から「ずいぶん痩せたなぁ」と驚かれました。食事量も増えましたが運動量が急激に増大したため、脂肪がぐんと落ちても筋肉が10kg以上増えたのでしょう。

 数年後。半年ほどロクに運動もせず食事量が減り80kg→72kgと痩せたら、みんなから「ずいぶん太ったな」と言われました。筋肉が弱体化して脂肪が増えたわけですね。

 この経験から、10kgかそこらの変化では外見と連動しないこともあるということがわかりました。


 で、体重を減らしたいのは。

 たとえば、格闘技で体重判定のある試合の前とか。

 健康診断で体重測定をする前とか。

 あるいは単なる見栄で体重を軽くしたいだけとか。

 とにかく体重さえ減れば自動的に美しくなったり健康になったりするという強い信仰を持ってるとか。

 医者に減らせと言われたとか。

 まあそんなような場合です。


 さて、体重を落とす方法はいろいろありますが、代表的なものは


 1)食べる量を減らす

 2)運動量を増やす

 3)体から水分を抜く


 ということになります。


 そこで、まず朝食を減らします。2杯食べてたごはんを1杯にします。水も飲まないようにしました。

 昼はドレッシング抜きの塩をかけたサラダだけで、カロリーのあるものは食べませんでした。


 すると午後には体が物凄く飢えてきて、眼もギラギラしてきます。けれど、がまんがまん!


 さらに、仕事帰りにジムに寄って、カロリーを消費して水分も抜くためにエアロビやヨガなんかしたりして。

 ひと汗かいたら……もう我慢できません。


 甘いジュースを飲んで焼きイモや菓子パンやアイスクリームにかぶりつきたい誘惑に、普通の精神力では耐えられないことでしょう。

「がんばってる自分へのご褒美!」

とかなんとか言い訳して、がぶがぶばくばく……。

 空腹なときに運動したのだから、食欲と給水欲が激しくなるのは自然な現象で、これはしかたありません。


 おそらく反省はするでしょう。

「明日こそは我慢しないと……」


 それで翌朝、昨日の分まで摂食しようとして今度は朝食を完全に抜いたりして。

 ところがそのせいで夕方にはさらにカロリー不足。体は昨日以上に飢えた状態となっていて、もう我慢できませんから、また甘いものをガブガブバクバク……。


 こんな生活を続けたらどうなるでしょうか、体重は減るでしょうか?

 いえ、普通はかえって増えるでしょう。(汗)


 相撲の力士は、「寝る→運動→食事→寝る……」というサイクルの生活をすることで増量ウェイトアップします。相撲の取り組みでは一般に体重の重い人のほうが有利なので、初級の力士は増量が必要だからです。


 早い話が、運動した直後の、体がカロリーに飢えてる状態で糖分や脂肪分を摂ると、内臓はいつも以上にそれを吸収し、皮下に溜め込もうとしてしまうわけ。

 相撲ではその原理を利用して増量するのですが、上記の例は、減量しようとしながら相撲の力士の増量と同じことをやってしまっているわけで……これで減量できるわけがありません。


 つまり、「普通に生活してる人が食後のデザートでアイスクリームを食べる」よりも、「減食中の人が運動後の空腹時にアイスクリームを食べる」方が、量が多くないと満足できませんし、同一量だったとしてもカロリーと脂肪分の吸収がより激しくなるのでした。


 これが、あの沙門たちが「トイレでスッリパを履きかえなかった」「ちょっと酒飲んだ」くらいの罪でも地獄に落ちてしまった原因です。


 じゃあどうすればいいのか。

 逆をやればいいんです。

 「寝る→食べる→運動→寝る……」


 この原理に基づき、1日に必要なカロリーと栄養素を朝食と昼食で満たしてしまい、間食や甘いものへの欲求が小さくなるようにします。

 欲求が小さければ我慢もしやすくなります。どうしても甘いものを毎日を食べたいなら、朝食や昼食の時に食後のデザートとして食べましょう。満腹してるから食べる量は少なくても満足でき、吸収するカロリーも少なくなることでしょう。

 そして1日の仕事を終え、運動もして疲れたら、夕食は満腹までは食べず軽くだけにして、さっさと眠ってしまい、また、朝にたくさん食べるようにする。

 そうすれば、外見が痩せて見えるかどうかは別としても、少なくとも体重は減っていきます……経験者は語るのです。(笑)


 スリッパや酒については……沙門の生活を経験してない筆者から「こうだ」と断言はできません。けれど、何か似たような原理が働くんじゃないかと。


 現代の阿羅漢・スマナサーラ長老の講義の日本語解説文のなかに、「戒律で禁止されている肉食や性行為は、それ自体が罪なのではない。しかし欲望が強くなって修行の効果を無くしてしまうから、戒律で禁止されているのだ。」という意味の記述がありました。


 実際、仏教の修行の初心者は異様にいろいろな欲望が強くなります……特に性欲。数日間の体験修行だけでもその実感がありました。修行によって生命力が鍛えられると、それに付随して本能に基づく欲望も強くなるんじゃないでしょうか?

 問題は、それをどう処理するかですね。たとえば密教や禅には瞑想によって性欲や破壊欲などを知識欲に変化させる方法もあるそうですが、無計画に欲望を暴走させてしまえばその結果は……。


 つまりアイスクリームを食べることが悪いのではなく、食べるタイミングがよくないから減量が逆効果になってしまう。

 だからいったん出家して修行する人は、欲望に負けて半端なことをすると修行してない人よりも苦しいことになりますよ、と。無理して欲望が強くなりかえってリバウンドしたりしないよう、計画的に修行しなさいよ、と。


 宝達菩薩の地獄めぐりの物語は、こういう教訓を語っているのではないでしょうか?

 もしそう読み取っていただけてなかったとしたなら、翻訳・脚色した筆者の筆力不足です、申し訳ありませんでした。



 ……なんて書いてたら、なんだか自分にも思い当たることがけっこうあったりして。(たとえばウェブ小説のエタりとか。orz)


 仏道修行や食事療法ダイエットに限らず、何事につけ、おたがいリバウンドに気をつけましょうね~、、、


 合掌。(-人-;





(*なおこれは小説化にあたっての勝手な解釈であり、定説とか正式な教義とかそういったものではありません。きちんと学びたい方は、原典や正式な教師に当たってくださるよう、ご注意ください。)

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