佐藤黒歴史
テーブルにノートPCが置かれている。
作者がなぜか神妙な顔。
「……見つけてしまった」
悠「その入りやめろ」
七瀬「絶対ろくでもないやつじゃないですかぁ」
作者、ゆっくり画面を回す。
「――初期設定メモ」
全員「……」
佐藤「へぇ、懐かしいっすね」
まだ余裕。
作者、スクロール。
読み上げる。
「佐藤:空気読めない陽キャ。距離感バグ。自分ではモテると思ってる」
静寂。
七瀬、口押さえる。
「っ……」
鷲尾、顔背ける。
湊「……」
悠「……これは」
朱里「……」
佐藤「いやいやいや待って?」
作者、続行。
「ヒロインの拒否を“照れ”だと解釈するタイプ」
七瀬、吹き出す。
「だめ無理www」
佐藤「笑うな!!」
作者さらに読む。
「将来的には主人公に論破される役」
悠、肩震える。
「お前……」
佐藤「やめろ」
作者、追撃。
「恋愛理解度:低」
「自己認識:高」
「現実理解度:低」
七瀬「三段オチ!」
鷲尾「完成度高ぇな」
佐藤「公開処刑やめろ!!」
でも。
笑いが少し落ち着いたあと。
朱里がぽつり。
「……でも」
全員そっちを見る。
「今、全然違いますよね」
静かになる。
作者、画面を閉じる。
「そう」
「だから今日の議題」
佐藤を見る。
「昔の自分、どう思う?」
少し沈黙。
佐藤、頭かく。
「……うわぁって感じっすね」
七瀬「軽い」
「いや違うって」
少し考える。
佐藤
「でもさ」
「多分あの頃の俺、本気だったんすよ」
誰も茶化さない。
「分かってなかっただけで」
「ちゃんと誰かと仲良くなりたかったんだと思う」
湊、静かに頷く。
悠も何も言わない。
佐藤、苦笑。
「だから消したい黒歴史ではあるけど」
少し間。
「否定はしたくないっすね」
七瀬、目を丸くする。
「……成長イベント終盤じゃないですか?」
鷲尾「まだ序章だろ」
作者「うん、まだ第一章」
佐藤「長ぇよ!」
作者、メモを書く。
「記録:佐藤、過去を受け入れる段階に到達」
佐藤「RPGみたいに言うな」
悠、ふっと笑う。
「でもまあ」
「今なら朱里が嫌がってるの分かるだろ?」
即答。
「分かります」
全員「早い」
佐藤、小さく息を吐く。
「……あの時の俺、マジで余裕なかったんだな」
七瀬「今は?」
少し考えて。
「まだ余裕ないけど」
笑う。
「前よりは周り見えてる気がします」
作者、満足そうに頷く。
「よし」
「じゃあ次の段階いこう」
佐藤「まだあるの!?」
作者
「“誰かに優しくされて動揺する佐藤編”」
佐藤「待ってそれ一番弱いやつ!!」
そして最後。
作者、小声で。
「……こうやって、モブが主人公になるんだよ」
佐藤「聞こえてますけど?」




