03-08.後始末
決闘騒ぎの数日後、私とセーナは学院に呼び出された。
一通りの厳重注意と、今までの功績に免じて今回は見逃すという、ありがた~いお言葉を頂いた。
私は休学扱いになっていたらしく、復学を認められる事になった。幸い普段の勉強量のお陰で、勉学の遅れ等も無いことから、留年も免れたらしい。まあ、こっちはどうせ家での勉強が倍増するんだけど……。
というかさ~。ど~せこき使われるだけなのにさ~。偉そうにさ~。復学を認められるなんて言われてもさ~。
元々学院にも殆ど通って無かったんだしさ~。別に復学しなくても良いんじゃないかな~。
なんて口にできるわけもなく、粛々と受け入れた。
そんな事したら今度こそ父様に見限られるわ!
訓練場も結構ボロボロになっていた気がするんだけれど、その辺はお咎め無しでいいんだろうか……。
まあ、余計な事は言わんとこ。
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帰り際に、レオン王子から頭を下げられた。
ついでになんか告られた。なんで?
私が引きこもった最初の一週間の間に、レオン王子含む全ての攻略対象は、本気になったセーナにあっさりと陥落されたらしい。セーナ様まじすか……。
一応レオン王子だけは、セーナに好意を寄せるまでにはいたらなかったが、私を置き去りにしていく時も止めようとしない程度にはセーナの事を信じていたようだ。
これがNTRってやつですかぁ!?
どっちが寝取られたのかよくわからんけど。そもそも寝てないよ。誤解無きよう。
レオン王子だけは事前にセーナから「リリィのために必要なこと」なんて言われていたそうだ。
レオン王子本人は、もちろんそんな事は口にしなかったけれど、セーナが珍しくフォローを入れていた。流石に何か思うところがあったのだろう。
王子の謝罪内容は、私の意見も聞かずにセーナの事を信頼して無視するような態度をとってしまったことだ。
レオン王子はセーナにも私相手にも、恋愛感情と呼べる程のものは持っていなかったけれど、それでも私との婚約関係を大切に思ってくれていたそうだ。
婚約解消は、私の悪評と引き籠もりが原因らしい。
流石に勇者の功績を奪って祭り上げられたという話に、本人も否定しに出てこないとなると、庇いようも無かった。これがまだ数週間程度ならともかく、数ヶ月も引きこもっていたのでは仕方がない。
てなわけで、もう一度婚約者になってくれないかと、お誘い頂けたわけだ。私の悪評も結果的に払われたわけだしね。これも広義の意味では告白と言えるのではなかろうか。
まあ、私も特に思うところは無いので、今後はお友達でお願いしますという事で落ち着いた。
そもそもこれ、単なる社交辞令だもんね。一度破棄された婚約関係が元に戻る程甘い世界ではないのだから。
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セーナの爆弾発言は今のところ放置中だ。今の私に受け止めて考えるだけの気力はない。いずれは真剣に向き合わなければならないだろうけれど。
あれからセーナは積極的になった。身の危険を感じる時もあるので、もう少し手加減して欲しい。
レオン王子たち、攻略対象組の育成状況は一応順調なようだ。ただ、何人かは私とセーナの戦いに怖気付いてしまったらしい……もうダメかも知れない……。
魔王の攻撃なんてあれより遥かに強い筈なんだけどなぁ。
セーナは全員陥落させつつ、誰とも懇意にはならない絶妙なバランスでチームを維持していた。全員に信頼させ、依存させ、好きに操りつつも誰にも刺されないってどうなってるんだろう。
なんだったら攻略対象同士の仲までめっちゃ良いし。
ゲームでそんなに和気あいあいしてましたっけ? もう少し競いあってませんでした? ほんと魔性の女ですね~。
いっそ逆ハールート行けるんじゃない? 興味ない? そうですか。
この先どうしようか。
セーナは私から離れるつもりは毛頭ないだろうし、私がセーナの逆ハーチームに加わるの? 嫌だよ?
かといって、セーナを引き抜いてしまえば魔王討伐までに仕上がらないだろう。
いっそ二人で倒す?
魔法少女の杖さえ入手できるなら、いけなくはないんだよなぁ~。でも場所わからないしなぁ~。
この問題は一旦保留しよう。
ちょっといい案が浮かばない。
セーナと戦っていて気付いたことがあった。
魔力増幅の指輪はゲームと仕様が別物だった。
ゲームでは魔力量を増やすだけの効果だったが、この世界では消費する魔力より大きな効果を得られるようになるというものだった。こっちのほうが名前通りの効果になっているようだ。
どおりで指輪を付けてもなにも感じないわけだ。魔法を使うときにしか効果は発揮されないらしい。
考えてみれば当然かも知れない。付けてる限り魔力が一定数増えるって、増幅というより電池みたいなものだ。
まあ、この違いが実戦にどう影響するのかはよくわからないのだけど。
魔力増幅の指輪を手に入れている事をうっかりセーナに話してしまい、問い詰められた。
「ごめん。大蛇倒しちゃった……」
「リベンジしたかったのに! リリィのバカ!」
やっぱりセーナは負けず嫌いだなぁ~。
結果的にセーナのおかげで? 魔王討伐までかなり余裕が出来た。
当初は数ヶ月で仕上げなければならなかったのが、まだ二年近くある。これだけは不幸中の幸いだったかもしれない。
もう二度とごめんだけど。




