02-06.入学式
入学式が始まった。
セーナのメイド服に気が動転したせいで、心底落ち着かないままだ。
勇者をこき使っているなどと噂されたら堪らない。せっかくの学院生活がいきなりお先真っ暗だ。
ただでさえ、天使としてなんか遠巻きに見られている気がするのに、これ以上変な属性を付けないで欲しい。
友達百人できるかな? とまでは言わないけれど、それなりに友達は欲しいのだ! 放課後に友達とお茶して帰るとかやりたいの!
流石に学院に通い始めれば、帰りの寄り道くらいで父様にとやかく言われることも無いだろう。
考えが甘い?
皆貴族だから誰も徒歩通学なんかしていない?
寮生は学院の敷地内だから通学の必要はない?
そんなのかんけーねー!
放課後遊んでくれる友達の一人や二人作って見せるぜ!
新入生代表として壇上に上がったレオン王子が、私を見て一瞬ニヤリとした気がする。
彼ともそれなりに長い付き合いだし、今の私の心境を想像して笑いそうになったのかな?
被害妄想な気がしないでもないので、問い詰めるのは勘弁しておいてやろう……。感謝しろよな!
そういえば、彼との正式な婚約発表っていつになるんだろう? ゲームではそのあたりの説明は無かった。
この世界は変なところで日本文化が引き継がれているせいか、結婚できる年齢も学院卒業後の十八歳からだ。
こんな中世ヨーロッパ風の世界なら、もう少し早そうな気もするけど……。
卒業間近に発表するのかな? 魔王討伐の祝勝会とかで発表すればインパクト強そうだし。
仮に、何事もなくレオン王子と結婚することになれば、卒業後は王宮で本格的な王妃教育が始まるそうだ。
今でも勉強三昧なのに、まだまだ私をいじめ足りないらしい。王妃になるんだから当たり前? ワカッテマスヨーダ。
まあ、卒業後は出奔して冒険者になるつもりだしー。
セーナは優秀だし良い王妃様になってくれると思うよ?
ちなみにこの国に冒険者などという職業は無いので、無職とも言う。
婚約破棄後はレベル上げの為にダンジョンに潜って、ついでにお宝集めもしておこう。当面の旅費は稼がなきゃだし。
結局いつも通り考え込んでいる内に入学式は終わり、セーナに引きずられて帰宅した。
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次の日には教室に集められた。
レオン王子とは同じクラスだった。
レオン王子は真先に私に話しかけてきた。
「同じクラスになれて嬉しいよ。今後は共に切磋琢磨していこう」
「こちらこそ。どうぞよろしく」
周りから黄色い歓声が聞こえた。
相変わらず爽やかな男だ。
王子はセーナにも挨拶したが、セーナは事務的に返すだけだった。どう見ても乙女ゲームの主人公と攻略対象のやり取りではない。もっとアクションおこしてほら!
本来はここが初めての出会いとなるはずだったのだが、私の従者になってからはお茶会にも参加させていた為、この二人はとっくに知り合いなのだ。
どう見ても警護の為でもない幼いメイドを親友だからと連れて来る私に、レオン王子は嫌な顔ひとつせず快諾してくれた。婚約者とのお茶会に毎回意味もなく親友連れなんて失礼な事をしているとは思いつつ、ついつい甘えてしまった。
「それにしても、君たちは本当にいつでも一緒だね。学院にまでメイド服で来るとは流石に驚いたけれど」
私もだよ。直前まで思い描いていた学園生活とは全然違うものになっちまったぜ。
「国王の呼び出しにまで一緒に来るくらいだ。君達らしい気もするよ」
うん? まさか予言の日に私が来る事を予測していた?
都合よく地竜戦の時の兵がいるもんだと思っていたけど、あなた王様にちくりましたか? 陛下が私に興味を持っていたって話は王子が原因かしら?
流石に考えすぎかしら?
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教師が現れるとこの学院の基本的な説明が行われた。
最初の数ヶ月は普通の授業が行われ、夏季休暇明けから各自の適正に合った戦闘訓練が始まるそうだ。(この学院は日本と同じように一~三学期と夏季休暇、年末休暇がある)
さらに数ヶ月後には魔物討伐への参加義務が発生し、授業の代わりに各自指示のあった場所へ行って魔物を退治することになる。
依頼の難易度及び達成率と、筆記試験で成績が決まっていく。
一通り説明が終わると、私とセーナだけ呼び出された。
セーナは結局メイド服で押し通した。
昨晩、制服で通うよう説得を続け、涙目で迫ることで惜しいところまで崩しかけたのだが、そこからかえって意固地になったセーナは全く話を聞いてくれなくなった。
今朝にはしれっとしていたけど。
呼び出しの内容は、魔物討伐への参加を直ぐに始めて欲しいというものだった。しかも私達二人だけで。
本来ならば入学から約半年後から始めるはずだし、王子たち攻略対象とも一緒に行うはずだ。
何故かを聞いても王宮からの指示としか答えてくれない。既に決定事項のようだ。
後日改めて説明会があると伝えられ、その日は帰宅することになった。




