02-03.勇者のレベル上げ
無事にセーナが勇者になったので、ダンジョン通いの日々が始まった。
日中は王立学院入学に向けての勉強。
夕方からダンジョンに向かい夜までレベル上げ。
夜遅くに帰宅し、眠りにつく。
連日連夜、スーパーハードスケジュールで活動していた。
流石に私もここまでするつもりは無かったのに、セーナの熱意に押し負けて付き合っている。
勇者になったことで強くなる必要性は説得力があり、セーナは私の外出許可をも、父からもぎ取ってきた。
なんでこの子公爵家を好きに動かしてるの?
あの純粋だった村娘はいったいどk (しつこい)。
順調に強くなったセーナには、もはや手も足も出ない。
魔法が直撃しても無傷だった時は変な笑いが出た。
レベル差ってここまで影響がでるのか……。
人間同士でこれなら、レベルの高い魔物に太刀打ちできないのも納得だ。
益々魔王への恐怖が湧いてくる。
少なくとも今のセーナでも戦いにすらならないはずだ。
セーナがどれだけ強くなれても、魔王には一対一では絶対に勝てない。
これは、そもそも互いの攻撃が弱点となっているせいだ。
セーナは闇に弱く、魔王は光に弱い。
しかし、魔王の耐久力は人間の比ではない。ゲームでよくあるボスキャラの体力値が多いあれだ。
お互いに魔法を撃ち合えば、先に倒れるのはセーナだ。だからゲームでは前衛を置き、セーナはその後ろから攻撃するのが鉄則である。現実になっても、その辺は変わらないと思う。
唯一の例外として、セーナを剣士として育成し、全ての装備を回避力の上昇につぎ込むという手段があった。
この戦術は偶然にでも一撃を貰えば命はない。ゲームならではの戦術だ。
そんな危険な賭けをするつもりはない。そもそも現実なら回避不可能な全体攻撃とかだって、普通にあるんだろうし。
学院に入学したら攻略対象達も鍛えていかなければ。
学院の生徒には学院から定期的に出される依頼を達成する義務が生じる。
基本的にその依頼内容は魔物に関することであり、最初はダンジョン外の魔物退治から始まる。
その依頼をこなすうえで生徒達はチームを組むのだが、そのチームメンバーがそのまま攻略対象となっている。
最初の仲間は学院から半ば強制的に組まされるレオン王子だ。おそらく、国からの指示だったのだろう。
勇者と組ませることで、王子に箔をつけることが目的だったのか、安全を確保できると考えたのか。
ゲームではレオンルート終盤に、レオンは魔王討伐への参加を止められ軟禁状態になるが、それをセーナが救出し共に力を示したことで認められるという展開がある。
このことからも、後者の理由だったのかもしれない。
まあ、レオンルート以外だと特にそんなこともなく、しれっと着いてくるんだけど。
そういえば、私はどうなるんだろう? 当然というか、ゲームでのリリィはセーナとは別のチームだ。
今の状況で私とセーナを引き剥がすだろうか?
そんなはずは無い。
私としてもセーナと別チームは考えられない。
私はレベルを上げるわけにいかないので、セーナに魔物へトドメをさしてもらわなければいけない。
そもそも、今の私では最悪魔物に負けてあっさり死んでしまうだろう。
地竜は一体だったうえ、特攻同然の方法が偶然成功してくれただけだ。
あそこで地竜が迎え撃つのではなく、回避してからのカウンターなんて手段を選んでいたら、あっさりと敗れていたことだろう。
最後のあの一撃で撃ち落とされたということは、あの地竜は全速力の突撃でも正確に認識していたのだ。飛行速度には自信があったけど考えが甘かった。
また、ある程度強い複数の魔物に囲まれても、魔力が足りず倒しきれない。
魔物によっては空への対抗手段を持っている者もいるはずだ。
お世辞にも私の判断力は大して高くはない。複数の魔物に気を取られているうちに、死角から撃ち落とされても死ぬだろう。
この世界の魔法は、光魔法以外に障壁とか存在しない。
風の繭で防御できないかと研究は続けているが、セーナの攻撃を防ぎ切るには魔力の消費量が多すぎる。同じ規模の魔法で相殺するか、素直に避けたほうがずっといい。
障壁といい、魔力探知といい、光魔法だけファンタジーが過ぎる! なにあのインチキ! 私もそんな便利な魔法が欲しかった!
相変わらず闇魔法は破壊にしか使えない。
魔王ってどんな戦闘してたかな?
ゲームだと対策しまくって動きを止めないとすぐに自分の仲間がやられてしまう。なので、殆ど魔王の動きを見たことないかもしれない。
動かれてもワンパンされていくだけだし。
今は、高高度からの狙い撃ちに専念するべきだ。そのためには、地上で足止めをしてくれる仲間が欲しい。私一人では防衛任務とかこなせる自信がないし。
そもそもこれから三年近くもの間、ほぼ被弾ゼロでやり過ごさなければならないのだ。レベル一で最終ダンジョンの直前までは進めなければならないのだ。……無茶だよなぁ。どう考えても。
魔法少女服を手に入れられたのは幸いだった。あれがなければマジで紙装甲だった。それでも確実とは言い切れないけれど。
しかしやるしかない。その先にしか私に生き延びる未来は存在しないのだから。
英雄の名声と魔法の才能を持つ高位貴族の立場では、魔物との戦いを拒否する権利自体が存在しない。たとえ将来の王妃であろうとそれだけは避けられない。ここはそういう世界で、そういう国だ。
もちろん戦わない選択肢なんて端っから選ぶつもりは無いけれど。私が勝たなきゃ魔王が世界ごと滅ぼすんだもん。やるしかないじゃんさ。




