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 こ わ し て

キーワード。

乙女ゲー転生トリップ・あえての悪役・あえてのライバルキャラ・支配力


私・コーネリア。

転生者。ここが、ゲームの世界だとは気付かなかった。


いつの頃からだったろう。

頭の中で、知らない誰かの声が聞こえるようになったのは。



“おまえの役目を思い出せ”と――。



『 こ わ し て 』



前世の記憶を引き継いだままこの世界で産声をあげた私は、第二の人生を歩み始めました。

まさか、ここがゲームの世界だとも知らずに。

“コーネリア”と呼ばれる少女として、新しい家族と共に生きていたのです。


前世の記憶があるからといって、その知識を披露することもなく、日々を楽しく過ごしていた私は、7歳を迎えるとともに、多くの子供たちが通う学園に入学することになりました。

前世では、黄色の通学帽子に真新しいランドセルを背負って、襟元の可愛い白のブラウスと紺色の制服に袖を通し、近所のお姉さんやお兄さんたちと一緒に集団登校した頃が、なんだか懐かしくも感じます。

とはいえ、現世での私は貴族階級の人間のため、送り迎えは家の者がしてくれるので、なんだか味気ないものを感じます。

それは、前世の記憶を引き摺っているが故の弊害なのでしょうか?

足をぷらぷらと揺らして不貞腐れていると、そんな私を見たお姉様に窘められました。

それから程なくして目的地に着くと、馬車から御者の手を借りて降りました。

きょろきょろとお上りさんよろしく周囲を見渡していると、お姉様に手を引かれ、その温かな体温を感じながら、シュバルツ学園の敷地に足を踏み入れた瞬間――。



――おまえの役目を思い出せ。



……また、あの声が聞こえる。

周りの人間には聞こえない、ありえない声。

この声が聞こえるようになったのは、いつの頃からだったろう?


気付いたときには、誰かの声が私の頭の中で響いていました。

……私の役目って何?と、頭の中の誰かに問いかけてみても、役目を思い出せと、狂ったように繰り返されるだけ。

その声は、年を重ねるごとに酷くなる一方でした。

そんなときに、私はようやく知ることになるのです。――“私”の役目を。


思い出したきっかけは、シュバルツ学園に入学してから8年目の春を迎えた頃のことでした。

私が“彼”という存在を意識したときに、私は“私”を知ったのです。


“彼”は、私がこの学園に入学したときから目立った存在だったそうです。

噂には聞いていましたが、これまで“彼”という存在を意識したことはありませんでした。

そんな彼が、今年からこの学園を束ねる執行役員の一人となりました。

執行役員というのは、前世でいうところの生徒会に近い存在です。

彼以外にも成績優秀な方々がその役目を担っているのですが、どの方も眉目秀麗です。

前世でこの手のものは小説などで流行っていましたが、まさか、本当にそんな現実を目の当たりにするとは思いもしなかったものです。


彼らが全校生徒の前で始業式を進行する中で、執行役員代表の“彼”が壇上に上がり、意志の強そうなその瞳に呑みこまれそうになったとき、いつもの声が頭の中に響いてきて……。



――宵闇の子守唄。



「……っ!?」



……いつもとは違う言葉。けれど、それは前世で聞いたことのあるゲームのタイトルで……。

“彼”が話す内容も耳には聞こえてこず、絶えず頭の中で響くのは、繰り返される“宵闇の子守唄”というタイトル。

それと同時に押し寄せてくる膨大な知識の波に耐えきれなかった私は、意識を手放してしまったのです。


*  *  *


【宵闇の子守唄】

その昔。人と精霊が共に生きていた時代のこと。一人の少女が、一つの詩を紡いだ。

静かに紡がれたそれは、まるで子守唄のようだったと、後の世でそう記されている。

それが、このゲームの根幹となっている。


【コーネリア・レイモンド】

メインヒーローである“彼”のルートにのみ出てくるキャラクター。“彼”を愛している。

彼女には彼女なりの信念があり、最期のときまでヒロインの敵であり続ける存在で、終ぞ和解することはなかった。


*  *  *


ゲームの記憶を思い出したことによって頭の中に響く声は、いっそう激しさを増していくばかりでした。

四六時中聞こえる怨嗟の声は留まることを知らず、私が私でなくなっていく恐怖に押し潰されそうになる毎日。

特に酷くなったのは、“彼”の傍で笑う“ヒロイン”の姿を見たときでした。


私は、“彼”のことなんて好きじゃないのに。愛してなんかいないのに。“彼女”に対して何も思っていないのに。



殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せころせころせころせころせころせころせ



終わらない無数の声。それでも抗って生きてきた。



私は、私で在りたかった。



けれど、時々自分の意識がなくなるときがあったのです。

意識が戻ったときには、どうしてそこに自分がいるのかも分からなくて。……それが、何よりも怖かった。

まるで、私という存在が消えてしまいそうで。

心の拠り所を求めて彷徨い、気付けば学園の敷地内に存在する大樹の前に行きついていました。


――世界樹・ユグドラシル。


何かに誘われるように手で触れると、絶えず頭の中で響いていた声が止みました。

大樹の幹に額を当てて目を閉じれば、頬を伝っていく雫。



……お願い。



誰でもいいから、私が私でなくなる前に。



“私”をその手で




『 こ ろ し て 』 




“私”を私と呼べる内に、



お願い。



私を見つけて……。

乙女ゲームで、必ずしも敵やライバルキャラが出てくるわけでもないので、キーワードで“あえて”と表記しました。

敵が出てくる作品は結構多いですが、ライバルキャラが出てくる作品となると極端に少ないと思います。

といっても、自分がプレイした作品に限っての話になりますので、(※)1/16程でした(爆)

※ライバルキャラの人数ではなく、ライバルキャラが出てくる作品数での話になります。


ライバルになる子は良い子たちなので、特にヒロインに対して思い入れがなければ、チェンジして欲しいと願うくらいには、可愛い子揃いです。


逆に、敵が出てくる作品となると男性も女性も含まれますので、その分多くなって1/2ぐらいでした。

ただし、男性の方が圧倒的に多いですね。攻略対象者が含まれることもありますので。

その点、女性となると少ないですね。1/13程でした(くどいようですが、あくまでもプレイしたことのある作品に限ってですし、人数ではなく作品数の話になります)


同年代の子となれば、最終的に味方になってくれます。……よっぽどのことがない限りは(原作がある作品で、最期まで敵であり続けるキャラの場合だとしょうがないのです)

なので、最後まで敵であり続けるのは、年上の女性が多いと思われますが、あくまでも多いだけで、必ずしもそういうことではありません。

その点、男性はルートによって立ち位置がコロコロと変わるため、一概にどうこうとは言えませんが。

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