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夕焼けの教室にて

目を開けて。


 妹の声が聞こえた気がした。いや、聞こえている。今は、夢の中。


「ねー、起きなよ」

「………」

「お~い」

「んん?」


 教室。左、窓から外を眺める。夕方だ。


「何寝てんの?」

「眠いから」

「夜遅くまで勉強してるわけでもないのに」

「んん~? あれ? 待っててって言わなかったっけ?」

「うん、報告があるから」


 欠伸が漏れた。夕日が目に染みる。


「お~い」


 また寝そうになったら髪を掴まれ強制的に起こされた。


「なんですか?」

「報告があるんだって」

「頭皮が痛い」

「起きると思って」

「起きてるよ」

「はいはい」

 ぱっと手を放す彼女。重力に従って机にぶつからないように普通に頭を持ち上げる。


「首が痛い」

「知らないし」

「寝ててごめん?」

「もういいよ。怒ってないし」

「声のトーンが怒ってる並みの低さだよ」

「何言ってんの、不機嫌なだけだよ」

「ごめんね」

「誠意が感じられない」

「後で何か奢るよ」

「許してやろう」

「どうもっ、それで」

「ん? んふふ~」


 不機嫌な顔から一変して、嬉しそうに笑う彼女。


「じゃじゃ~ん、受かりました~。合格者受験番号のプリントアウトで~す」

「おお! すごいじゃん! このマーカーひいてるやつ?」

「うん。頑張ったよ~。正式なのは明日郵送されるらしいけどね~」

「よかったねぇ。おめでとう」

「これで勉強しなくて済む~」

「いや、期末テストあるよ? 推薦で受かったんなら」

「それは赤点取らなきゃいいだけだし」

「んー。それでいいならいいけど」


 テストの点数次第で合格取り消されるって聞いたとこがあるけれど、彼女も聞いているだろうから重ねて言わないことにした。


「もう勉強しなくていい~」

「大学って勉強するために行くんじゃなかったっけ?」

「興味のないことを勉強しなくて済む~」

「わざわざ言い直しちゃったよ」

「歴史とか意味わかんないよ」

「あんなのただ覚えるだけじゃん」

「事柄までは何となく覚えれるんだけど、年号と合わせたらもう無理」

「人の名前も覚えられないもんね、君」

「うん、あなたの名前も一時覚えられなかったし」

「ひどいな」

「あと、土地名も無理」

「ふ~ん。あ、ケーキはファミレスでいい?」

「いいよ~」


 無言で机の上に鞄を置かれる。持ってという意味だろうな。仕方なく持ってやった。


「軽っ!」

「あぁ、エコだから」

「何も入ってないんじゃない? これ」

「筆箱と女の子の必需品は入ってるよ」

「へぇ」


 鞄の中を見ようとしたら恥ずかしがられた。叩かれた。


「いたい」

「何で見ようとするの」


 彼女は笑ながら叩いてくる。


「チャックが開いてたから」

「しまってたら中の物出しにくいじゃない」

「……うん、まぁ君が良いんならいいんだけどさ。危ないよね?」

「財布入ってないから大丈夫!」

「威張って言う事じゃないね」

「ここまで自転車だし!」

「もしもの時どうするんだろうね、この人」

「本当にねぇ」


 くすくすと笑いながら腕を組んできた。何気に近いの初めて。危ない。いや、危なくないけど。


「んん?」

「ん?」

「んー」

「何?」

「ん~、お腹すいたぁ」

「はいはい」

「早く行こ。すぐ行こう」

「んー」


 腕を引っ張られて僕は忙しなく彼女と歩く。久しぶりの一緒の下校。ついでに散財させられそうだけれど、それはまぁ、仕方ないと目を瞑ろう。


「後ろばかり振り返ってますが、何か学校に未練でも?」

「べっつにぃ」


 二人で歩くものだから少しだけ遅くなる速度で伸びる時間で話せなかったことを話そう。

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