Bye
「…………」
カーテンを閉め忘れたようだ。
朝日がまぶしくて、手のひらで日の光を遮るが上手くいかない。
「あぁ、眩しい……」
今日は、何だっけ? 何かあった気がする。なんだっけ?
思い出せないまま、再び眠りに就こうとしたけれど、日の光のせいで眠気がどこかへ行ってしまったようだ。
最近、忘れるという事に恐怖を覚えるようになってしまった。なんという事だ。心臓が痛い。ついでに横腹も。
今日、会社休もうかな~。
………。
いや、行こう。もうね、時間無いし。
結構体力仕事なので、キっツイけど、頭使わなくていいからこの仕事好きだった。
――RRRRRRR。RRRRRRRRR。
携帯の着信音が響く。前のが壊れて買い直してから時間は結構経つが、着信音はそのまま初期設定のままだ。
「電話、誰?」
一人暮らしは何故か独り言が多くなるのは僕だけなんだろうか? 頭を掻きながら携帯を手繰り寄せる。
「はい? あー、おはようございます。あー、はい、はい。そですね。じゃあ先寄って行きます」
工場からだった。
そうだろうな。来月辞めるから。
色々と理由はあるけれど、主なものは影のせいだ。これが幻想とか思い過ごしだとかしても、それは知らないうちに僕をむしばんでいたようだ。もう、怖くて怖くて、ね。
それに今まで危機感抱かなかったのが拍車をかけて、今はもう何もする気が起きない。
そこまで考えてグルンと視界が揺れた。そして、
「ぅ、わー、幻聴」
問いかける。囁きかける。話しかける。
声は声として聞こえなくて、ただ耳の奥が揺れるばかり。
誰の声かもわからない。
「いい加減にしてくれぇ……」
無意識に昔時計があった柱に目をやる。時計型の日焼け痕が生々しい。
「もう時間だから」
誰に言い訳するわけでもなく、ただそう言葉だけ残して部屋を出る。鍵なんてかけなくても泥棒が入るようなものは持ち合わせていないが、また酔っ払いさんが酔いつぶれていたら嫌なのできちんとかける。
「あぁ、辛い」




