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「どうしよう。決められないわ」
フィリアの両手にはそれぞれ違う色のリボンが握られている。
着ている服に合わせるなら青。
だけど、あの人の瞳の色は緑。
恐らく青の方がフィリアには似合っている。
それでも、どうしても緑を諦めきれずにいた。
どうにも決めかねて唸っていると、ノックの音が響く。
フィリアが返事をする前にドアが開き、兄のアンセルが顔を覗かせる。
「フィリア、そろそろ行くぞ」
「お兄様! ねぇ、どっちが良いと思う?」
そういって差し出されたリボンを一瞥して、アンセルは肩をすくめた。
「どっちだって一緒だろ」
「意地悪」
「じゃあ、青」
「……やっぱり、そうよね。緑にする」
「なんで聞いたんだよ!」
文句を言いつつ、アンセルは緑のリボンを受け取ってフィリアの後ろに回る。
態度に反して優しい手つきで妹の髪にリボンを巻いてやると、よし、と言って肩を叩いた。
「ほら、早くしないと母上に叱られるぞ」
「ありがとう」
揃って玄関に向かうと、すでに支度が済んだ様子の両親が待ち構えていた。
「遅くなってごめんなさい、お父様、お母様」
「うむ。では行こう。遅れてはいかん」
馬車に乗り込み教会へ向かう。
一家にとって、七日に一度の礼拝は欠かすことができない決まりごとだ。
フィリアもアンセルも、理由が無ければ欠かしたことはない。
そしてそれは、もう一つの家にとっても同様だった。




