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(第58章 妊娠出産)
『どれだけ寝ても寝足りない。気分もすぐれないし、体もだるい。食事をする気力もない。きっと、不治の病にかかったに違いない』と深刻になり病院に行くと、妊娠していた。
それを告げると、奥野は手放しで喜んでくれた。
子宝とは、よく言ったものだ。子供ができたというだけで、世界は輝いて見える。周囲の人も喜び、祝福してくれた。
「子供の分まで、美味しいものを食べなきゃ」と奥野は、あちこち連れて行ってくれる。
「子供ができたら、こんなレストランでゆっくり食事することなんてできなくなるから。今のうちだよ。こうして二人でゆっくり美味しい食事ができるのは」と言ってくれた。
そして胎教にいいようにと、クラシックのコンサートや喜劇にも連れて行ってくれた。
「母親が笑うと、子供にも良い影響があるらしいからね」
と言って。二人の結婚に、あまり賛成ではなかった奥野の両親も、急に優しくなり、一気に家族の一員になったような気がした。しかも赤ちゃんのためにと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
皆が優しく、愛情に包まれて、美子が一番幸せな時だった。




