94話
「毎度あり」
買ってしまったけど、欲しいのはこれじゃなかった…でも、これはこれで予言書みたいなものなのかもしれないしね。
しかし、早苗とは一体何者なんだ。母ちゃんの様な…気もするけど……うーーん、どうでしょう?
ここ以外に本屋はあと三軒あるらしいので、近い所から順番に巡ってみよう。
先程の本屋から歩いて三分、二軒目の本屋に着いた。ジーパンにアロハで歩いていても珍しがられなくなったな。
中に入って絵本の棚を探すが見つからない。
「すみません、指輪の物語の絵本を探しているのですが…」
店主のおばさんが教えてくれた棚にあったのは、チコリの物とは違っていた。
この際だ、作者違いを揃えてみるか。
「全部でいくらですか?」
こうして全ての本屋を巡ってみたものの、チコリが持っているのは買えなかった。
その足でオルカの宿に寄ってみる。
「チコリ、その本はどこの本屋で買ってもらったのかな?」
「んん?」
服の裾を掴まれて連れられていった先は本屋ではなく、例の雑貨屋だった。紙パック入りのキンミャー焼酎もここで買ってるんだよね。
「あら、チコリちゃん。偉いわね、ちゃんと連れてきてくれたのね」
「か、母ちゃんっ!」
そこにいたのは紛れもなく僕の母ちゃんだった!
「うーん、迷ったかニャ」
特に方向音痴って事もないんだけど、これだけ広いと迷う事もあるのニャ。
「お腹も空いたし、ここいらでお昼にしますかニャ…えーと、サンドイッチはどこかニャ……あれ?あれっ?袋にでっかい穴が空いてるニャ!どこかに落としてしまったニャァ……とりあえず水を飲むニャ」
途中で会った人族の王様は親切だったニャ。
沢山もらった食糧も…うニュー、落としてしまったニャ………ハッ!遠い目をしている暇はなかったのニャ。先を急がないとなのニャ……でも、お腹が空いて歩けないニャ…………。
『こっちに何かの気配がする…ゴーシュは左から回り込んで……』
誰かいるのかニャ…。
「あれま、猫人族の子じゃないの」
「どなたかは分かりませんが…お腹が空いて歩けないのニャ……」
「これ、食べるか?」
大きな男が干し肉を口の前に差し出してきたので、カプっと食らいつく。
「う、美味いニャ…モグモグ…」
「ゴーシュ、この子を拾っていこうか」
こうしてボクは旅の途中で拾われてしまったのニャ。
「何で母ちゃんがここにいるんだよ!」
ここはアンバー、異世界なのだ。
「葉山一族は昔からこの世界に干渉して生きてきたんだよ。お前、大五郎に会ったんだろ?」
「ダイゴロウって、王様やってる大五郎か?それともトダ村のダイゴロウか?どっちも同じ顔してたけどな」
「王様やってる大五郎だよ。あれはお前の叔父さんだ。小さい頃にしか会っていないからねぇ、覚えてなくて当然なんだけど…ちょっとしたアクシデントで時間移動したらしくてね、私らでも二度と会う事は出来なかったんだよ。それでも伝承から大五郎なのに気付いて、なるべく助けてやろうと躍起になっていたんだけどねぇ…」
しゃがんでチコリをなでつつ言う。
「賢司は会えたんだねぇ」
「確かに会えたな。幸せそうに暮らしてたぞ、何せ奥さんは七人もいたしな」
「この世界には大五郎の遺した子供達が至る所にいるんだよ。過干渉って事で力は大分抑えられちゃったけどね」
「武志と里見も知ってんのか、この事」
「お前達兄弟にはこれから教えるはずだったんだよ」
「それで、これからどうすりゃいいんだよ」
「賢司がやりたい事をやればいいんだよ。この世界は色んな世界から干渉されて成り立つ、珍しい世界なんだからね」
何だかとても聞きたくない事のような…。
「そうだ、トダ村に行ってみよう」
母ちゃんとチコリを連れて、トダ村に行く事にした。
「おいーっす!猪持ってきたよー」
この声はエミリーだな。
「いつもありがとう。カウンターの上に置いてもらえる?」
声をかけながら表に出てみると、エミリーと小脇に人を抱えたゴーシュがいた。
「わっ、どうしたの、その人…」
「森に落ちてたんで拾ってきちゃった。猫人族の子みたい」
「拾ってきたって…」
『お腹が空いたのニャ…』
「煮込みはあるけど食べる?」
丼で三杯も食べて落ち着いたのか猫人族の子は寝てしまった。
「それじゃ、その子はよろしくねー」
「ちょ!」
上手いこと押し付けられたなぁ。これから皆が出勤してくるっていうのに。
カウンターに突っ伏している子のほっぺを見ていたら、何だかとってもぷにぷにしたくなってきて、ぷにぷにしていたらナターシャから見つかってしまった。
「また新人ですか?最近は猫の子ばかりですね」
そう言って笑っているけど、ホント、この子はどうしたらいいの!




