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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第七章 ミスリルの約束
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93/230

93話

 マサを戻しに実家に来た訳ですが、何故か時間軸は僕らの時間になっていて、マサは長期に渡って行方不明扱いで、マサを見た母ちゃんはわんわん泣いてしまった。この歳で親を泣かせる羽目になるとは…トホホ。ちなみにマサはのんきにカリカリを食べている。

 サラ以外に女の子達を連れて行ったのでかなり混乱していたけど、チコリとフクは庭を走り回っていた。


 そして、弟も在庫を抱えるだけ抱えて発送出来ないでいた。口コミで世界中から注文が来る様になったんだと。そこで、持っていた魔石を使って魔道具を作り、小さな台に載せるだけで本物のビームセーバーになる様にした。

 魔石もタダではないので、対価にだだちゃ豆を百キロ程頂いてきた。ビールに枝豆はよく合う。


 相変わらず親父は出かけていていないが、ラム、サラ、ナターシャ、リリィ、フク、チコリと五人もいるので茶の間は狭く感じる。

 昼ごはんはこっちで済ませてしまおうと、麦切りを大量に茹でるのだった。トマトにオクラ、きゅうりは庭から採ってきてサラダにする。ナスは焼いて皮をむき生姜醤油でいただくとしますか。


 この際だからと家族には色々と話をして、常設の魔法陣を一階に置くことにした。魔法って便利です。

 これで簡単に実家とアンバーの店が繋がったので、たまには旅行がてら異世界でもどうですか?と言っておいた。


「しかし、草いきれも凄いな。人数いるから草むしりをして戻るか」


「家族になる家なんですもの、当然よね」

 ラムが率先して庭に出ると、争う様に庭で草むしりが始まる。えーと、フクくん、それは野菜ですよ!


「本当に全員と結婚するの?」

 母ちゃんは信じてくれない。この長男は一度もモテ期が来ないままだと思っている。


「これが異世界ライフってもんなのよ…自分でも信じられないもんな。でも、近い将来、結婚はすると思うよ」

 孫の顔を見せるとか、考えただけでもむず痒くなっちまうな。


「家の裏も結構生えてますよ」

 日当たりが悪い場所だけど雑草は強いんだね。日本の片田舎でエルフが草むしりとは、しゃがんだ背中を眺めつつ蚊避けの線香を焚いて持っていく。

「何ですか?」

「この世界には人の血を吸う小さな虫が飛んでるもので…この煙で殺します!」

 ナターシャが言うには、あっちに吸血昆虫はいないそうだ。


 小一時間もすると庭の雑草はあらかたなくなった。

 汗だくになった女の子達を風呂に入れようかと思ったけど、ちょっとキャパオーバーだし、車二台で三分の所にある温泉に行く事にした。


「うわー、広ーい」

 などと言うのを壁の向こう側に聞きながら、こっちは弟と二人で湯につかった。


「お前も異世界に来れば?」


「その内な…ふぅ……行ったらモテるもんでもないだろ?」


「どうだろ、お前もモテるような気はするんだがなぁ」


 近所の爺しか入っていない湯はヘンな出汁が出ていそうだけど、下じゃ女湯と繋がっているからプラマイゼロって感じだよね。まぁ、源泉かけ流しだから気のせいだけど。






 アンバーに戻って本屋に行く。古ぼけた雰囲気のある佇まいが専門店って感じになっている。

 中世くらいの世界なので紙の本はかなり貴重品なのだ。


「ごめんくださーい」


「いらっしゃい」

 奥から渋い池田秀一みたいな声が聞こえてくる。


「指輪の絵本を探してるんですが」


「あるよ」

 真新しい本が出てくるかと思ったら、随分古ぼけた本が出てきた。


「手に取っても?」


「どうぞ」


 チコリの物とは絵が違うから、最後のページを見てみると描いた人の名前は違っていた。

 内容もかなり違っていて、僕や関係者と思われるキャラクターは出ていなかった。


「指輪の物語は全部同じ内容なんですか?この本は前に見たのと違うようなのですが…」


「うむ、元が伝承なのでな、口伝えによって少しづつ変わってきているな。それなんかは一番出版されとる物だし……えーと、どこにやったかな………おお、これこれ!これなんかは個人で出版されたとする物で、指輪のその後の話が描かれている珍しい物だ………買うかね?」

 店長さん、眉間に傷があるなぁ、と思いながら、その本を手に取る。


「あれ?このタッチは……」


 最後のページを確認する。



「早苗…」

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