84話
「それで、皆さんはどちらにお住まいなんですか」
「特に決まってないニャ」
リーダーらしき娘が言う。え?ホームレスなの。
「あの…それって住む家がないって事でしょうか?皆さん、年頃の娘さんですよね」
「んー、人間に拾われていく奴はいたかニャ。可愛い模様だと拾われるのニャ」
拾われる?奴隷みたいなものなのかな。こんな娘達が奴隷扱いとは…。
「えーと、遅ればせながら、僕はケンジといいます。ここの立ち飲み屋を手伝っていて、酒製造などもやっています。店が拡張されたので従業員を募集中なのですが、とりあえず皆さんのお名前を教えてください」
「困ったニャ…ニャー達は名前はないのニャ…」
「あのね、この子達は野良ちゃんだから、お名前はないんだよ」
おお!チコリが久しぶりに長く喋った!
「野良ちゃん…て、どういうこと?」
その場で首を傾げるおっさんに幼女。野良と言われた猫人族の娘達も何故か首を傾げている。
「あのね、変身したの。ピカーって」
「そうなのニャ、猫から人に変身できるニャ」
「ケンジにはよくなでてもらってたニャ」
「酔っ払ってベンチで寝てた時、温めてやったニャ」
「こっちは暖かくていいのニャ」
「あの女について来てよかったニャ」
イマイチ納得いかないが…この娘達は猫なのかな。
「皆さんは猫なの?」
「はいですニャ」
「て事は、料理なんかはできたり…」
「しませんニャ」
「配膳は…」
「できますニャ!」
「そうですか…そうですよね……猫ですもんね、猫。あー、住む所はどうしますか?うちにはまだ部屋があるからうちに来ますか?」
「いいのかニャ?」
「いいですよ。但し、皆さんには料理を覚えてもらいます」
「頑張るニャ!」
そうと決まったらラムに紹介しておかないとな。
「ラムー」
「何?今ちょっと手が離せないんだけどー」
皆を連れて店内へ移動する。チコリは勇者装備を隠してくるそうだ。
「新しい従業員を紹介します…そうだ、名前がなかったんだ」
「何よそれ」
「あ!この人ですニャ。足下に輪っかが出てきて、それに入ると違う所に来れたのニャ」
「えっ?それ、どういうこと!」
「このお姉さん、会うといつもなでてくれてたニャ。だから嬉しくてついて行ったら、ここに来てしまったのニャ。知り合いもこっちに来たから集まって遊んでたら、チコリが変身ごっこをしだして、猫も変身してって言うから猫は無理ニャよねー、とか話していたんだけど、五人とも変身しちゃったのニャ」
「ラム、お前ってばあっちとこっちの行き来で猫を連れてきちゃってたみたいだな。力も発揮できる様になってるし、責任を取って名付けて部下として教育してくれたまえよ」
料理以外は全てをラムに任せよう。連れてきた本人が責任を持ってやらなきゃね。
この娘達はフクより歳上に変身できるみたいだけど、何故かフクをお姉さまって呼んでいた。
「名前ねぇ…うーん……」
ラムが悩んでつけたのは、リーダー白猫『バニラ』、気だるい黒猫『チョコ』、おませぶち猫『モカ』、お転婆三毛猫『ラッテ』、妹的ハチワレ猫『ミルク』だった。僕のよりセンスがよろしくていいんじゃない。くっ。
ちな、見た目は16歳くらいだ。
「まぁ、皆さん可愛いわぁ。私はホール担当のリリィよ、よろしくね」
「料理担当のナターシャだ。皆の中の誰かに料理のセンスがあると嬉しい。よろしく頼む」
「フクは運び人ですニャ。よろしくなのニャ」
「チコリはチコリです。猫さん大好きです」
「後は隣の店にマイヤーズさんておじさんもいるからね」
「お揃いのメイド服を着ると、これはかなり可愛いわね!ん?何でチコリちゃんが真ん中に立つの?え?勇者だから?そう、そうよね、ははっ」
何納得してんだよ。
「それじゃあ、猪肉を串打ちしていきましょう」
さて、仕込みをさせて誰が器用か見てみるか。
こうして、立ち飲みチコリに新しいメンバーが増えたのだった。




