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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第七章 ミスリルの約束
79/230

79話

「そうでしたか…記憶がない期間にそんな事が。母上の誕生日プレゼントを買いに、お忍びで街へ出たのが狙われたんでしょう。それから一年も経ったんですか……」


 しかし、この王子も良く飲む。エールの後のビールに感激し、アンバーエールで撃沈されたみたいだった。日本酒も勧めてみたけど熱燗が好みのようだった。


「しかし、王都へ戻るのが嫌になるな」

 酒はヌルいエールと葡萄酒しか飲めなくなるからだ。


「王都でも醸造してみたらいかがですか?設備はそのままで材料だけ追加すればいいだけですから。明日にでもレシピをお届けしますよ」


「そうか!それは助かる。ケンジには何から何まで世話になったな」


「いいんですよ、同じ飲ん兵衛同士じゃないですか」

 王様と一般人がかたい握手をする。




『それじゃあ、いっくよー!』

 外では魔法少女のライブが始まろうとしていて、酔っ払った冒険者達がワーワー騒いでいて、いい感じに盛り上がっている。


「フクもチコリもサラの歌を聴きに行くか?」


「行くニャ!」「ん!」

 両腕をブンブン振り回して、こちらも興奮してますねぇ。


 タタタタタタタタタタッ、スタッ!


「フクとチコリもステージに立っちゃったし…」

 バックダンサーをやるのね…うわー、しかも上手いし。


 流石、魔法少女。曲ごとに衣装が変わっていく。

 ラムはリリィ、ケイティと三人で飲み物を売って歩いているし、王様は聖剣を抜いて演武しだした。


「これがまたサラの歌と相乗効果たっぷりじゃないの…」


 聖剣は淡く光を放ちつつ光跡を残す。その光跡は見とれるほど綺麗だった。


サラは魔女っ娘な歌を次々と歌っていき、途中で何故かマライア・キャリーばりにHEROを歌い上げたのだった。




「お疲れ様。はい、お水」


 水を一気に飲み、落ち着いた魔女少女のサラを裏に連れて行き、そこで変身をといてもらう。


「名前、どうする?建前、サラじゃない事にしたいし」

 正体はバレバレでも、変身した後に名前はあった方がいい。


「そうですね、どんなのがいいですか?」


「うーん、魔女少女…魔女少女……」


 その時、同じくステージを終えたチコリ達が裏へ来た。

「魔女少女チコリ、かなぁ。何となく」

 この立ち飲み屋もチコリなのだから、チコリがしっくりくるといいますか。


「何となく、ですか…でもチコリちゃんは可愛いですし、お店と同じ名前にするのもいいかもしれませんね」


 こうして名前は決まってしまった。






「マーズくんとは結婚しません!」


 えーと、マーズくんていうのはルナちゃんの弟さんで、ブラックドラゴンなのですが…その、お姉ちゃん好きがこじれて、私が求婚される羽目になっているのでした…。


「うう…裸を見られたのに……男だって恥ずかしいんだぞ!」


「そういうあなたはお姉ちゃんの裸を覗いていたでしょ!」


「か、家族だから問題ないよ」


「それは屁理屈です!もう!」


 お母さんもお父さんも笑ってるだけだし、私にはケンジさんがいるのっ!

 それに指輪ももらったし。シンプルだけど綺麗な指輪よね。


「それじゃあな、明日も来るから」

 マーズくんがこんな夜中に出て行こうとする。


「どこに行くの?」


「腹も減ったし、それに眠くなってきたしな。狩りをしてその辺で寝るよ」


「は?どうしてそうなるのよ!泊まってったらいいじゃない!それに、ご飯くらい出すわよ、ね、お母さん!」


「そうね、アイリスがお世話したいみたいだから泊まっていきなさい、マーズくん」


「お母さんっ!」

 お風呂に入ったばかりなのに汗をかいちゃったじゃない。もう。


 こうして、マーズくんはご飯を食べてくちくなって寝てしまいました。

「私のベッドで!」


 こうなったらお母さんと一緒に寝るからいいんだもん。


『……ん…ギシギシ……ぅうん……』


「…」

 仲良しさんになってるぅううー!

 仲良しさんの時は部屋に入っちゃ駄目なんだよね。仲良しさんて何なんだろう。

 タイミング悪過ぎ、諦めて一緒に寝るしかないか。




「ふふ、寝顔は可愛いんだから…」

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