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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第七章 ミスリルの約束
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78/230

78話

 眩い光がおさまると、そこには露出の多いカラフルな衣装を着たサラがいた。


「魔法少女って事ですかね」


「ほ、ほら、ステッキもあるんですよ!」


『お目付け役のちくわと』『ささみでーす!』


「うわっ、ちくわとささみが浮いてるっ!何だこれっ!」


『父ちゃん、ちくわとささみは人間の言葉が話せるようになったみたい』『そうなの、何でか分からないけど飛べるようにもなったの』


「ケンジさん!これって、これって!」


「そうだね、ちくわとささみの力が発揮しちゃったね。とりあえずサラは一年間、アイドル活動に励むといいと思うよ。この世界初のアニソンアイドル。時々はあっちでも歌ってきたらいいかもね……はぁ…しかし、ベタで正統な魔法少女だねぇ。おじさんはこういうの大好きだから、ちくわとささみもサラと一緒の時は妖精って事にしときなさい。魔法少女と妖精は一括だからね」


『『はーい』』



「ご主人様の視線がエッチぃニャ」






 ラムと相談して、サラは立ち飲みチコリの店頭で毎週末にライブをやる事になった。

 一部の冒険者達にアニソンは人気になっているらしい。何故なら、この世界の音楽や歌は貴族や金持ちの商人など、限られた者達の娯楽でしかなく、庶民が気軽に聴けるようなものではないからだ。そんな娯楽が気軽に楽しめるアイドルが庶民の娯楽になる。集客面でも凄いコンテンツになりそうだ。


 ちょっとした組み立て式のステージに、魔道具でカラフルにライトアップ。色の着いた紙テープやペン型の魔道具ライトなど、着々と準備し始めているのだった。


「何か恥ずかしいですけど…私、頑張ります!」

 変身後はお約束で姿が少し変わり、知り合いでも認知しにくくなるように魔法がかけられていて、胸を張るとたわわがぷるぷると揺れて、目のやりどころに困る。フクはジト目でブツブツ言ってるし。


 そして、サラはアニソンカラオケバーで働いていただけあってアイドルもののアニメも観ていて、その辺の振り付けも研究しているようだし、もしかしたら化けてくれるかもしない。


 とにかく、この日はそそくさと仕込みを再開させて、何とか口開け前に串の仕込みを終わらせられたのだった。






「ごめんください」


 立ち飲み屋には似合わない挨拶で入ってきたのは、偽ケアスこと王子のベックスだった。ルナの話は本当だったか。


「ここへ行けとルナに言われて来たんだけど」


「は、はい!奥でお待ちください」

 王子を奥に連れていき、椅子を出して座らせておく。後は王様を呼んでくるだけだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、あ、すいません、王様に急用なんですが…」

 既に顔見知りの僕はすぐに王様のいる部屋に通された。



「何事だ、そんなに慌てて」


「戻ってきたんですよ!王子様が!」


「そ、そうか!ようやく戻ってきたか…そうか……うむ、わざわざ伝えに来てくれて感謝する。早速赴く事にしよう」

 王様と護衛を連れ立って立ち飲みチコリへ戻る。



「ベックス!」


「父上!」


 二人は互いにガッシリと抱き合い、王様は涙する。王子は何故に父親が泣くのか分からないみたいだ。

 そうなのだ、ベックスにはバッカスが乗り移っている時の記憶がないのだ。つまり、神からの完全なる支配下にあり、ベックスの魂は時が止まったままだった。まぁ、この辺はルナから後々聞く事になるんだけどね。


「そうか、あの少女から言われるままにここへ来たのか。どうだ、身体の調子は」


「どこも悪くありませんよ、父上。強いて言えば少しお腹が減っていることくらいで」

 ベックスのお腹が鳴る。

 柱の陰から覗いていたチコリとフクがタタタタタッと走ってきて、王子の周りをグーグーの歌を歌いながら回っている。


「どうぞ、猪串盛りとエールです」

 通常よりも多めに焼いてもらい、エールも二人分つけた。


「これは美味しそうだね」


「うむ、この店の串焼きは絶品だ。そして、酒はその上をいく。主、ここにいる客にエールをご馳走させてくれ。よければ従業員達もここにいるベックスが戻ってこれた事を祝って欲しい」


 客達から歓声が上がる。

 アンバーの住民には王様は顔バレしているので、王様の支持率は右肩上がりだ。


 ラムはニコニコしながらエールをどんどん注いでいるし、ナターシャは猪串を次つぎと焼いていく。リリィとケイティは客の合間を縫うように移動して給仕する。チコリとフクはグーグーの歌第六章まできていた。そして、ちゃっかりとマイヤーズさんもジョッキを持っている。


「息子との再会に!乾杯ッ!」


 王様が言うやいなや、ジョッキから琥珀色の液体がなくなっていく。


「はっはっは!この店の客は飲ん兵衛ばかりだな。いいだろう、今日は私のおごりだ!思う存分飲んでほしい!」


 酒の飲めないチコリとフクがチラチラ見るので、ノンアルコールのシードル(りんごの発泡酒でサイダーの語源)を渡す。ここは雰囲気だけでも同じ琥珀色がいいだろう。二人はニッコリとしてグラスに口をつけている。


 賑やかな雰囲気は更に外に伝わり、屋台が次々と移動してきていた。商魂たくましくて何より。

 向かいの中華酒場も店先で点心を売り出した。オハラさんに事情を説明すると、点心を沢山差し入れしてくれて、ナターシャはそれを食べて何か閃いたようで、明日からの新メニューに期待がもてるね。






 そして、そんな賑わうアンバーに眩い光とともに空から魔法少女が降り立った!

 ナイス、サラ!

 こうして魔法少女降臨祭は開幕したのです。

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