表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第六章 特異点「立ち飲みチコリ」
70/230

70話

「ありゃ、ドラゴンだな……しかも、とてつもなくデカイ。ルナ、お前の関係者だろ、アレ。どうにかしろよ」

 目を瞑っていたルナは、腕を組んで立ち上がり目を開いて空を見上げた。キッと睨む。


「ザシャ、ちょっと待っててね」

 つま先立ちで首に腕を回しキスをして空高くジャンプした。

 脚力…てな訳ではないんだろうなぁ。あんなにジャンプで行けるかっ。




「随分と早かったじゃない」


「姉ちゃんが人間になんか興味を持つからじゃないかっ!」


「別に人間を好きな訳じゃないわ。その辺はアンタに言っても分からないでしょうけど」

 アタシは『弟』の首に跨り更に文句を言う。

「いい加減に姉離れしなさいっ!」


「くっ…ボクは姉ちゃんが心配なんだ!ドラゴンはドラゴン同士で仲良くしていればいいだろっ!何であんな下等生物がいいんだよ」


「だから、それがそもそも誤解だって言うのよ。私が追いかけてるのは神よ。依代が好きなんじゃないわよ」


「ボクは姉ちゃんが好きだ!」


「んもぅ!アンタはシスコン過ぎ!」

 弟の頭をポカポカ叩く。これが効くのよね。


「姉ちゃん、痛い、痛いよ!分かったから、一度下に降りるから!」

 痛いはずはないのに、この攻撃はバカな男に効くのよ。覚えておいて損はないわよ?


 弟は身体を小さく変化しつつ地上に降り立った。

 トダ村の皆は口をポカーンと開けてるけど、舞い上がった砂ぼこりが入ってしまうわよ。


「アンタはとりあえずドラゴンのままでいなさい、後、余計な口を利かないこと、いいわね」

 巧くザシャと結婚式を挙げてるんだから、ここで邪魔されたらたまったもんじゃないわ。




「ザシャさんは前の名前はなんて言うんです?」


「俺は伊達博和だ。今は姿も歳も違うがな」


「しかし、ルナと結婚式を挙げてるんだから驚きましたよ。何かドラゴンも邪魔しに来てるし」

 ルナと同じ黒いドラゴンは小さくなって、ルナの周りを飛び回っている。


「ケンジさんは日本人のまんまなんだな。ま、一回死んだ俺とは違うんだろうけど」


「なるほど、ザシャさんは転生ってやつですね。病気か何かですか、その…原因は」


「ははっ、酔っ払って階段から落ちたんだよ。それでポックリ」


「それは災難でしたね…何はともあれ、こっちの世界もいいところですから、新婚生活を楽しんでくださいね」

 近くからビールを取って、彼のジョッキに注ぐ。


「酒も美味いし、ルナも可愛いし…それだけは良かったよ」

 照れながら頭をかくザシャであったが、中身が日本人と知ると更に犯罪臭がプンプンとしてくるなぁ。あー、でも、アイリス相手だと同じ匂いがしてしまうか。


「このビール、僕が造らせたんだよ。それまでは酸っぱいエールをヌルいまま飲んでてさ、飲ん兵衛にはツラい地域だったんだよ。今は飲んだと思うけど日本酒も造ってもらってるし、近くの街に立ち飲み屋を出したから、落ち着いたら飲みに来てよ」

 そんな世間話をしているとようやくルナが戻ってきた。


「ケンジ、ちょっと来なさい」

 スーツの裾を掴んで移動し、ザシャと少し距離を取る。


「ザシャがバッカスの新しい依代よ。彼もアタシを気に入ってくれてるから邪魔しないで頂戴ね。明日になれば王子は元に戻るんだから」


 やはりそうなのか。しかし、伊達の魂はどうなるのだ。転生できた途端にまた死ぬのと同じ様な事が起きるのなら、それは悲劇なんてものじゃないぞ。


「ザシャは面白いわね。ケンジと同じ匂いがするわ。ま、バッカスが憑依しても、これなら彼もシンクロして自我はそのまま残るから楽しくやっていけそうね」


「そうか、それを聞くまでは単なる生け贄みたいなものになるのかと心配だったけど、それなら大丈夫だな。それより…ゴホン…ヤツはロリコンだぞ」


「ロリコンて何かしら」


「お前みたいに小さくて可愛い子しか愛せない男の事だよ!」


「えっ!」

 何赤くなってんだよ。そんなたまか。


「今までどうだったのかはあえて聞かないけど、今後は夜の生活に注意しとくんだな。激しいぞ、きっと…」

 言うやいなや身悶えするな。


「そ、そそそ、添い寝くらい上手くやれるわよ!」


 あー、そうなんだ。見かけによらず純情であったか…が、頑張れー。応援することしかできん。

「そこに愛があればきっと大丈夫!じゃあな!」

 そろそろイシカワさんを探さないと。串焼きはどこでやってんのかな。


 しかし、トダ村は男性は多いけど、年頃の女性が少ないな。アイリスくらいの子は見かけるけど、やはりまだ結婚できる歳じゃないってことか。

 香ばしい煙が見えてきた。

 どんな串が焼き上がっているのか、久しぶりにわくわくしてきたな。うっわ、猫達も食べてるし。何ちゅー贅沢なやっちゃ。




「ま、まさかそれは……」


 そこには、日本じゃご禁制のアレがエッジを効かせて光り輝いていたのだった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ