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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第六章 特異点「立ち飲みチコリ」
66/230

66話

 目が覚めると生きていた。


 目に映る景色は最後の記憶とは違い、随分とだだっ広い野原だった。

 その晩は秋晴れで気持ちよく、ついついハシゴ酒になってしまい、かなり飲んでもそれほど酔わず。その結果、時間差での酔いが足下をふらつかせたのだった。


 二階の酒場から降りる階段を一気に転げ落ちる俺。酔っていて走馬灯現象が見えたかよく分からない。

 確実に色んなところをぶつけているはずなのに、酔いで痛みは感じない。それどころか凄くスローモーションだ。そして…視界が暗くなっていく……………。






「だから!もう、聞いていなかったのかしら」


 目の前にいる少女は何を言っているんだろう。理解に苦しむ。しかし、白いワンピースを着て可愛らしい女の子だな。俺はロリコンなので少女はどストライクなのだ。


「アナタは残念ながらお亡くなりになりましたの。でも、同時に選ばれし者だったの。だから別の世界に転生させるの」


 死んだ?

 俺が?


「あー、階段を踏み外したのか俺」


「伊達博和、アナタはよっぽどの酒好きだったの。丁度よい世界が管轄にあるから、そこへ転生してほしいの」


「転生?生まれ変われるんですか?」

 人生のやり直しか。ああ、親孝行もしないままに別の人生って。


「ちょっと待って……ふむふむ、なるほどぅ。うんうん。二十歳ね、そう……待たせたの。アナタは二十歳からリスタートしてもらうの。性別はそのまま男なの。心配しなくてもなんとかなるの……多分」



 虹色の光に包まれて服が分解していく。謎の光が股間を覆っていく……………。






「ん………ここはどこだ……」


 気が付くと椅子に座っている。

 さっきまでの出来事は覚えているから、ここは別の世界ってことで間違いはないと思う。


「何言ってんだ、結婚を前にして怖気づいたんじゃねーのか」

 目の前のチャラそうな西洋人が言うが、結婚だと?誰の結婚だ。


「結婚…?」


「あんな若い娘と結婚たぁ、趣味を疑うが、まぁ、お前だもんな。村長さんも久しぶりの結婚式って事でかなり張り切ってるぞ。つーか、しゃんとしろよー、今日は村中でお前を潰すつもりでいるんだからな」


 情報が多すぎて頭がついていかない。

 …俺は結婚するのか……。


「俺は誰なんだ?」


「こりゃ緊張しすぎだな、ザシャ」


「ザシャ?名前か?」


「おいおい!どーしちまったんだよ!怖気づいたのかっ?ちょっと白目で見られるくらいどーって事ないだろ!」

 何かやらかしてしまった男になったのだろうか。


「…鏡はないか……」


「鏡なんて高級な物、ある訳ねーだろ。ホントにどうかしちまったんだなぁ。親友として情けねーよ」

 そうか、この男は親友…死ぬ前の俺には考えられないジャンルの人間だな。


「俺はザシャ。そして、結婚式当日。相手は若い娘…相手の名前は?」


「ルナだよ、ル、ナ!小さいけどしっかりした子だぞ」


「ルナか……えっ、小さい?」


「お前の趣味はホント分からねーな。亡くなった親父さんやおふくろさんが生きていたら何て言うか。しっかりしてくれよ!それじゃ、こっちも準備があるからな、時間まで少しあるから頭を冷やしとけ」


「あ、ああ、分かった」


 本当に別の世界でリスタートする事になったのか。あの少女は神様なのかな。くそぅ!結婚するならあの子がよかった!


 しかし、のどが渇いたな。何かないのか。

 部屋を見渡すと棚がある。そこには陶器のジョッキが置いてある。隣には何かが入った瓶。ラベルには赤星。


「赤星ねぇ、ビールみたいなラベルだな………こいつは…ひねったら簡単に開いた。クンクン…見た目どおりにビールだわ、これ」


 常温でもとりあえずいいや。そのまま口をつける。


「美味い……」


 のどを潤しゆっくりする。

 結婚かぁ、ザシャって男はどんな仕事をしているんだろうか……。






「チコリー、この子達どうするの?」


「ん!」


「家に帰るから大丈夫なのか。ならいいや。このままじゃ口開けできないもんね。チコリに一任するからよろしくね」


「ん!」



「ラムー、日本酒の配達ってまだ?」


「今日は来ないわよ」


「あれ、そうなの?…少し残りはあるからそれで回すか」


「それよりケンジ、汗臭いわよ」


「ハハッ、チコリを台車に乗せて走り回ったからな。着替えてくるよ」


「そうしてもらえる?流石に客商売だからね」




「着替え、スーツしかないや……久しぶりのサラリーマンルックでいきますか」

昨日は更新できなくてすみませんでした。

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