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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第三章 立ち飲みチコリへようこそ
27/230

27話

 忙しくて営業中は片付けられなかった洗い物を終えて、店内を掃除する。

 いつもの様にフクと一緒にナターシャを宿へ送って行ったら日付が変わっていた。

 今日は面接だな。

 帰宅したら、とりあえずゆっくりと風呂に浸かって休むとしよう。思いがけなく疲れているし。



 ベッドの上で気分よく目が覚めると、いつもの様にフクが抱き付きながら寝ていた。

 再会してからというもの、どんどん猫に逆戻りしているような気がする。

 フクを起こして、朝食を食べる。僕が昼前に出ると告げると、フクは宿屋のチコリの所へ行くと言うので、途中まで手を繋いで一緒した。


 大家のマイヤーズさんに挨拶をして少しばかり世間話をする。マイヤーズさんは日本酒に興味があるようで、できた暁にはここでも売る事になりそうだ。

 最近のマイヤーズさんの店は、酒のつまみになる乾物なども置くようになってきていて、その内に角打ち店としてライバルになりそうで怖い。


 一番乗りなので店内を掃除をしていると、修道院から新エールの樽が運ばれて来た。早速、出来を確かめる為にサーバーに繋ぐ。作業を終えたら何故か隣にはマイヤーズさんもがいるんですが。


「バッチリですね」


 二人して笑顔で味見を終えた。

 足も軽やかに店の奥へ消えていくマイヤーズさんを見ながら、キンミャーに漬け込んでいた梅が入った瓶をチェックする。こっちの具合もよさそうだ。今日からメニューに載せようかな。


「おはようございます」

 約束の時間になって、ナターシャが出勤して来た。

 待ち合わせの時間より少し早く来ちゃうのは日本人だけだね。


「おはよう、時間通りだね。面接の人達もそろそろ来ると思うよ」

 話していると早速一人女の子がやって来た。


「あの、面接で来た者ですが…」


「はい、お待ちしておりました。中にどうぞ」


 僕とナターシャ、その娘の三人で店内へ入る。


「どうぞ座って」


「はい」


「えーと、履歴書は預かってるんだけど、確認の意味合いもあるから、まずは名前から教えて頂けますか」

 履歴書は二人分預かっているので、どちらの娘なのかは名前で確認しないと分からない。


「ケイティです。よろしくお願いいたします」


 身長はラムより低いかな。茶色目の癖っ毛でシンプルなワンピース姿だ。


「店長代理のケンジです。店の都合で最低でも二週間は働いてもらいたいんだけど、どうですか?」


「はい、大丈夫です」


 受け答えもはっきりしていて問題ない。


「そうですか、それは助かります。見ての通り立ち飲み店の給仕がメインですが、洗い物や料理の盛り付けなど、臨機応変にやってもらう事になります。それて、出来れば今夜から働いてもらいたかったんですが」


「はい、定食屋さんで働いた事もありますし、仕事内容は大丈夫ですし、今夜からでも働けます」


「僕からはこんなところかな。ナターシャは何か質問ある?」


「そうですね。忙しい時は料理の盛り付け以前に材料の下ごしらえも手伝ってもらいたいのですが、どうですか?」


「家で自炊はしていますが、お店で包丁を持った事はありません」


「料理をしているなら大丈夫ですよ」


「んー、それじゃあ決まりかな。メニューを覚えてもらって、後はお給金や勤務時間などはこれに書いてあるから確認して下さい。質問、要望があればいつでも言って下さいね。口開けが十七時だから三十分前には集合して下さい」


「それでは一度、家に戻ってきます」


 ケイティの面接はあっという間に終わった。

 面接は初めてやったけど、変な緊張も出なかったな。


「あと一人はどんな人かな……」


 黙って待つのも時間の無駄なので、煮込みでも作って待っていよう。




 そして約束の時間から遅れる事一時間、女の人が駆け込んで来たのだった。時間にルーズな人は使いたくないんだけど……。


「ごめんなさいっ、ケンジさんはいますか」


「ケンジは僕ですけど…あれ?貴女は…」

 見覚えがあった。


「ハァハァハァ……」


「はい、お水をどうぞ」


「あ、ありがとうございます…………あの、紹介した二人の内、マリアさんが駆け落ちしてしまいましてっ!」


「はぁ、駆け落ちですか?」


「行方不明ですので、急遽私が派遣されました。よろしくお願いいたします」


「ああ!昨夜のエールを美味しそうに飲む人!ですよね!」


「えっ?あっ、はい」


「ああ、やっぱり。あんなに美味しそうに飲む人は初めてだったんで覚えてたんですよ」


「いえ、そうじゃなくてですね」


「?」


「そうじゃなくて、私はギルドでこの件を担当したリリィです!」

 彼女は胸ポケットから眼鏡を取り出してかけた。


「…あっ」


「分かっていただけたようですね。そういう事です。責任を取って私が代わりにやってまいりました」


 聞くと彼女は大の酒好きで、もしかしたら駆け落ちするんじゃないかなぁ、と、こうなる事を分かっていてマリアさんを推したそうで……かなり計画的なのでした。そこまでして働きたいと言われれば光栄ですけどね。


 こうして短期バイトのメンバーが決まりました。

昨日のうちには帰宅できなかったので今朝の更新です。

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