表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第三章 立ち飲みチコリへようこそ
PR
23/230

23話

 次の日、大家のマイヤーズさんに人手が足りないという話をしたら、斡旋ギルドがあるとの事。所謂メイドさんなんかもそこから派遣されたりするらしい。いい事を聞いたので、今日は朝から斡旋ギルドへ向かっている。


 アンバーには冒険者ギルドもあるようで、立ち飲みチコリの客にも確かに冒険者はいる。冒険者ってどんな仕事をしているんだろうか。しがない酒場の店員には計り知れなかった。


 マイヤーズさんの店を出てからか十分。

 斡旋ギルドはこぢんまりとそこにありました。

 白い壁に緑の蔦がからむ建物のドアを開いて入って行くと、正面に受付があった。ギルドの受付は会社というより役所って感じだな。


「斡旋ギルドへようこそ。本日は何の御用ですか」

 眼鏡をかけた髪の長い女性が受付だ。


「こんにちは。こちらで従業員の斡旋をしてくれると聞いて伺ったのですが」


「ええ、いろんな職業全般に派遣をやっております。どのような職業ですか?」


「酒場なんですが、短期で働いてくれる女性を二名探しているんです」


「それでしたら名簿からピックアップしますので、そちらの椅子におかけになってお待ち下さい」


 午前中だからなのか人はまばらだ。

 手持ち無沙汰なので壁に貼ってある求人票を見る。ずーっと気になっていたんだけど、この世界は文字も言葉も日本語なんだよね。なので読めちゃうそれには、農作物の刈取りから鍛冶手伝い(オジサンはちょっと笑ってしまった)、引っ越し作業と色々あるんだなと感じられて、異世界にもニートっているのかしら。

 あー、こっちでもあるわ、軽作業。これには騙されちゃいけない。簡単で楽な作業の事じゃなくて、手作業の事だからね。


 ラムとサラは最低でも二週間は戻れないらしいから、いい人を紹介してくれるといいなぁ、と思っていると、

「見繕ってみましたので、あちらの席でお話させて下さい」

 受付のお姉さんに連れられて、フロアの角にある席へ移動した。フカフカのソファに座らされ、お茶なんかも出してくれたり至れり尽くせりだ。


「申し遅れました。当ギルド、受付兼斡旋アドバイザーのリリィと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


「あ、ケンジです。立ち飲みチコリの手伝い……アドバイザーをやっています。どうぞよろしくお願いいたします」

 立ち飲みチコリと言った途端、リリィさんの眼鏡がキラっと光った気がした。


「それでは早速ですが、こちらのサラさんなんかは生活魔法でも水魔法かわ使えますし、お薦め致します」


「サラさんて、サラさんなのかなぁ。水魔法が得意な娘ですか?それならもう、うちで働いてもらってるんですけど…多分同じ人ですよね?」


「あら、そうなんですか。ご自分で仕事を探せたんですね。それは良かった」


「まぁ、そうなんですが、そのサラさんと店長が休暇を取っていまして。最低でも二週間は人手が足りなくなるので困っているんですよ」


「そうでしたか、それでしたら…」


 その後十人くらいの中から二人を選び、明日、店で面接をする事にしてギルドを後にした。


 そして、帰りに噴水の前に来た。

 昨日の事も少しは気になっていたし。

 子供達がはしゃぎまわり、それを見守る親達で結構な賑わいだ。

 昨日の場所を見ると、今日も花売りの娘はそこにいた。


「やぁ、今日も頑張っていますね」


「あ、昨日のお兄さん…昨日はありがとうございました。助けていただいた上に花まで買っていただいて。あの、これお釣りです」

 手には銅貨が数枚握られていた。


「いいんだよ、それより少し話し相手になってくれないかな」


「はい、私なんかで良ければ」

 幼い少女の笑顔が眩しい。


 実のところ、この世界の事には詳しくない。

 ナターシャはエルフの村以外の知識はあまり無いみたいだし、フクは中身が猫だし幼いから、知識も少ないし。


「僕はケンジって言って、商店街の酒場で働いているんだけど、この街に来たばかりでね、まだ知らない事が多いから色々と教えて欲しいんだ」


「私はアイリスです。この街から一時間ほど歩いた所にあるトダ村に住んでます」


「え、毎日、一時間も歩いて来てるの?」


 それがどうしたの?みたいに首を傾げている。この世界では基本歩きだから一時間くらい余裕なんだろうなぁ。


「ああ、そうね、歩きは基本だもんね。それでもここまで来て花を売るのは大変そうだけど」


「うちは農家ですが作物の儲けが少なくて、私も栽培した花を売りに来ているんです。昨日までは何事もなくやれてたんですけど急に絡まれて……」


「どこにでもいるよな、奴らみたいなの。また来たら追っ払ってやるからね。ところでアイリスさんの家では野菜も作っているのかな」


「うちは花と…この辺では見向きもされない…米という作物を作っていますけど、それが美味しくないから売れなくて……」


 はい?米?米だって!?マジか!


「ちょ、ちょっとその話、詳しく聞かせて!」

 興奮の余り、肩を手で掴みかけたとたんにスルッと避けられて、前屈みに噴水の水面へ突っ込んでしまった。水飛沫が綺麗な虹を作る。


「あっ、ごめんなさい…男の人に慣れてなくて」


「まさか避けるとは…」

 シャツを脱いで絞りながらベンチへ移動した。

 周りのお母さん達の視線が痛い……。


「アイリスさん、僕に米を売ってくれないかな?」


「両親は喜ぶと思いますけど…米ですよ?」


「米だから買いたいんです。ご両親にも話をさせていただきたいんで、家に寄って着替えさせて下さい」


 和食が作れるようになればご飯はなくてはならない食べ物だ。それに、現地生産の日本酒が手に入るようになれば、酒発祥の地として誇れるものが更に増える。


 サッと着替えて彼女の荷物を持つ。花は今日も全て買わせていただいた。


「それじゃあ、アイリスさんちへレッツらゴー!」

22時37分に加筆修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ