20話
私は魔法使いより剣士になりたかった。
木の枝を振り回して、男の子に混じって暗くなるまで遊んだり、剣士になる練習は楽しかったな。
男女の身体的な違いが出てきた頃には剣の腕は全く伸びなくなっていて、代わりに水魔法が使えるようになったけど。喜んだのは家族だけ。そりゃあ、水魔法使いは食いっぱぐれないもんね。
「魔法かぁ…」
攻撃魔法の上級レベルが使えないと、単なる生活魔法の便利屋でしかなくなるのが辛いところ。小さい頃から目指していた冒険者とは正反対の仕事しかなくて困ります。
「サラは冒険がしたいのに…」
大きくなると武器や防具に身を包み、幼馴染達は町を出ていきました。
羨ましい思いと焦りばかり膨らんだけど、うちには下に弟が二人、妹が二人もいるので、両親は私を遊ばせている暇はない、と口を酸っぱくして言うのでした。
この頃から水魔法で働き出したので、魔法のレベルは意に反してどんどん高くなっていきました。
サラはいけない子です。
剣を振れない憂さ晴らしから、親のお酒を隠れて飲み始めてしまいました。
初めて口にしたお酒は甘目の葡萄酒で、あまりの美味しさに一本空けてしまいました……。なので、他のお酒もきっと美味しんだろうな、と、そう思えて興味が湧いてきたんです。
そんな時期に、商店街の雑貨屋さんに新しい店員さんが入りました。
この店は雑貨屋さんなのにお酒が酒屋さんよりも置いてあります。お酒好きのこだわるオーナーさんなので、こんなに品揃えがいいのですね。葡萄酒も他の街の珍しい物が多く置いてあるようでした。
「葡萄酒、お好きですか?」
例の店員さんが聞いてきます。
近くで見ると黒髪で瞳は茶色と変わった顔をしているけど、見つめられると何故だかドキッとしてしまいます。
「はい、甘いのが特に」
ドギマギしながらうつむき加減で応えます。
「それじゃあ、これなんかオススメですね。よかったら試飲してみて下さい」
樽から注がれた葡萄酒は赤くありません。
「白葡萄はこの辺じゃ見かけませんから珍しいでしょ?どうぞ飲んでみて下さい」
カップの液体を香ってみると、いつもの葡萄酒とは違う香りがします。口を付けると酸味はほとんど無く、豊かな甘味がいっぱいに広がります。
「とても甘くて美味しい……」
「そうでしょうとも、当店自慢の貴腐ワインです」
「きふワイン?」
聞いたことの無い言葉だったけど、こんな美味しい葡萄酒は初めてで、私は昼なのにもっと飲みたいと思ってしまいます。それに、身体が欲しているような感じもします。
「白葡萄をワザとカビさせて甘みを高くするんです。見た目は悪いけど、それが旨さの秘訣ですね」
「そうなんですか、変わっているけど美味しいからスルスルと飲めちゃいます」
お酒の世界は深いです。そういったお話も私は好きです。
「ところでお客さんは魔法使いですか?」
「ええ、水魔法を少しばかり…」
傍らの杖を見せながら答えました。
「ちょうど良かったわ。このお店の端っこに店を出す予定なんですけど、氷が定期的に必要で、それを作ってくれる水魔法使いを探していたんですよ」
「え、ホントですか?少し興味があるのでお話が聞きたいです」
実はこの店員さんが只者ではないのを私は知っています。あんな魔法を使えるなんて……それに、あの世界のお話もできるかもしれません。
あっちでは魔法使いはなりたくてもなれない憧れの職業だから、いずれはそ魔法少女として活躍できちゃうかも! むふふ。
「それでは立って話すのもあれですので奥の方でじっくりと…」
こうして嫌いだった魔法使いという職業も、胸を張って自慢できるものへと変化していきました。
こちらでもウィスキー、ブランデーが飲めるようになるといいなぁ。お客さんに作るふりしてよく飲んでるんですよ。
今日は早めの更新です。




