10話
我々は宿の厨房の片隅を借りた。
ナターシャは何を作ってくれるんだろう、期待が膨らむ。ちなみに食材は昼に買い込んだものを渡しておいた。野菜に肉とまんべんなく。
「それじゃあナターシャのお手並み拝見といきますか」
手捌き、味付け、盛り付けのセンスなども見ておかないとな。
「まずはトマトをスライスして、生姜の酢漬けを細かく刻んでのせます」
「お、その料理!…それじゃあアレを作っちゃおーかな。油とビネガー、塩に…砂糖、胡椒っと……マスタードは…無いのね。ちゃちゃっと混ぜて………出来上がりっと」
「ケンジ殿、それは?」
「フレンチドレッシングだよ。これをかけて試食してみよう」
「これは最近酒場で流行りのおつまみよね、ん、美味いわ」
流石にラムも知っていたか。
「んんん!」
「何これトマトの甘味が増します!」
「マヨネーズと同じく野菜やフライなどにかけると美味しくいただける調味料だよ。二人共気に入ったようで良かったよ。本当なら粒マスタードていう辛味のある物を足すと深みも出るんだけどね」
「ねぇ、ちょっと、これって日本製のマスタードじゃない?どこから出てきたの?」
「S&Dのマスタードだな…またもやキンミャーみたいなオーパーツ事案か?」
テーブルの上にマスタード出現した。どうせなら ケチャップも欲しかったな。
そう思ったら、そこにはカモメのケチャップがあった。
「あれ?……まさか……まさか、まさか」
試しにパンと焼き立てのソーセージを想像してみた。
調理台の上にはパンと焼き立てのソーセージが出現した。
包丁で縦に切れ目を入れ、ホットドッグを人数分作る。ホットドッグを知っているラムは出てきた事に驚いてはいたが、知った食べ物なのですぐに手に取った。しかし、チコリとナターシャは切れ目を入れた風変わりな柔らかいパンに目が釘付けだった。この世界にソーセージは『まだ』ないし、黄色と赤色の得体の知れない液体をかけられているのである。
「な、何でしょう、これは? 細長い焼けた物は肉の様ですが何やらハーブの香りがします……それにかけてある黄色や赤いのは一体……」
ナターシャは、クンカクンカしながら目を大きくして耳をピクピク動かしている。
チコリはホットドッグを持ったままクルクルと回って嬉しそうだ。
「ご都合主義だが、何かスキルを得たようだ。ラムも世界を行ったり来たりできるけど、それ以外に何かできたりするのか?」
「何もできないわよ…」
「そうか、まぁ、異世界転移自体が凄い能力だしな。えーと、ずーっと手に持っていても仕方がないからとりあえず食べてみるか。ナターシャにチコリ、これはホットドッグという食べ物です。どうぞ食べてみて下さい」
「「ホットドッグ……」」
チコリとナターシャは互いに見合ってからホットドッグを口にすると、もぐもぐと口を動かして一気に食べきってしまった。
「んんーーっ!」
「何ですかこれは!」
ナターシャは一気に間を詰めてくる。この動き、好きなのかな。それに、何かいい香りがするし、ポニョっと当たっていますわよ。
「ん!」
チコリが口を尖らせて更に間に割って入ってくる。
懐いているナターシャが近づき過ぎて嫉妬しているのかな? ちょっとよく分からないけど、チコリはしきりにナターシャのおっぱいをサワサワしている。
「黄色の調味料はタルタルソースに少し混ぜると味が引き立ちますね。マスタードという名前の辛い調味料です。赤いのはトマトに色々な野菜を混ぜて濃縮したケチャップという調味料で、玉子料理、揚げ物に合います…」
間を置いて、
「そして、これらは市販している物ですが……頭の中で想像したらここに出てきました」




