16 お前の言う通り?
白坂に告白する彼女の声が、ここまではっきりと聞こえてきた。
まるで、私がここにいるのを知っていて、聞こえるように言ったのではないか、というくらいの声の大きさだった。
それから、白坂の声がなんとなく聞こえてきた。
でも、白坂の言葉は、はっきり聞き取れず、何を話しているのかは分からない。
私の心臓が、ドキドキと音を立てているのがうるさいせいかもしれない。
「逃げよう。」
うん、そうしよう。
これから実行することを確かめるようにつぶやいた。
気づかれないように、静かにこっそり早くゆっくりと。
すると、背後から急に腕を掴まれた。
「きゃっ!」
びっくりしてカバンを落としてしまった。
しかも、咄嗟に女子っぽい叫び声なんかあげてしまい、恥ずかしくなる。
振り返ると、そこには白坂が立っていた。
「なんで…?」
少し息を切らしていて、さっき告白されていた場所から走ってきたことが伺えた。
「あの…どうしたの?」
動揺を気づかれまいと、普通を装う。
目の前にいる白坂は真剣だ。しかも、何も話さない。
どうしよう。
この期に及んで、また逃げ出そうとする私に、白坂が最初にかけた言葉はこれだった。
「頼むからそんな顔するな。」
顔?どんな顔をしているんだろう、私。変な顔しているのかな。
思わず両手を顔にあてて白坂に背を向ける。
それから続けて、こうも言った。
「俺、お前に言われた通りにしたけど、どうだった?」
「はい?」
どこから声を出したのかよく分からない、変な声が出てしまった。
そして、白坂の思いもよらない言葉に、私の目は点になっていたことだろう。
「どう?どうって?」
何?なんでそんなこと聞くの?
私の言う通りって何?さっきの女子は?
ハテナがいっぱいの私の肩をつかみ、白坂の方へ体をくるりと回転させられていた。
久しぶりに、白坂の顔を正面からちゃんとみた。こんな顔だったっけ?
「俺に言いたいことがあるなら言って。」
「言いたいことって?」
本当に何を話していいのか分からない。
息を整えるように大きく息を吐き、白坂は話し始めた。
「俺は、一か月前、お前に告白した。お前は付き纏うな、と返事をした。だから、一緒にいるのをやめた。それでどうだった?俺がいなくてどう思った?お前の言う通りにされてどう思った?」
えっ?どう思ったって?
あれ?大嫌いって言っちゃったこと、なかったことになってる?
え―!?どういうこと―??????




