第36話 初依頼
読む方に夢中で、久しぶりの投稿ですm(_ _)m
自分のランクを打ち明けると、ふたりは盛大に驚いていた。
最初は誰でも底辺なんだし、そこまで驚かなくてもいいと思うのだが。
「驚いたな。冒険者になる前は何をしていたんだ?」
「あー。まぁ、それはいいじゃん。とりあえず、出すよ?」
周りの人に少し離れてもらい、ゴブリンロードを取り出した。
「随分でけぇな。フック、こんなに大きかったか?」
「………いえ、凄く大きいですね。これは……かなり生きてるはずです」
ゴブリンロードを見上げて、予想外の大きさに唖然とした様子のふたり。
他の作業中の職員や冒険者も遠巻きに凝視していた。
「これ引き渡したからいいよね。僕たちはもう行くよ」
「そうか?わかった。ゴブリンロードの討伐報酬を渡したいから明日またギルドに来てくれ」
「うん、わかった。ありがとう」
来た道を引き返し、ギルドを後にした。
サーシャが今泊まっているという安価で飯が上手い宿屋に向かいながら、比較的静かな道を選んで歩いていた。
「ねぇ、ケイ。明日、どうするの?」
隣を歩いているリーザが聞いてくる。
「そうだね。まずはギルドに行ってから、エルフのことを調べながら街をぶらぶらするつもりだよ」
「わかった。……サーシャはどうするのだ?」
今度は、リオラを背負っているサーシャに聞く。
「明日は、リオラを看てる」
「わかった。じゃあ、お留守番だね」
明日の予定を話しながら、道を歩いていると。
「お客さ~ん。今晩の宿、もう決まってますかぁ?おすすめの宿があるんですけどぉ~?」
扇情的な装いの女性が、そう声を掛けてきた。
胸元がくっきり開いたスタイルがよくわかる赤いドレスを着て、妖艶な雰囲気を纏っている。
普通に男好きのする体をお持ちのようだけど、生憎僕たちは女子率が高い、というか男は僕だけだ。
ひっかけるには少々相手を間違えていると言わざるを得ない。
まぁ、どっちにしろサーシャが泊まっている宿に決めているので頷くことはしない。
「決まってるから、大丈夫だよ」
「あら~そぅ。でも、お客さん溜まってるんじゃなくってぇ?大人の女性の卓越した技を味わえるわよぉ?」
……いったいどこに誘っているのだろうか。
宿屋、だよね?
意外としつこい客引きに、僕がどうしようかと思っていると。
「ちょっと、あんた!あんまり、私のケイを誑し込まないでくれる?しっしっ」
リーザが僕の前にやってきて威嚇する。
いつリーザのものになったのか。
「そうです。それに、もう宿は決まってますので他を当たって頂けますか?」
エンリはウンウンとリーザに同意しながら断った。
「あら残念ねぇ。じゃあ、気が変わったらいらしてねぇ。あそこだからぁ」
そう言って、遠くにある宿屋を指差した客引きの女性は、軽くこちらにウインクしてから去っていった。
「もう!なんなのあのエロい女は!ケイは、そんなのにひっかからいんだからっ」
「そうです!なんて悪辣な客引きなんでしょう!そう思いますよね?ケイ様」
「え?あー、うん」
ふたりとも、そんなに怒らなくても……。
◆◆◆◆◆
翌日。
僕は予定通りに、リーザ、エンリと一緒に冒険者ギルドにやって来た。
昼にはまだ少し早い時間帯ということもあり、中はガラガラだった。
ここまで人がいないギルドは初めてで、貸し切り気分で受付に近付いていく。
昨日受付にいたアンナはおらず、薄い桃色の髪を束ねている受付嬢の元へ行く。
「ようこそ、ラメア支部ギルドへ。本日はどのようなご用向きでしょうか?」
「昨日のゴブリンロードの討伐報酬を貰いに来たんだけど」
「あぁ、昨日の……。私、ユミといいます。詳しい話は伺っています。ゴブリンロードの討伐報酬は、62万ガントですね。どうやら、魔石が少し割れていたので少し差し引いたみたいですね」
おぉ、一気に収入がきたね。
62万ガントということは、日本円に直すと620万円だ。
「大金ですので、ギルドカードへチャージしますか?」
「チャージ?……あぁ、お金を入れておけるっていうやつか」
「はい。いかがいたしますか?」
「じゃあ、お願い。これ、カードね」
「お預かり致します」
そっか。この機能すっかり忘れていたよ。
皇都のギルドでは、説明もなかったし。
少し待っていると、受付嬢──ユミは、怪訝な顔をしてカードを返却する。
「ケイ様。このカードは、明日で発行後7日目ですので、それまでに何か依頼を受けることをお奨めします」
「え?」
どういうことだ、と僕が疑問に思っていると。
後ろから「あっ……」という声が聞こえたので振り返った。
「すっかり忘れていました。カードを発行してから7日間何も依頼を受けないと失効になるんでした」
エンリがそう言って謝ってきた。
僕はそれを笑顔で「大丈夫大丈夫」と宥める。
「ご存知なかったですか?おかしいですね。カードを発行した時に説明があるはずですが」
うーん。
あのとき言われた本を読んでいれば気付いたのだろうか。
まぁ、なにはともあれ、失効する前にギルドに来てよかったね。
「じゃあ、今日何か依頼を受けることにするよ」
「はい。決まりましたら依頼書を剥がして持ってきて下さい。あぁ、常時依頼と書かれているものは依頼受注の必要がないので、そのまま依頼を受けに行って大丈夫ですよ」
「わかったよ、ありがとう」
その後、受付から離れて依頼ボードに貼ってあるFランクの依頼を物色する。
どれどれ……。
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薬草採取(常時依頼)
報酬:ひとつにつき銅貨1枚
備考:薬草ヒポッテ草の納品。植物図鑑参照。
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配達
報酬:銅貨3枚
備考:詳細は受付にて。
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ゴミ収集
報酬:1時間につき銅貨5枚
備考:なし。
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店の手伝い
報酬:1時間につき銅貨6枚
備考:定食屋のヘルプ。
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………討伐系がひとつもないよ。
ほとんどが、町から出る必要のない依頼ばかりで、正直受けたいと思うものはない。
最後のとか、完全にアルバイトじゃん。
「いいのないねー、ケイ」
隣にいるリーザも、良いのがなくて悩んでいる。
チラッと見ると、Aランクの方にはワイバーンの討伐とかあった。
そっちがいい。
「エンリー、どれがいいと思う?」
リーザがエンリに聞いていた。
なるほど、エンリがどれを選ぶのか気になるね。
「そうですね……。配達はどうですか?」
エンリが提案してきたのは、予想外の『配達』だった。
「え?配達?でも、これ一番安いよ?」
「はい。ですが、一番早く終わりそうな依頼です。この町の中での配達でしょうし、安全面も恐らく一番です」
「そっか。ケイは他にすることがあるもんね。すぐ終わらせられるやつがいいか」
「はい」
ふむ。そこまで考えてくれての『配達』なのか。
なら、これにしよう。
◆◆◆◆◆
『配達』の依頼主がいるという、とある骨董品店にやってきた。
店内は、変な人形や絵画などが飾ってあって、趣のある空間だった。
僕はこういう所は、そんなに嫌いじゃない。
そうして売り物を見ながら時間を潰していると、奥からひとりの青年がやってきた。
「お待たせしました。僕がこの店の店長をしているマイクです。あなた方が今回依頼を受けてくれた冒険者さんですね」
ハーイ、マイク!………とか言ってみた。(心で)
「僕はケイ。……それで、配達物は?」
「これです」
なんと、配達物はマイクが片手で持っていた小さな箱だった。
重いからとかならわかるけど、これだったら自分で持っていけば?とつい思ってしまった。
僕の顔を見て察したらしいマイクが理由を説明してくれた。
「はは。お恥ずかしいのですが、ガンドさんを前にするとチビりそうになるんですよ」
「………ガンドさん?」
「おや、知りませんか?ガンド商会という大商会の会長です。この人の人相がまた凄く怖いんですよ」
「もしかして、それが依頼を出した理由?」
「ええ。訳あって直接届けないといけないもので、どうしようかと思ってたんですが、それなら冒険者に頼めばいいと気付きまして」
……なんとも情けない理由だった。
就寝前──
リーザ「今日のあれ、なんなの?」
エンリ「あれ?あぁ、あの卑猥な女性ですか?」
リーザ「そうよ!ケイに色目なんか使っちゃってさ」
エンリ「でも、殿方にとってはああいう魅惑的な女性が好み、なの、かも、しれません」
リーザ「自分で言って落ち込まないでよ」
サーシャ「うるさぃ。ねむれないでしょ。そんなに気になるなら、ああいう格好してみれば」
リーザ、エンリ「────ッ///」




