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第35話 ラメア支部のギルドマスター

10連休いいですねぇー(遠い目)


恐らく平成最後の投稿です。

よろしくお願いします。

 

 サーシャが話終えると、アンナが突然頭を下げて謝った。

 これには、サーシャも目を丸くしている。

 冒険者は自己責任で命を落とすことなんてザラだし、依頼に対しての簡単な事実確認はするが、詳しく調査することはまずない。

 今回の一件は、ギルドの受付嬢(職員)が謝る必要はないものだった。


「たしかに今回の依頼に関して、ギルド側に責はないです。しかし私は、事前調査報告書を読んでもゴブリンロードが率いているという事実が見抜けなかった。あの付近では多くの人が行方不明になっているのを、ただのゴブリンの仕業だと結論付けてしまったのです。本当に申し訳ありませんでした」


 心底悔しそうな表情でそう吐露するアンナを前に、サーシャも「私たちが未熟だっただけ」と返していた。

 今の話を聞く限りでは見抜けなくて当然だと思うのだが、アンナからしたらそうでもなかったらしい。

 見る目を持っているからこそ、こういうことがショックなのかなと思っていると、アンナの視線が僕に向いた。


「……あなたが話にでてきたケイさんで合ってますか?」

「ああ、自己紹介してなかったね。僕がケイで、そこに座ってる小さいのがリーザ。で、こっちのメイドがエンリだよ」

「ち、小さいの……」


 リーザが「ガーン!」とショックを受けて、自分の胸元を触っている。

 何か勘違いしていないだろうか。

 たしかにそっちも小さいけど、年齢相応だと思うよ。

 そしてなぜか、エンリが胸を張り始めた。

 メイドがなぜ主人に対して勝ち誇った表情をしているのか。


 アンナはそのふたりの様子を見て苦笑してから、真剣な顔付きで再び僕を見る。

 それは探るような、疑うような視線だった。


「ゴブリンロードを含むゴブリン種、凡そ1000の大群をひとりで倒したというのは本当ですか?」

「本当だよ。なんならどこか広い場所に出そうか?ゴブリンロードだけだけど」

「……出す?」


 アンナがそう聞き返してきたのを聞いて、口止めされていたのを思い出した。

 チラッとエンリを見ると──。


「今回は大丈夫だと思いますよ。ギルドは冒険者のことに関しては口が固いですから。ですよね?アンナさん」

「え、ええ。その通りです。冒険者の戦闘スタイル等も含めて、個人情報を漏らすことはありません」


 そう真剣な顔をして言うアンナの様子に、なんとなく想像はついているんだろうと思った。


「僕は、時空属性のアイテムボックスが使える。その中にゴブリンロードを丸々入れてるから、それが倒した証拠になると思って」

「……丸々、ですか?」

「うん、丸々」

「えぇっと、ゴブリンロードは体長5mはあるんですよ?」

「たしかに、結構大きかったね」

「…………」


 なぜかアンナは黙り混んで、何かを考えている様子でフリーズしてしまった。

 少しして、ようやく再起動すると──。


「ギルドマスターを呼んできますので、少しお待ち下さい」


 そう言って、応接室を出ていった。




「……どういうこと?」

「アイテムボックスとは、本来少しのアイテムを持ち運びできる便利な魔法として世に知れ渡っていました。それが最近になって、レイザード王国の研究により、魔力量に応じて仕舞えるアイテム量を増やせるということがわかったのです。それは、アイテムの個数ではなく、総体積に比例します。そして、ゴブリンロードの場合は、小さくても体長5mの大きい物体です。それを丸ごと仕舞うにはかなりの量の魔力が必要になります。つまり、アンナさんはケイ様の凄さを今更に感じたのではないかと思います」


 うん、スラスラとよく噛まないでそれだけ言えるね。

 違う所に感心したよ。



 10分程雑談しつつ待っていると、軽くノックされ「入るぞ!」と聞こえた後に、精悍な顔つきの青年が入室してきた。

 その後ろには、アンナもいる。

 青年は、すぐにソファに座ると口を開いた。


「遅くなって悪かったな。例の《紫色の雷槌(ヴィグローム)》の件で色々とやることがあってな」

「ヴィグローム?」

「ん?お前がケイだな。知らないってことはこの街に来たばかりか。《紫色の雷槌(ヴィグローム)》ってのは──」

「ゴホンッ!」


 青年の背後に立っているアンナのわざとらしい、というかわざとだね、咳払いが青年のセリフを遮る。


「ギルマス、話を進めて下さい」

「そんなに怒るなよな。疲れたから少し世間話をしようってだけじゃねぇか」

「夕方時で忙しいのですから、ギルマスの息抜きに付き合うつもりはありません」

「へーへー。わかったよ、まったく」


 冷静に淡々と言葉を発するアンナに対して、ギルマスと呼ばれた青年は口を尖らせて拗ねたように反論している。

 これだけで、このふたりの関係性が読めた気がするのは気のせいだろうか。


 青年は少し居住まいを正して前を向いた。


「改めて、俺の名はフェデラー・スイフト。このギルドのマスターをしてる。よろしく」


 その言葉に続いて、再度僕たちも自己紹介をした。

 ていうかギルマス、名前格好良すぎない?


「それじゃ、後ろのお姉さんが不機嫌だから、早速本題に入るか。概要は粗方聞いたぜ。ケイ、ゴブリンロードを倒したんだってな。おまけにアイテムボックスで丸々持ってきたとか」


 アンナが一瞬、フェデラーの後頭部を睨んだが、すぐに取り澄ましたような顔に戻った。

 まぁ、フェデラーは気付いていないようだから気にしないことにして──。


「うん。僕のアイテムボックスの中に入ってるよ。あぁ、あとこれも」


 そう言って、僕はアイテムボックスから洞窟内で拾ったギルドカードやその他の身分証を取り出し、テーブルに置く。


「これは……」

「サーシャは知らなかったみたいだから説明の時には言ってなかったけど、奥にあるゴブリンロードがいた場所に落ちていたんだよ。側には、それの持ち主の死体もあったから火葬しておいた。行方不明になっている人もいると思うし、それで確認できるはずだよ」

「そ、そうか……それはよかった」


 フェデラーは、驚いてホッと安心したような複雑な表情を浮かべた。


「ケイ、いや、ケイ君、、、ありがとう。これはギルドで調べた後、しっかり遺族の方に届けさせてもらう」


 アンナがギルドカード他身分証を抱えると、一礼して応接室を出ていこうとする。


「あぁ、アンナ。分かっているとは思うが」

「はい。すぐに調査隊を編成し、南西の洞窟へ向かわせます」

「そっちは任せた」


 そして、ドアを閉める直前、「ギルマスもちゃんとして下さいね?」と言っていたのが印象的だった。

 現に、その後のフェデラーはテキパキと僕たちの話を聞いていて、実に効果的な言葉であった。










 ◆◆◆◆◆



 フェデラーの先導で、ギルドの裏口から出た僕たちは、柵で囲まれた広場に案内された。

 そこでは、何人か冒険者やギルドの職員がいて魔物の解体をしているようだ。


「ここはギルドの解体所だ。冒険者なら職員の許可を受ければ自由に使って構わないことになってる」

「なるほど。ここにゴブリンロードを出せばいいの?」

「ああ、そうなんだがちょっと待て。──フック!忙しい所悪いが頼みがある!」


 フェデラーが大声でそう呼び掛けると、遠くで魔物の解体をしていた少年が慌てた様子でやってくる。

 頬にはそばかすがあり、同い年ぐらいなのに頭ひとつ分ぐらい背が小さく、力はあまりなさそうに見えた。

 しかし、遠目ながら魔物の解体をしていた所を見る限りでは、結構な技量を持っているようだった。


「こ、これは、ギルマス!こんな所にどうしたんですか!?まさか、魔物の解体をしたいんですか?ダメですよ。それは僕の仕事です!ギルマスにはもっと大事な──」

「落ち着け!」


 ──スパーーン!!


 フェデラーの平手打ちが、フックと呼ばれた少年の頭に良い音を響かせヒットした。


「うぅ~、じゃあ、どうしてギルマスが?」


 フックは涙目になりながら、頭を(さす)ってフェデラーを見上げている。


「こいつがゴブリンロードを狩ったから、その解体をしてもらいたいんだ」

「ご、ごご、ゴブリンロード!?ええっと、誰がですか?」

「こいつだ。名前はケイという」

「あれー?今、この街にSランク冒険者っていましたっけ?」


 ──スパーーン!!


 再びクリーンヒット。


「だから、こいつが倒したって言ってるだろ!」

「ほ、本当に本当なんですか!?もしかして、その年でSランク冒険者だったり?」


 そう言って凄く期待した目で見てくるフック少年。

 期待している所悪いけど──。


「そういやランク聞いてなかったな。さすがにSランクには至ってないだろう」


 フェデラーも少し興味を引かれるのか、フックと同種の目で見てくる。

 まぁ、その期待裏切ってみよう。


「あぁ、僕、Fランクだよ。底辺の」

「「………ッ!?」」







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