精霊たちの怒り
何とか間に…… あってませんね。
すみません。
アスタロトが変化してから30分が経過したが、未だに生まれる気配すらなかった。
「こんなにも時間をかけて、平気なのか奴は?」
「だが、何をしてもすぐ治るのだし、待つしかなかろう」
アスタロトが肉塊となってから何の変化も起きず、業を煮やしたマルス達は攻撃を開始した。
だが、その攻撃によるダメージや傷跡は、一切残らず回復したのであった。
「むぅ、早く…… は、ダメニャね」
「時間が掛かる方がいいとはいえ、何か納得出来ないわね」
「…………、とりあえず待ちましょう」
◇ ◆ ◇
「まだ動きはないか…… 時間を掛けてくれるのは有難いが、不気味だな」
ゴブタロ達を送り出した後、仁は切り札である魔方陣の準備をしていた。
魔王クラスを倒すことも念頭に、ここ数年の研究成果を注ぎ込み、対魔神戦用の魔法を創り上げたのである。
超級魔法『神威』
属性魔法の根源である精霊を呼び寄せ、その身に纏い眷属たちの力を最大化させる魔法である。
但し、残念ながら未だ未完成であった。
チート・オブ・チートの対魔神用決戦魔法は、まだまだ未完成ではあるが、背に腹はかえられぬと準備中であるのだ。
現在までに、火、水、土、風、氷と五つ属性魔方陣を描き上げ、今6つ目の雷属性の魔方陣を描いている最中である。
そして、6つ目の魔方陣を描き上げた時、アスタロトが動きだした。
「始まったな…… よし、俺も始めるか。 発動までの3分間、堪えてくれよ」
6つの属性魔方陣を6方向に配置して、中央部に立つと六芒星を描きだす。
◇ ◆ ◇
「やっと来たか!」
「溜まりに溜まった鬱憤を晴らさせていただく!」
「待つニャ! 様子がおかしいニャよ!」
ブヨブヨと肉塊が蠢きだし、マルスとレドが攻撃態勢に入ると、それをミケが止めに入る。
ブヨブヨと動く肉が、急速に躰を作り始める。
頭部と胴体、尻尾と形が整い始めると、胴体部分から手足が生える。
その姿は、ドラゴンだった。
鋭い眼光、頑丈な躰を支える太く短い足、背には漆黒の翼を拡げ、太く長い尻尾が、二足歩行を可能としていた。
マルス達はその姿に畏怖を抱き、動けなかった。
そして、鎌首を上げる頭部に、二本の足と尻尾で立ち上がり、前肢で獲物を狙い、翼を拡げ威嚇している姿は、まさに攻撃態勢に入っていたのである。
「避けるニャ!!」
「な、なんだと!?」
「くっそ!!」
一瞬の判断で飛び退いたミケはオッグの陰へと潜り込み、レドはマルスを庇いモロにブレス攻撃を喰らったが、大楯を構えたオッグがすかさずマルスごとレドを掴み、自分の懐へと引き入れた。
「ぬんっ!!」
「「「フグッ!!」」」
「「キャーッ!!」」
ドババババッと、土をえぐり前進するブレス攻撃はオッグが構える大楯に当たり、踏ん張るオッグ達ごと進んだ。
後方にいたジュリアやルナは難を逃れたが、飛んでくる土砂を被ってしまい悲鳴を上げた。
「おお、すまんすまん…… お前たち、生きておるか? 寝起きで、手加減が出来んかったわ」
アスタロトのブレスは止み、もうもうと上がる土煙と、ブレス攻撃によって舞った土塊が降り注いでいる。
十数秒間の視界不良は、オッグ達に回復の時間を作ってはくれたが、問題も発生していた。
前衛であるオッグの大楯がアスタロトのブレス攻撃に耐えてくれたが、マルスを庇いブレスを受けてしまったレドが、戦闘不能に陥ってしまったのである。
「すまん、俺の迷いで……」
「だ…… だい、じょうぶ、だ…… おれ…… の、ぶん…… も……」
レドは、そのまま息を引き取った。
「くっ…… レドー! よくもレドをー!」
レドを失い、マルスは吠える。
「マルス、待つニャ! レドなら大丈夫ニャ!」
「だが、俺のせいで…… レドの分も俺が!」
「小僧、この程度で己を失うとはな、まだまだお前はひよっこだ。 周りをよく見ろ。 まだ戦いは始まったばかりである」
大楯の陰から出ようとするマルスをオッグが掴み止めた。
「…………」
「そうだ。 お前は一人じゃない、我々と協力し、主と交わした約束を果たすのだ。 ヤツは知っていたからこそ、お前を助けたのだ。 回復をしておけ、次が来るぞ」
オッグに戦いの何たるかを諭され、仁と交わした約束を思いだし、マルスはオッグに頷きポーションを取り出してそれを飲んだ。
◇ ◆ ◇
「ちっ、レドが逝ったか…… あと2分か……」
仁は『神威』の魔方陣を展開中であり、火、水、土、風の精霊を呼び寄せ、氷の精霊を呼んでいる最中であった。
「ダメよ。 お仲間さんは可哀想だけど集中して。 あの魔王を倒すんでしょ?」
「ああ、すまない…… よろしく頼む……」
「いいよ、いいよ。 ボクはアイツらが大っ嫌いなんだよ。 ボクらの遊び場を台無しにしたんだからね。 こうやって呼んでくれたんだし、君には感謝しているんだよ。 ホントだよ」
「「「うん、うん」」」
水の精霊が仁を注意すると、火の精霊が拳を握りしめて怒っていた。
その怒りはかなりの熱量をもっており、それに同意する土と風の精霊も同様に怒りを溜め込んでいるのが分かる。
「すみませんが、お手柔らかにお願いします……」
「ああ、ごめんごめん。 つい熱くなっちゃった」
「「だいじょうぶ?」」
精霊たちは可愛らしく『テヘペロ』をして、仁の周りをクルクルと廻るのであった。
チートがあああ…… と思った方、ごめんなさい。
まだ未完成ですので、お許しを……




