第5話 最上級のプレゼント
「ルーナは、どうするつもりなのだ?」
「私は、隣国の皇帝レギオス様に嫁ぎます!」
「何を言っている!」
「ユウリ姉さまが嫁ぐなら、私が嫁いでも構いませんよね」
「それは、そうだが……」
「許可してください。このことは、当日まで内密に」
「本当によいのか? 噂が」
「はい、かまいません」
少し考えたあと、「あい、わかった」と渋々承諾してくれた父に、私は「ありがとう」とだけ言って執務室を後にした。その後、婚約式の日程が決められ、私とユウリが同日に婚約することとなった。
◇
「ルーナちゃん、私、レギオス皇帝に嫁ぐことが決まったの」
ユウリが私の部屋に来て、ワンワン泣き始めるので、ハンナへ視線を送り、どうにかしてほしいと願った。
「ユウリ姫様、ここは、ルーナ様のお部屋ですので……」
「ルーナちゃんは、ずるいわ! 王位継承権だけでなく、エリオットまで」
泣き叫ぶユウリを鬱陶しく思い、真実を告げることにした。
「姉さま、真実を教えて差し上げますわ。私には、王位継承権はありませんし、エリオットと婚約はしていません。当日まで秘密にしてくださいね」
泣いていたユウリの涙はぴたりととまり、エリオットとの婚約を否定した私に笑顔を向けて来る。考えたのだろう。エリオットとの婚約が自身に回ってきたことを。
……ただ、姉さまには、依然、王位継承権はありませんけどね。
私は、ユウリに微笑みながら、「落ち着いたなら、自身のお部屋へお戻りください」と丁重に追い出してやった。
「よかったのですか?」
「えぇ、もちろんよ。ここで、泣き続けられていたら、私の方が滅入ってしまうわ」
「それだけではありません。ルーナ様は、エリオット様のことを」
「いいえ、そうではないから、安心して。私は、レギオス様へ嫁ぐことは、決まっているのよ」
「人質として向かわれるのですよね?」
「えぇ、そうね。でも、正当な王女である私に対して、無体なことはしないでしょう。私が、望んで、レギオス様へ嫁ぐのですから」
「ルーナ様」
「心配いらないわ。私一人で向かう予定だから、ハンナはこの国で、思うように生きなさい」
「いいえ、そうはいきません! ルーナ様の向かうところ、私もついていきますわ!」
「そうと決まれば」とハンナは自身の準備もすると言いだし、部屋から出ていった。心強い味方ではあるが、私が向かうのは敵国である。危険が伴うので、本当に連れていきたいとは思っていなかった。
「さてと、おめでたい頭の姉さまとエリオットに、最後のプレゼントの用意をしなくては」
私は机に向かい、書面を書き始めた。王位継承権を持つ私にしかできないことだ。父が、決めればいいことだが、難しいことも多い。
「こんな感じかしらね? 嘆願書なんて、初めて書くから、上手にできていればいいですけど」
未来のことを考え、思わずふふっと笑ってしまった。私ができる、二人への最上級のプレゼントに蝋封をして、父へ会いに向かった。




