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しんじゆうしましょ -俺とシズエの364日-  作者: 真野魚尾
終章 リュウとシズエの365日目

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最終話 ネモフィラの約束

 お目当ての高校に進学してから一週間が経つ。


 放課後、私は友だちと三人で部活の見学をしに校内を回っていた。

 私は中学から続けてるバドミントン部にするって決めたけど、ほかの二人はまだ迷っているみたい。


「料理部と茶道部楽しそうだよね」


「わかる。あたしも文化系にしようかな」


 廊下を通り過ぎようとしたとき、ふと私の耳にアコースティックギターの音色が飛び込んできた。

 音のほうを振り向くと、そこには軽音部の部室があった。


 思わず足を止めた私に、友だちが不思議そうにたずねてくる。


「ミズエってバンドとか興味あった?」


「んー……なんとなく見ていこうかなって」


 そう答えながら、私の手はひとりでに部室のドアをノックしていた。


「失礼します」


 教室の中ではギターを抱えた新入生の男子と、部長らしき上級生が話をしていた。


「キミ、ギター上手いね。でもボーカル志望なんだ」


「はい。ゆくゆくはオリジナル曲も……――あっ」


 机の上から一枚の紙がひらりとすべり落ちて、私の足もとへ飛んできた。紙を拾い上げる瞬間、私の目が書面の文字を映し出す。


 入部届。氏名フリガナ――イヌカイ リュウイチ。


「これ、あなたのですか?」


 私は吸い寄せられるように新入生の彼へ近づき、紙を手渡していた。ブレザーを着崩した彼の精悍(せいかん)な顔立ちに、どこか懐かしいものを感じながら。


「うん。ありがとう。君も入部希望?」


「私は見学に来ただけで……どうぞお話続けてください」


 私は友だちと一緒に教室の隅へと移動する。

 その間も私は彼から目が離せずにいた。この気持ちが何なのかを知りたい一心で、彼の一挙一動を見守っていた。


「それじゃリュウイチくん、よかったら一曲歌って聴かせてよ」


 部長さんのお願いに彼が「はい」と返事をする。途端に私の胸が高鳴った。


「……あの! 私も聴いていっていいですか?」


 突き動かされるまま願い出る私を、彼はまっすぐに見つめて。


「俺も。君に聴いてほしい」




 その日、私は二度目の初恋をした。




〈了〉

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