Drop.017『 JUSTICE:U〈Ⅱ〉』【2】
(ま、まさかね……。――これは流石に、考えすぎだわ……。――だって、もしアタシが、それほどまでにオオカミを嫌ってたとしたら、京も、雷さんも、お店に入れてないもの……。――だから、これは、アタシの考えすぎ、ね。――それに、もし、それを気にしてるとしたら……)
“あの日”のやりとりを、あまりにも鮮明に思い出してしまったせいか、法雨は、今一度、雷に謝りたい気持ちを抱きながら、――“だからこそ”の結論に至り、苦笑する。
(そう。――もし、あの事を雷さんが気にしているのだとしたら、――それこそ、アタシに惚れるなんてありえない。――だって、あんな酷い事を言ったんだもの。――嫌われたり、失望されてないのが奇跡なくらいよ。――だからこそ、アタシを好きになるなんて、――それこそ、“絶、対、に、”――ありえないわ)
「あの……、――姐さん……」
法雨が、そのさらなる結論を確信しながら、雷からの贈り物が佇む美しい紙袋を見つめ、静かに苦笑していると、ふと、京が零すように言った。
「ん?」
それに、法雨が顔を上げると、対する京は、何故だか、少しだけ不安げな表情をしながら、続ける。
「その……、今……、――俺も、雷さんから尋かれた事、色々思い出しながら、ちょっと、思ったんすけど……。――姐さん。あの、俺……、――俺……、こうやって、ここで、姐さんと話してて……、――姐さんは、本当に大丈夫ですか……?」
「え? どういう事?」
心から不思議そうにする法雨に、苦しそうな表情で眉根を寄せると、京は、静かながらも、落ち着けぬ様子で言った。
「その………………、――俺たちが、姐さんにした事って、普通なら、赦される事じゃないです……。――だから、俺たちがこうして、普通にしていられるのは、――姐さんが、“何もしないでいてくれた”からです……」
「京……」
“あの日”、“あの密会”について、思い出すタイミングが重なってしまったのは、偶然か――、それとも、運命が用意していた必然か――。
京の云う“俺たち”とは、彼らが“ごく普通の常連客になる前の自分たち”の事を指している。
「俺たちは、あの時、姐さんの優しさに完全に甘えてました……。でも、それって、“あの時だけじゃないのかも”って、思ったんです……。もしかしたら、“今もずっと”そうなのかなって……。――正直、“償い”とか言ってますけど、――結局、そんなの言ってるだけで、俺らは、過去を消したりも出来ないし、雷さんみたいにはなれないから、――所詮、何かあったら呼んでくださいとか言ってみたり、客として飲み食いするくらいしか、出来ない……」
酒のせいか――、はたまた、秋という季節が近付いているからか――。
苦しげに言葉を紡ぐ京は、あの当時の面影を纏わせながら、しばらく封じこめていたのかもしれない――あの苦々しい日々の事を紡ぐ。
「時々、思うんです……。――姐さんは、今もずっと、耐え続けてんのかなって。――俺らの事を、色々考えて、姐さんはわざと、あの時の事を、“忘れた様に振る舞ってくれてる”んじゃないかって……」
京のそんな――、自戒の念から生じたのであろう“誤解”を解くべく、法雨は“事実”を伝えようとした。




