Drop.017『 JUSTICE:U〈Ⅱ〉』【3】
「み、京。ちょっと待って。――アタシは」
「――“オオカミが嫌い”。――なんすよね……」
「え……?」
しかし、その法雨の訂正は、京の“復唱”によって、遮られた。
何故、京が、“その台詞”を知っているのか――。
その台詞を知っているのは、雷だけだ――が、――あの雷が、第三者どころか、当事者の京たち相手であっても、わざわざその事を伝えるとは、到底思えない。
また、雷以外に、法雨の“オオカミ嫌い”を知っている人物が居るとすれば、それは、無二の親友――菖蒲くらいだが、――その菖蒲も、京たちとの面識がないため、伝えられるわけもないし、そもそも、そのような事を伝える様な性格ではない。
ならば、――一体何故、京が、“その台詞”を復唱できるのか――。
「京……、アナタ……、どうしてそれを……」
法雨が問うと、京は、手元のグラスを見つめ、ゆるりと撫でると、当時の事を思い出しているのか、ひとつ苦笑しながら、言った。
「あの時……。――あの倉庫から逃げ出した後、――少ししてから、俺だけ、逃げた窓のトコまで戻ったんです……。――もし、雷さんが警察だったら、俺たち、マジでどうなるか分かんないしと思って……。――だから、姐さんや雷さんが、俺らが逃げた後にどうすんのかだけ、どうしても確認しておきたくて……。――なんで、ほんのちょっとだけでしたけど、――窓の向こうで、俺も、二人の会話、聞いてたんです……」
「――………………」
つまり、“あの日”――、投げ捨てるように紡いだ法雨の“その台詞”を――、雷と共に、“もう一人のオオカミ”である京も――、同じくして聞いていたという事だ。
そして、“その台詞を聞いていた”にも関わらず――、それでも、この若オオカミは、ずっと、ずっと、何事もなかったかのように明るく振る舞いながら、法雨を、ただひたすらに慕い続けていた。
「でも……、――その“嫌いなオオカミ”なのに、――それでも、あんな事までした俺たちを、こうして客として迎え入れてくれて、普通に、接してくれて……、――本当に、ありがとうございます……」
「そ、そんな、――あの、アタシ」
「ただ……、姐さん……」
口を開こうとする法雨を、京は再び、静かに制するようにすると、次いで顔を上げて言う。
「――もし、そんな姐さんが、今も耐え続けて……、無理をして、俺たちを受け入れてくれてるんだとしたら……、――もう、そんな無理をするのは、これっきりで終わりにしてください。――そうだとしたら、俺たちも、もう絶対に近付かないようにしますから。――俺たちは、姐さんに償いがしたいんです。――だから、そんな俺たちの事で、これ以上、姐さんに無理や我慢をさせるのも、もう、終わりにしたいんです」
真摯な瞳で、心からの誠意を込めて紡ぐ京に、法雨は、胸がつまるような想いの中、苦笑すると、ゆっくりと紡ぐ。




